今後を照らすLinuxカーネルの動向予報Trend Insight

Linux Foundationは、Linuxカーネルの動向を知る必要のある開発者や組織にその見通しを知らせるためのLinux Weather Forecastの提供を行うことを発表した。この予報の精度はいかに?

» 2007年08月21日 03時38分 公開
[Joe-'Zonker'-Brockmeier,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 どんなソフトウェア製品にせよ、今後のリリースについて計画を立てるに当たって、多くの意思決定者が最初に求めるものの1つがロードマップだ。しかし Linuxカーネルの場合は、以前からそうだったが、ロードマップよりも遅れるのが常である。こうした状況に対処すべく、Linux Foundationは8月15日、Linuxカーネルの動向を知る必要のある開発者や組織にその見通しを知らせるためのLinux Weather Forecast(Linux動向予報サービス)の提供を行うことを発表した。

 予報ページには、コアカーネルの開発状況の見通しのほか、ファイルシステム、仮想化および各種コンテナ、セキュリティ、ネットワーク機能、ハードウェアサポート、カーネルに関するその他もろもろのトピックの動向予報が記されている。Linux Foundationの常任理事ジム・ゼムリン氏は、こうした予報を、“カーネル開発には直接関与していないかもしれない”が、“もっと手軽に参照できて簡単に概要が把握できる情報を”求めている開発者のための“二次情報の発信源”と説明している。

 本サービスの“首席予報士”を務めるのが、LWN.netの編集責任者ジョナサン・コルベット氏である。コルベット氏はLinuxカーネルの開発を何年も追い続けてきただけでなく、自らもカーネル開発者であり、著名な書籍『Linux Device Drivers』の共著者でもある。

 この予報の対象読者は「近い将来、カーネル開発コミュニティーからどんな成果が出てくるかに思いをめぐらしながらも、カーネル開発者のメーリングリストやLWNのようなサイトを通じて開発経過を詳細に追っていく時間のない人すべてだ」とコルベット氏と述べる。

予報の信憑性

 カーネルの開発、さらにはFOSSの開発全般を天気に例えるというのは、きわめて適切な取らえ方である。Linuxカーネルの生みの親であるリーナス・トーバルズ氏でさえ、カーネルがどこに向かうのか、カーネルにどんな機能が登場するのかについて予測を試みることはめったにないのだが、中には比較的予測しやすい項目もある、とコルベット氏は語る。

 「実のところ、それはコードの出どころとそれがどんな機能であるかに依存する。ある種の機能(例えば、デバイスのサポート)は、非常に予測がしやすい。対象ハードウェアを持つ熟練開発者が1人いて、参考になるドキュメントがあれば、その機能は近いうちに完成するだろう。一方、カーネルの一部のコア機能は適切な状況把握が難しく、ほかの開発者への説明も困難なため、マージされるどうかは実際にそれが行われるまで誰にも分からない」

 「それに、不意に話が持ち上がってカーネルに統合される(KVMのような)開発要素が現れることもある。こうしたことを予測するのは不可能だ。だが、これらは非常に興味深い出来事でもある。とにかく、Linux開発者の想像力と才能には限界というものがないのだ」

 コルベット氏は、機能の開発が遅れたり、統合が決まった後でその機能が完全に削除されたりすることは珍しくない、と話す。「よく知られているのが、IBMによるEVMS(Extended Volume Management System、拡張ボリューム管理システム)コードの例だ。当初、リーナス(トーバルズ氏)はEVMSをマージするつもりだといっていたが、最終的にはデバイスマッパーのコードに切り替えられることになった。もう少し最近の事例では、コン・コリバス氏によるstaircase deadline schedulerがマージされる予定だったが、実際にはそうならなかったことがあった」

 ときには意外なことも起こるが、「通常、カーネルへの統合は比較的予想しやすい」とコルベット氏は言う。「機能そのものに問題がなく、開発者が有能でフィードバックに応じていれば、コードはきわめて真っ当な形でマージされることになる。ビッグサプライズはそう頻繁に起こるものではない」

カーネル以外の情報

 カーネルの動向を知ることは確かに有益だが、Linuxディストリビューションのそのほかの重要なコンポーネントについてはどうだろうか。予報の対象には、KDEやGNOME用のスタブも含まれてはいる。だが、Linuxを利用する開発者や組織が興味を持つユーザー寄りのアプリケーションは、ほかにも多数存在するはずだ。

 予報リストにはそのほかのFOSSアプリケーションの名前もあるが“それらすべてのプロジェクトを、十分に価値のある情報を提供できるくらい丹念に追っていくのは大変な作業”であり、どう考えても1人では対応しきれない、とコルベット氏は語る。一方、ゼムリン氏は、Linux Foundationがどこかの時点でコミュニティーからの協力の受け入れを予定していると話してくれた。今のところ、コミュニティーのメンバーにできることは、予報に対するコメントや、追加で取り上げるべき分野についての提案を投稿することである。

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