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» 2008年10月21日 08時30分 UPDATE

変わる消費者心理と小売ビジネス:家の裏にスーパー、でも買い物はネットで (1/3)

ネットスーパーや電子チラシが好調だ。生活必需品の高騰で買い控え傾向の強い消費者は、その購買意欲を店舗ではなくネット上の商品に向けている。低迷する小売業界では、こうした消費者心理を巧みにかぎ分け、新たなビジネスチャンスとして事業を展開する必要がありそうだ。

[藤村能光,ITmedia]

 生活必需品の高騰などに伴い、消費者による買い控えの傾向が見え始めた。百貨店などの業績が2008年の中間決算で軒並み減益だったことも、それを物語る。

 こうした中、小売業界のビジネスで著しい成長を見せている分野がある。インターネットで日用品や生鮮食品を注文すると、それが自宅に届く「ネットスーパー」だ。会員数24万人を抱えるイトーヨーカ堂をはじめ、イオンや西友などで利用者を増やしている。電子データ化した折り込みチラシをインターネット上で閲覧できる「電子チラシ」を掲載する企業も多くなってきた。

 商品の売り込みに苦戦している小売業界の企業は、「高品質の品物を手軽に安く買いたい」という消費者の心理を巧みにかぎ分け、インターネットと商品の連携に活路を見いだそうとしている。店舗経営の強化と併せて、情報システムを活用したネットサービスへの注力が今後は必須になりそうだ。

スーパーが家の裏にあっても、ネットで注文

 「家の裏にスーパーがある人がわざわざ送料を負担して、ネット経由で商品を購入する傾向が出てきた」

image 食卓.jpでは現在約4万人の会員を有する。楽天がネッツ・パートナーズを買収したことで「(楽天市場の会員である)約4000万人にサービスを提供できる」(丹治氏)ようになる

 ネットスーパーのポータルサイト「食卓.jp」を展開するネッツ・パートナーズの丹治保積マーケティング営業本部本部長は、ECサイトの新たな収益源として、ネットスーパーが浮上してきた手応えをこう語る。スーパーなどの売り上げが軒並み不振の中、「ネットスーパーは年々倍の利益を上げている」(同氏)という。

 日本では、1990年代後半にネットスーパーが始まり、2000年を境に西友やイトーヨーカ堂の大手スーパーが参入した。その後数年は伸び悩んだものの、現在はマルエツやイズミヤ、イオンなどが相次いで同サービスを始めている。オンライン通販の「Amazon.co.jp」も飲料や食品を扱うコーナーを開設するなど、勢いは増すばかりだ。

 丹治氏によると、2007年のネットスーパーの規模は「約150億円で、全スーパーの売り上げに占めるシェアは0.1%」とごくわずか。だが「1500円が相場」(同氏)であるスーパーの客単価に対し、「食卓.jpを始めとするネットスーパーは約6000円」。実に4倍もの売り上げをはじき出すという。

化粧をするより送料を払うユーザー心理

丹治保積氏 「平日にネットスーパーで商品を頼み、休日の朝に受け取るといった消費者の動きも見え始めている」と丹治氏

 ネットスーパーは、会員登録したユーザーがPCで商品を注文すると、最短3時間程度で日用品が届く。店舗とほぼ同じ価格で商品を注文でき、主婦や高齢者の利用が多い。従来は飲料や米など、重たいものを購入するケースが多かったが、最近は上白糖や総菜などが売れ筋という。

 一定額を購入すると送料が無料になる場合も多く、まとめ買いも簡単にできる。「休日に化粧をして買い物にでかけるくらいなら、送料を払ってでも手軽に買い物を済ませたい」(丹治氏)など、変わりつつあるユーザーの購買意欲を満たせるサービスだ。

 一方で課題もある。「消費者が想定している時間に商品が届かない。また雨の日には注文が集中して、配送スタッフが足りなくなることもある」(丹治氏)。食卓.jpでは、雨の日の売り上げが「通常の20%増える」。ネットスーパーで売り上げを確保するには、物流網の整備という問題は切っても切り離せない。

 それでも店舗とほぼ同額の商品を手軽に購入できるネットスーパーには、自然と消費者が集まる。「10年かかってやっと利益が生み出せるビジネスモデルになった」と丹治氏は振り返る。その将来性には、大きな期待が寄せられる。

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