Microsoftと「望まれないモデリング言語」モデリング戦略の転換点(1/2 ページ)

MicrosoftにとってUMLは「望まれない言語」だという。一方で、サポートし、共存していくべき一連の技術の1つとも見られる。Microsoftは相互運用性をシリアスに考えなければならないのである。

» 2008年11月14日 16時16分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 Microsoftと統一モデリング言語(UML)の不安定な関係は、同社がさまざまな技術に対して、競合しながら同時にサポートをしているという複雑な事情を端的に表している。Microsoftは当初、UMLのサポートを拒否したが、ソフトウェアモデリングに戦略的重点を置くとともに、UMLに対する開発者の要求を徐々に無視できなくなった。

 Microsoft TechEdでは、ビル・ゲイツ氏がUMLサポートの意向を打ち出し、その後、同社はVisual Studioと自社のモデリング技術「Oslo」(コード名)でUMLをサポートすると発表した。UMLの共同開発者の1人であるグラディ・ブーチ氏は、Micosoftのサポート表明を歓迎している。

 Microsoftはこれまで統一モデリング言語と付かず離れずの関係を続けてきたが、ロサンゼルスで開催した「Professional Developers Conference」において、開発者へのモデリング技術の提供戦略とUMLのサポート計画を明らかにした。

 Microsoftの開発者たちによると、同社の内部ではUMLを「Unwanted Modeling Language(望まれないモデリング言語)」と呼んでいたそうだ。もっとも、モデリング技術に対する社内の認識の変化や、開発者からのUMLサポート要求の高まりを受けて、もはやMicrosoftもUMLを無視しているわけにはいかなくなった。モデリングソフトウェア「Oslo」に、新開発のモデリング言語「M」やモデリングツール「Quadrant」、レポジトリなど、独自のモデリング技術を持ちながらも、MicrosoftはVisual StudioツールセットやOsloそのもので、UMLをサポートすると発表せざるを得なくなったのである。

 UMLの共同開発者でIBM Researchのソフトウェアエンジニアリング主任サイエンティスト、グラディ・ブーチ氏は、eWEEK誌の取材に応じ、「Microsoftがついに覚醒し、メインストリームに合流したと知って、わたしはとてもハッピーだ」とコメントした。さらに同氏は「Microsoftがモデリングのバックアップに動いたことを率直に喜びたい」と述べ、同社によるUMLのサポート表明を「アイスクリームサンデーのホイップクリームの上に、ようやく仕上げのチェリーが飾られた」と評した。

 ブーチ氏は、イヴァー・ヤコブソン、ジェームズ・ランボーの両氏と共同でUMLを策定した。「ジム、イヴァー、そしてわたしの3人がUMLに着手したとき、最初にアプローチした会社がMicrosoftだった。彼らにとって難しい問題は何もなかった。“イエス”とうなずいてサポートを約束し、影響力を行使するだけだった」とブーチ氏は振り返る。

 ところがUMLの標準化を推進するために、3人がOMG(Object Management Group)にアプローチしていたとき、Microsoftは突然サポートできないと言い出した。しかし、それでも3人は、ヒューレット・パッカードやテキサス・インスツルメントなどから次々とサポートの約束を取り付けた。

 その後、2008年6月にフロリダ州オーランドで開催された「North America TechEd Developers Conference」において、Microsoft会長のビル・ゲイツ氏が、現場リーダーとしては最後となる講演の中で、同社によるUMLサポートを明らかにする。

 同年9月、MicrosoftはOMGに加盟し、UMLのさらなるサポートを約束した。ただし、同社は当面、UMLと対立するSoftware FactoriesとDSL(ドメイン固有言語)がらみの戦略は維持する考えだ。

 「状況は変わりつつある。Microsoftはスティーブ・クックやドン・ボックスといった有能な人材をモデリング技術に投入してきた」とブーチ氏。スティーブ・クック氏はMicrosoftのソフトウェアアーキテクトで同社のOMG代表を務める。ドン・ボックスはMicrosoftの有名なエンジニアで、Oslo技術、とくに「M」言語の開発に力を発揮している。

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