「運用管理」が企業ITのエコ化を促す――ノークリサーチアナリストの視点(1/2 ページ)

企業は多数のITプラットフォームを導入する一方、IT管理を先送りし、今まさにそのツケを払わされようとしている。解決策としての運用管理ソリューションを市場調査から読み解く。

» 2009年06月29日 08時00分 公開
[伊嶋謙二(ノークリサーチ,ITmedia]

 景気の減速はIT市場を「過度な投資抑制マインド」状態に導いている。例えば企業の基幹コンピュータであるPCサーバの国内出荷実績は前年比割れ(08年度実績比マイナス2.7%)となってしまった。現象的には新規需要の停止と更新需要の見送りなどが顕在化したためだ。

 一方で「ITは本当にまだまだ必要なのか?」という意見も聞かれる。逆に言えば、現状中堅・中小企業といえどもITのハードインフラとしての充足率が高いという実態が浮き彫りになっていると言えよう。企業内に溢れるCPUを見て「今は増やす時ではない」という指摘も多い。そんな渦中で、すでに導入されているITの有効活用や効率的でセキュアなIT環境を実現するための、「運用管理」が注目されているのは必然の流れだ。

重要なのは「運用管理・リソースの有効活用・セキュリティ」

 景気の悪化は確実にIT投資の抑制に直接影響を及ぼしており、ノークリサーチで実施したSMB短観でも「全業種、規模においても土砂降り」というマイナスの投資意欲が示されている。とはいえ、必要な投資分野は残されており、「経費削減」と「収益向上」の2つは大きな投資要素として存在している。「業績改善」と「コスト削減」の2つも、5割を超える高い値を示している。

IT投資において得に重視するポイント IT投資において得に重視するポイント(出典:ノーク伊嶋のSMB短観09年2月)

 この2つの命題を一挙に解決できるほど「万能なIT」が存在しないことは周知の事実。ともあれ中堅・中小企業においても十分な数のサーバやクライアントPCが導入されている。むしろ企業が問われているのは、果たしてそのITを「使いこなしているのであろうか」「導入されているITの目的は何か」という根本的な命題である。その解の1つが「ITリソースの有効活用」ということになる。要は「今すでに導入されているITで、企業に役立つITの使い方をする」という発想の転換が必要な時期にある。

 そこにジャストミートするのが運用管理ソリューションである。「エコ=経費削減」を意識しつつ、TCOを抑えて、その分を収益向上施策にまわす、“一石二鳥”のミッションを果たすことに運用管理が期待されている。今にして思えば「運用管理・リソースの有効活用・セキュリティ」という重要な機能、役割を後回しにしていた点は、ベンダー側に猛省を促したいところだ。

IT管理を放置したツケに対応を迫られる企業

 さて現実的に「運用管理」とは何かといえば、機能別に多くの要素が存在する。サーバ稼働監視、バッチジョブ管理、サーバログ監視・分析、ネットワーク監視、クライアントPC操作監視、ソフトウェア資産管理、アプリケーション自動配布などだ。

 典型的な「運用管理」の例としてジョブ管理を取り上げてみたい。ジョブ管理は今までは、多くがメインフレームやオフコンなどの基幹業務システム使われていた。支店や事業所などで発生する業務処理を自動で行う役割を指している。「バッチ処理・ジョブ管理」と呼ばれる、比較的歴史の古いソリューションである。

 しかしバッチ処理が必要なユーザーは早期に導入を終え、自社業務に最適化されていることが多い。そのため、「関心はあるが、具体的な投資計画はない」が30%と一見低い導入意向に見えるが、既に何らかの施策を打っている可能性が高いため、これらのユーザーが「バッチ処理・ジョブ管理」を新規に取り組む割合は低いように見える。

 むしろ現在は稼働監視などのリアルタイムのネットワーク上で起きているインンシデント情報の把握や不正アクセスやトラブルの未然防止、IT資産管理などのサーバ/クライアント管理などの「個別機能型」も重要視され始めている。

 これらの運用管理需要の高まりは、ここ数年来の旺盛なサーバやクライアントPCなどの導入が必然的に引き起こしている。それは一挙に多数のプラットフォームを導入したために、本来は「管理」すべき、世代管理や物理的な利用環境などIT管理部門での「全体捕捉」が困難になってきており、全体最適や有効なITリソース活用を妨げる要因にもなっているからだ。必要に応じて積極的なIT導入を進める一方で、「IT環境の管理を放置していたこと」が経費増大やセキュリティの不安リスクとなって、企業に対応を迫っている。

中堅・中小企業のバッチジョブ管理の導入実態/動向 2009年(出典:09年版中堅・中小企業のIT投資動向の実態と展望,ノークリサーチ刊)
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ