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Weekly Memo:「通信が放送をのみ込む」時代?

通信と放送の相互乗り入れの動きが、ここにきて活発化してきている。これをして「通信と放送の融合」とよく言われるが、果たしてそうか。今一度、考えてみたい。


活発化する通信と放送の融合に向けた動き

 「NHKが有料ネット配信サービスを開始」、「米YouTubeが米国内向けにテレビ番組の全編配信を開始」、「アクトビラでNHKニュースを無料配信」、「NTTが地上デジタル放送のIP再送信地域拡大へ」……。

 通信と放送の相互乗り入れに関する動きは、この1カ月ほどのニュースをピックアップしてみても明らかに活発化してきている。インターネットを利用して映像や文字情報が見られる「IPテレビ」機能を搭載した薄型テレビも、ここにきて徐々に普及しつつある。

 こうした動きが活発化してきているのは、テレビ放送のデジタル化への移行が進められているからだ。2011年7月に予定された地上放送の完全デジタル化まで、あと2年8カ月。NTTが推進する「次世代ネットワーク(NGN)」も全国に行き渡っているであろう2011年は、通信と放送が融合する年ともいわれている。それに向けたステップアップの動きが、ここにきて活発化し始めたわけだ。

 そうした中、最先端の情報通信技術の研究機関である独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)が先週6日、「NICTフォトニックネットワーク研究成果発表会」を行った。発表された研究成果は、最先端の光ネットワーク技術に関する内容が中心だったが、「ブロードバンド情報通信社会の夢と課題」をテーマとしたパネルディスカッションでは、通信と放送の融合についても話題に上った。

weekly_1110.jpg NICTフォトニックネットワーク研究成果発表会で行われたパネルディスカッション

 パネリストの1人、NHK放送技術研究所の久保田啓一所長は、「インターネットでテレビ放送を配信するケースが増えているが、コンテンツ技術の観点からいうと、今はまだ標準テレビのレベル。今後、放送分野ではスーパーハイビジョン、そして立体テレビといったように重厚長大なコンテンツが次々と登場してくる。それらを配信できるネットワークの仕組みづくりをしっかりと進める必要がある」と指摘した。

 それを受けて、東京大学大学院情報理工学系研究科の浅見徹教授は、「重厚長大なコンテンツが次々と登場するとなると、ネットワークもより高度化していかなければならない。その意味では、光ネットワークが一層注目を集めることになるだろう」と語った。

 パネリストの中で、通信と放送の融合の必要性を最も熱心に語ったのは、NTT未来ねっと研究所の萩本和男所長だ。

 「これからブロードバンドを活用していくうえでの最大のポイントは、目に見えないネットワークよりも、目に見えるアプリケーションやコンテンツの中身にある。その意味では、ネットワークを専門とする私たちも、放送分野をはじめ、さまざまなコンテンツ企業と一層緊密に連携を図っていく必要がある」

IIJ鈴木社長の発言の意味

 放送サイドに立つ久保田所長が一段と高度なネットワークへの期待を語れば、通信サイドに立つ萩本所長が放送をはじめとしたコンテンツ供給者との協調体制をアピールした格好で、少なくともこのパネルディスカッションでは、通信と放送の融合が着実に進むとの印象を受けた。

 ちなみに、民間調査会社の矢野経済研究所がこのほど発表した「2008年度におけるIP放送と映像配信サービス市場に関する調査結果」によると、有料サービスの売上高は、IP放送市場が前年度比24%増の186億円、映像配信サービス市場が同11%増の455億円に達する見通し。つまりは、まだまだこれからの市場ということだ。同研究所の予測によると、2012年度には、IP放送が564億円、映像配信サービスが796億円の市場規模になるとみている。

 ただし、このIP放送と映像配信サービス、今後は市場としてどこまでの領域をとらえればよいのか、難しい事態になるかもしれない。というより、それも含めて通信と放送の融合がどのような形で進むのか。もっといえば、テレビ放送のデジタル化への移行が、そもそも通信と放送の融合なのか。筆者がこんな疑問を抱いたのは、通信業界の大御所による次の発言がきっかけだった。

 「情報と通信の融合とか、通信と放送の融合という言葉が流布しているが、それは正しい表現ではなく、インターネットというソフトウェアそのものが通信であり、インターネットという網に電波を前提としていた放送のコンテンツの配信を乗せかえる事ができるということだ。インターネットは、固定電話、携帯電話、放送といった、コンテンツ・網・インフラが一体となった従来の垂直統合の事業モデルを破壊する新たなネットワークである」

 この発言は、インターネットイニシアティブの鈴木幸一社長が、今年の年頭挨拶の中で語ったものだ。鈴木社長の言うように「インターネットというソフトウェアそのものが通信」であるならば、通信と放送は融合するのではなく、通信が放送を「のみ込む」のではないか。インターネットサイドに立つ鈴木社長の発言ではあるが、この見識は今一度、考察すべきだろう。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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