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» 2010年07月22日 08時55分 UPDATE

IT利用の不正対策マニュアル:偽りなき自白を促す被疑者との面接術 (1/2)

不正行為をしたと想定される被疑者との面接におけるテクニックを解説します。

[萩原栄幸,ITmedia]

なぜ無実でも自白してしまうのか?

 刑事事件などでえん罪だと訴え、「無実」を主張する被疑者が時々マスコミを騒がすことがあります。一般的には、「強要されたからといって、してもいないことを自白するとは考えられない」「仮に自白しても、本当にしていないなら裁判の時に“本当はしていません”と主張すればいい」と考える人もいるでしょう。

 しかし、それは大きな誤りです。現実問題として、刑事事件ではそもそも疑いを持って面接が行われる傾向にあります。不正行為をしたと想定される被疑者との面接では、えん罪の可能性を十分に考慮しなくてはいけません。被疑者は長時間拘束され、尋問されるので、弁護士以外は誰も味方がいないのです。

  • 日常生活からの強制的な切り離し
  • 「警察」という圧力のある権力者からの精神的苦痛
  • 同じ質問を何回も何回も行われることによる強迫観念や精神的なブレ

 このような要因によって、被疑者はその場から逃れたいという気持ちだけが高まり、虚偽の自白に追い込まれる場合があります。また、昔の尋問では「自白最優先」という事情もあり、なおさらえん罪となってしまう可能性が高いことだったと思われます。大部分の警察関係者は法にのっとり、きちんと業務をこなしていますが、ごく一部にはいまだに旧態依然とした方法をとり、被疑者の人権を軽視している方がいるのかもしれません。

面接でのリスク

 公認不正検査士(CFE)の資料では、面接でのコミュニケーションにおけるリスクとして、以下のものを挙げています。

  1. 記憶の変容
  2. ウソの見過ごし
  3. 虚偽自白

1.記憶の変容

 東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」(UTCP)における「脳科学と倫理」における資料「Ch.5 The neuroethics of memory」では興味深い内容が公開されています。

 (例)事故の想起は聞き方しだいで変わる

  • A:「衝突(smash)したときどれくらいのスピードだったか?」
  • B:「ぶつかった(hit)ときどれくらいのスピードだったか?」

 Aの聞き方では回答したスピードが速くなる傾向にありました。同様にガラスが割れたことを想起した場合でも、Aのような聞き方をした方が「ガラスが割れていた」と回答する比率が高いといいます。

 「完全なでっち上げの記憶の挿入」というものもあります。ある実験では、被験者の家族から被験者の子供のころからの出来事を聞き出し、それにウソを交えて被験者に話すと、31%の被験者が「その出来事を思い出した」と回答したそうです。

 また、DNA鑑定によって有罪判定が覆された40例のうち、9割が目撃証言に基づくものでした。米国では年間に7万5000件の有罪判定が証言によって判断されています。このような現状では、「記憶の信頼性」の問題は深刻だといえるでしょう。

 つまり、こうした状況からCFEの資料では、

  • 記憶は他人から与えられた偽情報や暗示に影響させるので、わたしたちが思うほど信用できない
  • 自分でも記憶を再構成している。
  • ある記憶から別の記憶を構成する
  • 「期待」が実際には起こらなかったことを想起させる

 といった点を挙げています。これらはいずれも、記憶が変容してしまうことで表面化します。

2.ウソの見過ごし

 被疑者は、自分が犯人ではないという「大きなウソ」を通すためにさまざまな「小さなウソ」を発言し、正当化しようとします。これらの「ウソ」を見抜くためには専門的な内容について熟知しているとともに、さまざまな発言から小さな矛盾を見出して、適確に追い込んでいく明朗な頭脳が求められます。

3.虚偽自白

 青山学院大学の高木光太郎教授によれば、虚偽自白とは「潔白な人が“自白”してしまう現象」であり、「身代わり型」「思い込み型」「悲しいウソ型」3つのパターンがあるといいます。特に「悲しいウソ型」は面接の環境や方法が主たる原因となって容易に生じるものなので、是が非でも避けなければなりません。「面接者はこのリスクを十分に認識する必要がある」と高木教授は述べています。

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