プライベートクラウドは「クラウド」かWeekly Memo(1/2 ページ)

企業の新たなIT基盤として注目されるプライベートクラウド。誰でも利用できるパブリッククラウドと区別されているが、どうやら「クラウド」を分かりにくくしているようだ。

» 2009年07月27日 08時53分 公開
[松岡功ITmedia]

クラウドの本質に立ち戻れば……

 「クラウドサービスの企業利用は、大企業向けよりも中堅・中小企業向けのほうが先行するとみている。大企業向けは個別になるケースもあるので、それぞれのコストメリットが明らかになるにつれてクラウドへの移行が進むだろう」

 富士通の野副州旦社長は、先週23日に同社が開いた経営方針説明会で、クラウドコンピューティング(以下、クラウド)の企業利用動向についてこう語った。野副社長が「大企業向けは個別になるケースも……」と説明したのが、いわゆるプライベートクラウドである。

 今回は、このプライベートクラウドについて考察したい。といっても、すでにこの言葉は関連記事にもあるように、多くの解説がなされているので、詳細をひも解くつもりはない。ただ、この言葉が頻繁に使われるようになってきたことによって、クラウドそのものが分かりにくいものになってきているように思う。

 「プライベートクラウドは、クラウドと呼んでいいものなのか」

 本稿のタイトルにも掲げたこの質問を、筆者は少し前に、ある中堅規模の企業経営者から投げかけられた。実は、この点については筆者自身も以前から腑に落ちないものがあった。なぜか。

 クラウドの本質的なポイントは、ITリソースを自前で「所有」するのではなく、必要な部分だけ「利用」するところにある。つまり、顧客(ユーザー企業)はITリソースを持たない。これに対し、プライベートクラウドにおけるITリソースは、顧客が所有するのが前提だ。「クラウドと呼んでいいものなのか」という疑問が、まさにここに生じる。

経営方針説明会でクラウドについて語る富士通の野副州旦社長

 ただ、このプライベートクラウドは先に述べた通り、さしずめ大企業がグループ会社を含めて自社専用のクラウドサービスを運用する形態として想定されており、グループ会社からすればクラウドの本質に的外れなわけではない。技術面からいえば、かつてインターネットに対してイントラネットが出てきたのと同じ。サービス提供の仕組みを分かりやすく区別すれば、公共的なものや業界別などとともに、企業グループ個別に存在する健康保険組合の有り様に似ている。

 とはいえ、所有から利用へのパラダイムシフトによるクラウドのさまざまなメリットを、プライベートクラウドは享受できるのか。

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