コンテナ型データセンターは普及するかWeekly Memo(1/2 ページ)

次世代ICT基盤として注目されるコンテナ型データセンター。欧米では実用化が進みつつあるが、日本での普及はこれからだ。果たしてその勘所はどこにあるのか。

» 2010年08月09日 07時50分 公開
[松岡功,ITmedia]

最大のメリットはTCO削減

 標準規格の輸送用コンテナにサーバやストレージ、制御機器、冷却・電源装置などデータセンターに必要な機器を一式収容したコンテナ型データセンターは、「未来型データセンター」として3年ほど前から注目されてきた。欧米では有力なネットサービスプロバイダーやICT(情報通信技術)ベンダーがすでに実用化を進めており、その商用製品も複数登場しているが、日本での普及はこれからだ。

 2009年の秋から日本でコンテナ型データセンターの商用製品を販売展開し、このほど新モデルも追加した日本SGIマーケティング本部データセンター戦略企画担当部長の増月孝信氏に先週、取材の機会を得た。そこで本コラムでは、同氏の見解を基に日本でのコンテナ型データセンター普及の勘所を探ってみたい。

 コンテナ型データセンターがもともと注目を集めたのは、汎用コンテナを採用したことで、貨物列車やトレーラー、航空機などで輸送でき、大規模なセンター施設を建設する必要がないため、従来とはけた違いの短期間でデータセンターを設置できることにあった。

 こうした可搬性を生かし、コンテナ単位で連結して増設できることから、初期投資を抑えながら、サービスの需要に合わせてデータセンターの能力を段階的に上げていくことができるのも大きな魅力だ。これによって、データセンターの能力を効率よくコントロールできることから、ICTリソースの柔軟性が求められるクラウドコンピューティングには打ってつけとの期待が高まっている。

増月孝信氏 日本SGIマーケティング本部データセンター戦略企画担当部長の増月孝信氏

 しかし、増月氏はそうした可搬性がもたらすメリットもさることながら、コンテナ型データセンターの本質的なポイントは、データセンターのコスト構造を抜本的に見直せることにあると話す。

 「コンテナ型データセンターは従来のデータセンターと比較して、初期投資を軽減できるとともに、運用コストも大幅に軽減できるので、ICT基盤として長年追求されてきたTCO(総保有コスト)の削減を一層進めることができます。このTCO削減への貢献こそが、コンテナ型データセンターの最大のメリットなのです」

 実際、日本SGIが提供している商用製品では、TCO削減効果として、運用コストで大きなウエイトを占める電力コストを最大50%、冷却コストを最大80%、設備コストを最大50%削減できるという。さらに独自の省電源供給技術や冷却技術を優先した設備設計により、電力使用効率(PUE:Power Usage Effectiveness)で1.12未満を実現。ちなみにPUEは、データセンター全体のうちIT機器が消費している電力を示す指標で、1.0に近いほど高効率とされ、現在の一般的なデータセンターは1.5〜2.0が主流となっている。

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