Virtualization Forum 2008 ユーザーパネルディスカッション:「仮想化によるメリットは長期的な視点で考えるべき」――ユーザー企業が語る、仮想化導入を成功させるポイント

ヴイエムウェアの「Virtualization Forum 2008」では、仮想化環境への移行を図り、情報システムやそれを担う情報システム部門の価値を高めようと熱心に取り組んでいるユーザー企業が登場し、その真の恩恵や課題などが討議された。


tu_vm_1125_01.jpg

 「仮想化技術が脚光を浴びているが、企業の情報システム部門にストレージやネットワークなどにも精通した技術者がいないと、なかなか踏み切れないのが実情ではないか。仮想化は魔法ではない。入れたら終わりではなく、より良い効率を追求すべく集約率を高めるなど、運用フェーズも含めた長期的な取り組みとなるからだ」── こう話すのは、富士フイルムコンピューターシステムの柴田英樹部長。富士フイルムグループの情報システムに関する戦略立案から構築、運用を担う同社で柴田氏はITインフラを担当しており、SAPなどの基幹業務アプリケーションが稼動するIAサーバを仮想化環境へ移行させる3カ年計画に取り組んでいる最中だ。

tu_vm_1125_02.jpg ITmediaエンタープライズ編集長
浅井英二がユーザー企業に話を聞いた


 メインフレームで長年実績を重ねてきた仮想化技術がIAサーバまで広く利用できるようになり、このところ耳目を集めているが、この技術をうまく活用し、さらにはデータセンターの標準技術として位置付け、本当の恩恵を享受している企業はまだまだ少ないだろう。11月18日、都内のホテルで開催されたヴイエムウェアの「Virtualization Forum 2008」では、仮想化ソリューションのリーダーである同社の技術を採用し、仮想化環境への移行に取り組んでいるユーザー企業が登場し、パネルディスカッションが行われた。

富士フイルム、SAPの基幹業務システムを仮想化環境へ

 テレビコマーシャルでご存じの読者も多いだろうが富士フイルムは化粧品やサプリメントも手掛けるなど、業務の多様化・拡大を図っている。これを支援すべく、情報システムにも大規模投資が行われ、気が付くとサーバは400台を超えた。その運用コストは4年間で4倍に跳ね上がってしまったという。今後の成長も考えれば、さらに大きな負担となるはずだ。

tu_vm_1125_03.jpg 富士フイルムコンピューター
システム 柴田英樹氏

 「ハードウェア保守料やハウジングの費用が大きな負担となっている。仮想化環境へ移行させるのは、大きな効果がすぐ表れるところに狙いを定めた」と柴田氏。

 消費電力や設置面積が大きく、すぐにコスト削減効果が期待できるということから、おのずとSAPの基幹業務システムが対象となった。SAPの基幹業務システムはピーク時の負荷を想定してサイジングしているため、普段のプロセッサやメモリのリソース使用率は2割から3割程度と低い。VMwareを活用した仮想環境では、1枚のブレードサーバ当たり5台から10台の仮想マシンを実装することで、ハードウェア保守料やハウジングの費用を大幅に削減できると考えた。

 「リスクですか? SAPは例外としても、多くのISVは仮想化された環境での動作保証には及び腰だ。ISVに動作保障は求めないにしろ、動作検証もしないISV製品は採用したくない」と仮想化技術の浸透を阻む障壁があることも指摘する。

 ただ、富士フイルムはリスクを取ってでも、新技術をいち早く取り入れる企業として知られている。

 「運用コストの実態をきちんと把握し、仮想化によるコスト削減の効果を見極めることが必要だ。システム全体のライフサイクルを眺望しながら、新技術にいち早く取り組むポジティブな姿勢で先行者メリットを享受し、変化を先取りするスタンスを企業として重視している」と柴田氏は話す。短期的なコスト削減よりはむしろ、中・長期的なメリットの大きさを同社はよく理解している。

乱立するサーバの統合/資源有効活用に着手した慶應義塾

tu_vm_1125_04.jpg 慶應義塾 インフォメーションテクノロジーセンター(ITC)本部
金子康樹氏

 「果たしてサーバが何台あるのか……。数えたのですが、途中で諦めた」と冗談交じりに嘆くのは、慶應義塾 インフォメーションテクノロジーセンター(ITC)本部の金子康樹課長だ。

 ITCは一般の企業で言えば情報システム部門に当たり、学内の情報基盤の整備や各種のサービスを提供している。6つのキャンパスごとにITCが置かれており、全体の情報化支援や事務部門の情報化支援は、金子氏が所属する本部が担当するという。

 サーバの増加は教育機関も同様だ。さまざまな業務のシステム化を進めているためで、アプリケーションサーバやデータベースサーバが乱立し、さらに開発用や検証用が加わる。トラブル時の対応だけでなく、リース管理も手間も大きな負担となる。

 「業務系のシステムは3人で100台以上のサーバを管理している。運用管理の負荷が限界にまで近づいていたが、スタッフは増やせない。そこで、VMwareを利用して、先ずは三田キャンパスの情報系サーバ50台から仮想化を図り、13枚のブレードサーバに集約した」と金子氏。

 大学で使われる事務系のアプリケーションは、利用のピークが一時期に集中するなど、負荷に季節変動がある。仮想化技術によってサーバ資源の有効活用も図れたのも大きな効果だという。

 「仮想化は、単なるサーバ統合によるコスト削減に留まらずさまざまなメリットがある。困っている課題は何か、そして仮想化によってそれらを解決できるかどうかを先ずは見極めるところからスタートすることを勧める」とアドバイスも忘れない。

 慶應義塾では、仮想化環境への移行を基幹業務にも拡大するほか、およそ1,700台にもなる事務系クライアントPCの仮想化にも取り組む計画だ。

「仮想化が標準」── 少人数で高水準のサービスを提供する東映アニメ

 ドラゴンボールやセーラームーンなどの人気アニメを製作する東映アニメーションを支えているのも仮想化技術だ。

 東映アニメは年商が連結で211億円、従業員数はおよそ540人という中堅企業だが、仮想化技術への取り組みは大企業にも負けていない。むしろ、インフラの運用管理にわずか2人しか割けないからこそ、仮想化技術を評価し、積極的に取り組まざるを得なかったのかもしれない。

 同社は、2005年にSAPアプリケーションをIBMのSystem iシリーズで運用開始し、2007年からはIAサーバの仮想化にも着手している。仮想化を標準技術と位置付け、そのメリットを大いに享受している。

 11台あったIAの物理サーバを3台に集約、しかも、これまでは1台に同居させていたサービスを「1台の論理サーバに1つのサービス」を原則として仮想化環境を構築したため、あるサービスの障害やメンテナンスが他に影響を及ぼすことがなくなった。今では27台分のOSが3台の物理サーバで稼動しているという。

tu_vm_1125_05.jpg 東映アニメ 情報システム部
遠田浩文氏

 「VMwareのVMotionを活用することで、サービスを止めずに物理サーバ間で仮想マシンのライブマイグレーションを行い、メンテナンスや拡張することができる」と話すのは、同社情報システム部の遠田浩文氏だ。動的にキャパシティを調整し、サービスレベルを確保するVMware DRSや、可用性を高めるVMware HA、そしてVMotionを活用することで、システムダウンタイムの大幅な低減を実現している。

 富士フイルムの柴田氏が、先に「運用実態把握」の重要性を指摘しているが、止められないシステムのダウンタイムは金額に換算すれば大きいし、リカバリに要するコストや手間もこれに加わる。

 「少人数による品質の高い運用の実現こそ、仮想化の大きな効果だ」と遠田氏。

 東映アニメは、画像を大量に扱っており、それを管理しているマルチメディアデータベースシステムも構築している。データ量は増える一方で、この5月にはストレージの増設に迫られたが、Storage VMotionを活用したことで、サービスを止めずに拡張できたという。

 「仮想化の概念を理解できれば、VMwareは難しいものではない。最初はスモールスタートでもいいから、早く仮想化に取り組むべきだ」と遠田氏は話す。

 ただ、これまでのところ、その導入から運用のノウハウは自ら学んだものだという。「ノウハウを交換・共有できるユーザーグループのようなものがあれば、仮想化のメリットを享受できるユーザー企業はもっと増えるはずだ」と遠田氏は付け加える。



提供:ヴイエムウェア株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2008年12月8日