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» 2009年03月30日 08時15分 公開

短期集中連載 ニッポンのブロードバンド基盤:NTTは悪者か?── 情報通信政策における競争政策の有効性を再考する (1/2)

民活と規制緩和によってナショナルインフラの整備を加速するため、通信市場における巨人のNTTが誕生した。それゆえ一方的な「悪者論」は避けなければならないものの、政策は実態に合わせて調整されるべきものだ。NTTから光ファイバー専業会社を括り出すという考え方もある。

[境真良,ITmedia]
コンテンツ産業論や情報社会論を専門とする境真良氏

経済産業省でコンテンツ産業などの政策に携わり、現在は早稲田大学大学院の客員准教授や国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの客員研究員を務める境真良氏に短期集中連載(全3回)をお願いした。第2回は、一方的なNTT悪者論への批判、民活と規制緩和、光ファイバー専業会社論をテーマに取り上げる。

短期集中連載 ニッポンのブロードバンド基盤:

NTT悪者論を批判する

 前回は「NGN」と「IPTV」を例として挙げ、NTTが日本の機器ベンダーのビジネスモデルを歪めている面があることを指摘したが、わたしは、注意深く言葉を選んだつもりだ。というのも、この手の議論をする際に、避けなければならないのが一方的な「NTT悪者論」であるからだ。

 NTTは特別法の規制を受けてはいるが、そして同法により政府が1/3もの株式を保有するものの、東証一部上場のれっきとした民間企業である。その民間企業が、他方でナショナルインフラとしての責務を負い、実際にそれを遂行しているという事実がある。

 確かに、しばしばNTTに対しては、独占禁止法を援用するかどうかは別として、その高い市場占有率に起因する批判がなされている。だが、それらはつまるところ、ナショナルインフラとしての責務と民間企業としての責務という、方向性の異なる、ねじれた2つの責務がNTTに課せられていることに起因する。

 ちょっと想像してもらいたい。民間企業の社員として利益を追求するとナショナルインフラとしてネットワークを開放しろ、と言われ、ナショナルインフラとして儲からないことを覚悟でインフラを開放すると、株主利益はどうなるのか、と言われる。社員として、自分はどっちの責務に操を立てればいいのか? おまけに、ある行為が独占禁止法に違反するかどうかは、かなり解釈の幅が大きい。ここらへんならよいか、と思った結果が公正取引委員会からお目玉を食うということもある。

 そう考えると、このねじれからくるNTTの「問題」を、NTT、ひいてはそれを構成する個々人への倫理的問題に還元できないとわたしは考える。むしろ、そもそも民間企業を使ってナショナルインフラを敷設、維持するという政策がいかなる理由で採られたのかを考えてみることが必要ではないだろうか。

民活と規制緩和についてもう一度考えてみる

 もはや電電公社の時代を知らない読者も多いだろうから、NTT誕生の思想について少し説明しておく必要があるだろう。

 NTTは1984年に成立した「日本電信電話株式会社に関する法律」に基づき、国営事業から生まれた電電公社を民営化することによって1985年に生まれている。その背景には「民活」、それまで国や地方公共団体が担ってきた経済社会の基盤インフラの拡充を、民間事業の形で行うという思想がある。

 これは市場メカニズムによって政府事業よりも民間企業の方がより効率的な基盤インフラの拡充ができるという考え方があり、それゆえ民活論は、さまざまな法規制を見直し、市場をより競争的にするよう制度改変、つまり「規制緩和」とワンセットになる。今となっては当たり前すぎて「死語」になった「民活」や「規制緩和」の先頭を走っていたのがNTTであることは、覚えておいてよいだろう。

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