ニュース
» 2007年08月09日 06時00分 UPDATE

Second Life狂想曲:いずれはGoogleやeBayのように…!?

日本企業の進出が相次ぐ「Second life」。その目指す姿は、ウェブとの共存/融合のよう。それは、新たなインタフェースの登場、なのである。

[成川泰教(NEC総研),アイティセレクト]

出展することだけで終わらないよう…

 このところ日本の大手企業が、相次いで、米リンデンラボが運営する仮想世界サービス「Second Life」に出展している。各社のプレスリリースに必ずといっていいほど「業界として初めて…」という文言があり、それを眺める目はどうしてもさめてしまう。出展内容は、国内各所で開催されてきた博覧会における「企業パビリオン」に共通したセンスやノリが感じられ、筆者には「インターネット博覧会」という、忘れていた記憶がよみがえったりもした。

 博覧会というものは、多くは行政レベルがかかわって全体を企画し、各国政府や企業などの出展者を募り、それを見て楽しむ来場者を集客するという進め方で行われる。お分かりのように、いわゆるトップダウン型の手法である。

 しかし、Second Lifeは典型的なWeb2.0型のサービスである、と少なくとも筆者は考えている。サービスの成り立ちという観点では「ユーザー参加」が基本で、トップダウンとは相いれない。それは、企業が出展するに際しても同じだろう。仮想世界に対する企業自身の考え方や思いと、そこで行うことに対する主体的な確信が重要なのである。

 定期的に利用している人は現時点でもせいぜい十数万人レベルと推測される利用状況(8月8日の記事参照)から考えても、広告やECといった意味でのビジネス利用を前提とした場合に必要な来場者は、質や数の上で本当に見込めるのかどうかも、現時点ではまだ非常に不透明である。とはいえ、出展する企業側も単なる目新しさにつられ、出展すること自体が目的ということでは決してないだろう。「○○業界で初めてホームページを設置した企業」として記憶に残る企業が、一体どれだけあるだろうか。

行く末はウェブとの共存とか融合とか…??

 今年の春、米国のIT調査会社ガートナーが主催したカンファレンスでも、仮想世界はビジネスの視点から大きく取り上げられた。同社のアナリストは、2010年までに世界のトップ企業の約8割が仮想世界(Second Lifeとは明言していない)にかかわり、その後2年間で、仮想世界での活動がECではなく、コミュニティー中心の方向性に定まるという見解を示している。

 一方で、同じ会議で講演したリンデンラボCEOのローゼデイル氏は、それとは異なる、非常に興味深い見方を示した。今後の同社の役割として、現在イーベイが提供する決済機能「ペイパル」のような存在を挙げる一方で、3次元CGをベースにした仮想世界を提供するサーバーシステムを数カ月以内にオープンにする可能性を示唆したのである。

 少し誇張しているかもしれないが、リンデンラボ自身はSecond Lifeとウェブの共存あるいは融合を目指している。それは仮想世界がウェブをしのぐというのではなく、3次元CGがウェブのインタフェースとして取り込まれるという方向だと筆者は見る。その中で同社が目指すのは、アカウント管理や決済機能、行動データの蓄積に基づいた検索サービスなど、現在のGoogleやeBayなどが指向しているのと似たポジションである。3次元CGインタフェースは、W3Cなどによるウェブ記述言語のように標準化され、ウェブアプリケーションのような機能としてモジュール化される。筆者はこの方向性に大きな現実味を感じている。

仮想空間内にはまだ成功者はいない

 Second Lifeが3次元インタフェースのプラットフォームにおいて一定の利用者を集めることに成功したことは事実だ。だが、それはソフトウェアやレンタルサーバービジネスとしての成功であって、その上で展開されるアプリやサービスレイヤーの話とは別次元のものであることは、十分認識しておく必要がある。プラットフォーム上でサービスを提供する企業には、まだ成功者はいないのだ。

 だからといって、このサービスに価値がないなどといっているのではない。Second Lifeが魅力的なのは、技術や法慣習などの概念的な制約を超えた、仮想世界のトライアルとしては究極的ともいえる大胆さにある。逆にいえば、それだけ未知や未熟なところも多々あるものなのだ。企業としては、そこで何をするかを拙速に考えるのではなく、この新たなインタフェースが自分たちの何を可能にするものなのかということを本質的に考えなければならないのではないか。ブームは、早晩過ぎ去るのである(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第十八回」より。ウェブ用に再編集した)。

なりかわ・やすのり

1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手掛けている。趣味は音楽、インターネット、散歩。


Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -