MS Officeに引き戻される人々

企業がOfficeの代替製品に乗り換えようとしても、ファイルフォーマットがネックになってなかなか離れられないようだ。だが、「脱出」をあきらめたわけではない。

» 2007年09月12日 14時02分 公開
[Debra Donston,eWEEK]
eWEEK

 「離れたと思った矢先に、彼らがわたしを引き戻した」

 Microsoftを「ゴッドファーザーPART III」でマイケル・コルレオーネがファミリーについて語った言葉になぞらえるのは間違っているが、Microsoft Officeとの関係を絶とうとして、結局引き戻されてしまった組織が少なくとも1つある。

 FN Manufacturing(FNM)のエド・ベニンカーサ氏は2004年、Microsoft Officeの代替選択肢の評価を始めた。実際、同氏はeWEEK Labsと協力して、OpenOffice.org 1.1.1とMicrosoft Office 2003のユーザーによる比較を行い、オープンソース製品が勤務先のニーズに合うかどうかを見極めようとした。同氏とそのスタッフは後に、ThinkFreeスイートとOpenOffice.org 2.0、デスクトップLinuxもテストした。

 だが、Officeの代替製品には多くの魅力的な特徴があったものの、結局満たせない要件が1つあった。ファイルフォーマットの互換性だ。

 「FNMはMS Officeの代替を見つけようと懸命だった」と情報システム責任者のベニンカーサ氏は言う。「結局はこのプロジェクトを断念した。ほかのアプリケーションがどんなに良さそうでも、MSフォーマットと互換性があって読み書きできない限り、唯一のオフィスアプリケーションとしては使えない。問題のほとんどはページ書式、画像の挿入など文書を正しく変換できないことに関するものだった」(同氏)

 同氏は、Officeとの互換性はビジネスに不可欠だと付け加えた。「サプライヤーや顧客との互換性を維持しなければならないため、別のオフィスアプリケーションへの移行はうまくいかなかった。Microsoft Officeは業界リーダーなので、好むと好まざるとにかかわらず、市場に進出したい企業にはファイルフォーマットの100%の互換性が必須だ」

 結局同氏とそのスタッフは、FNMのエンドユーザーをOffice 2003にアップグレードさせた。今は来年Office 2007にアップグレードする可能性を検討している。

コストの問題

 当然ながら、オフィスアプリケーションの決定の際にはコストが1つの要因となる。だが、IT管理者が「フリー」ソリューションへの移行にどのくらいのコストがかかるのか心配していることに、一部の人は驚くかもしれない。

 「移行にかかる多額のコストを乗り越えるものを、まだ耳にしたことがない」と話すのはAerojet-GeneralのITディレクター、サム・インクス氏。「社内での実装のコストだけではない。移行による顧客やベンダーとのやり取りへの影響もある。こちらの方が重要かもしれない」

 匿名希望の別のIT管理者は、MicrosoftのOfficeスイートの大企業向け価格設定を見ると、代替製品の低い初期コストさえも魅力的に見えなくなると語る。

あきらめてはいない

 ベニンカーサ氏がオフィススイートの評価を始めて以降、新たに登場したのがGoogleが企業向けに投入した「Google Apps Premier Edition(GAPE)」だ。GAPEは着実にマインドシェアと支持を得ている。実際、9月10日にはCapgeminiが、大企業向けのGAPEサポートでGoogleと提携すると発表した(Microsoftはこれに対抗して、GAPEが企業で使える段階にない10の理由を挙げている)。

 だがGAPEはOfficeとの互換性問題に苦労しており、一部企業にとってはWebベースの同製品はリスクがある。「セキュリティが懸念事項だ」とEstee Lauderのグローバル事業エグゼクティブディレクター、キース・カーター氏は言う。「Googleが非公開のネットワークにアプライアンスを置いてくれれば、少なくともセキュリティ上の懸念は解消されるかもしれない」

 eWEEKが取材したIT管理者らはまた、Webベースのオフィスアプリケーションのダウンタイムの問題への懸念も表明した。

 だが、ベニンカーサ氏らは「脱出」をあきらめたわけではない。「オープン文書標準への取り組みに注目しており、もう一度代替選択肢に目を向けるべきかどうか後で決める」と同氏は言う。

 マイアミデードカレッジのCIO(情報統括責任者)カール・ハールマン氏は、同校では一部の人がMicrosoft Office以外のスイートを使っていると話す。「当校はMS Officeを導入しているが、少数の人がそれ以外のものを使い始めている。積極的にGoogleを検討しており、ほかの代替スイートについても真剣に考えているが、正式な移行計画やスケジュールはない」

 代替製品を検討している組織は通常、ファイルフォーマットの互換性だけでなく、同等の機能も求めている。だがAero-Jetのインクス氏は、代替スイートがその両面でOfficeに見劣りせず、さらには企業としてライセンスする上でコストがそれほど重要な問題でない場合であっても、乗り換えのアドバンテージはあるだろうかと問い掛ける。

 「魅力的な新製品を作ろうとする人たちにとって、状況はほとんど八方ふさがりだ。Officeの機能をすべて持つ新製品があるとして、なぜ乗り換えるのか? ないのであれば、なぜ乗り換えるのか?」(同氏)

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