企業のIT投資削減はあくまでも緊急避難、攻めに行く「2009 逆風に立ち向かう企業」NEC(1/2 ページ)

NECの取締役常務執行役員を務める安井潤司氏は「2009年のIT投資は最悪の場合4割減るだろう」と話す。だが重要な投資は続くとみており「攻めにいく」という。安井氏にNECの2009年について話してもらった。

» 2009年01月15日 11時30分 公開
[聞き手:伴大作, 浅井英二,ITmedia]

 「2009年のIT投資は最悪の場合4割減るだろう」と話すのはNECの取締役常務執行役員を務める安井潤司氏だ。だが厳しい中でも、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)や電子マネー、セキュリティといった分野を開拓することで「攻めにいく」考えだ。安井氏にNECの2009年について話してもらった。

「携帯電話の開発は技術者冥利に尽きる」と話す安井氏

ITmedia 大変厳しい経済環境下で新年を迎えました。今年の世界および日本経済をどのように見通していますか。

安井 厳しいですね。2008年下期から急激に悪化しました。IT投資に関しては最悪の場合、4割程度削減されるのではないかと見ています。

ITmedia NECはどこに進むのでしょうか。2009年の展望、抱負をお聞かせ下さい。

安井 攻めにいく考えです。確かにIT投資の削減が予想されますが、一種の緊急避難といえます。2009年度後半には、次の成長のために必要な投資が始まるでしょう。

 IT投資は他の産業ほど落ちているわけではありません。また流通分野のお客様の中には新しい投資に踏み出した企業もあります。私の担当している分野は流通と製造ですが、製造業のお客様の中にも新しい基幹系を構築する動きがあります。PCやネットワークの更新などに関しては、更新延期などの動きは見られますが、お客様の成長の根幹に関わるような大事なシステムへの投資は続いているのです。

IT投資の方向性

ITmedia 収益性の確保、成長性の拡大、コンプライアンス/セキュリティが2009年に投資する分野と3大分野と考えていいですか。

安井 NECが既に製品化したものと開発、展開中のものの両方があります。収益性の確保の代表的な例はSaaS(サービスとしてのソフトウェア)です。成長性の拡大では電子マネーが挙げられます。電子マネーの機能を自動販売機に組み込むことで、市場が一気に拡大すると考えています。電子マネー自体既に相当普及が進んでおり、インフラ化しました。活用を一段高いレベルに引き上げる時期であり、相当な額の投資を考えています。

 絶対欠かせない投資にはコンプライアンスおよびセキュリティがあります。BC(事業継続)やDR(災害復旧)も重要です。企業が事業を継続する上で絶対にやらなければならない対策への投資は大きいと思います。シンクライアントやユニファイドコミュニケーションは、単なるセキュリティの問題に対するソリューションではなく、BC/DRにも有効な手段です。

 RFIDですが、わたしが引き継いでから5年になります。流通業ではいまだに個別対応の段階が続いています。チップコストの問題とかトータルの効率化に問題が解決できていません。インフラの整備が遅れています。ただし、これが整備されると一気にブレークする可能性があります。

 体系づけられていない商品コードの問題とかEPCグローバルとIP/v6の問題もありますが、先日発表したマルチリーダ/ライターは完全にソフト化されていて、どんなコード体系にも対応できる製品です。それが普及するとRFIDを巡るインフラの諸問題が解決し、一挙に広がるかもしれません。

 ニューソリューション事業推進グループという部署があります。この部署は本来開発をする部署なのですが、事業化段階を迎えたものが幾つか出てきました。流通業では、EdyでもSuicaのようにさまざまな電子マネーに対応したマルチリーダー/ライターを組み込んだ自動販売機を自販機協会と一緒に開発して、既に相当な受注があります。この分野は大きな広がりと今後の技術革新が期待できます。

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