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» 2010年08月30日 07時30分 UPDATE

ワークスタイル変革とセキュリティの両立:オフィスの外で「仕事ができない」企業の課題と解決策 (1/2)

IDC Japanの調査では、PCの持ち出しを認める企業の8割が生産性の向上を実感していた。だが、許可する企業は2割にとどまる――。社員の生産性を高めた企業の状況からモバイル利用のヒントを探る。

[國谷武史,ITmedia]

 国内市場の縮小や労働人口の減少による人材確保の難しさなど、企業を取り巻く環境の厳しさは年を追うごとに増すばかりだ。企業が成長を維持するには、社員が効率的に仕事をして生産性を高めていくことが求められる。その手段として注目されるのが、「モバイルワークスタイル」の導入だ。

 モバイルワークスタイルとは、PCや携帯電話などのツールを活用し、オフィスの外でもオフィス内にいるのと同じように仕事をすること。IDC Japanが今年初めに実施した調査によれば、PCの持ち歩きを認める企業の60%以上が「生産性が50%以上高まった」と答えた。10%以上高まったという回答を加えると、その割合は80%以上になる。

 ここでいう生産性とは、メールの送受信ができる、オフィス以外で集中的に仕事をする、移動時間の効率化、発注・会計処理をその場でする――といったメリットを回答者がどの程度感じたのかというものである。PCの持ち歩きを認める企業では、在宅勤務やフリーアドレス、オープンオフィスといった多様な勤務環境を、PCの持ち出しを認めていない企業よりも積極的に導入していることが分かった。

 モバイルワークスタイルを取り入れた企業は、社員の生産性向上という目的を達成し、多様な勤務環境の整備を通じて人材獲得にも力を入れているようだ。

持ち出し禁止の懸念は「信用」を失うこと

片山氏 PC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャー 片山雅弘氏

 だがPCの持ち歩きを認める企業は、調査に回答した企業全体の2割強にとどまる。大半の企業はPCの持ち歩きを禁止している。調査を担当したPC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーの片山雅弘氏によると、その最大の理由は「機器の盗難・紛失」であるという。

 「機器の紛失や盗難を監督官庁に届け出なければならない企業もある。公表されてしまう場合があり、企業の経営層はそれによって生じる信用の失墜や風評被害を非常に懸念している」(片山氏)

 さらに盗難・紛失に遭った機器から重要情報が漏えいすれば、その事実が社会により広く伝わる。関係者への謝罪といった直接的な対応コストを含め、深刻な影響を企業は被ることになる。盗難・紛失のリスクを抱えるよりは、機器の持ち出し自体を禁止した方が手っ取り早いと考える経営者が少なくないようだ。問題が起きれば、当事者やその管理者に罰則が適用されることがある。罰則を受けるリスクがあるなら、機器の持ち出しを避けたいと考える社員や管理者もいる。

 では、PCの持ち出しを認める企業はこうした盗難や紛失のリスクを軽視しているのだろうか。罰則の導入状況について、「始末書の提出」「減俸処分」「人事考課に影響」「上司を含めた処分」などを規定する企業は、持ち出しを認める企業で約150%(複数回答のため100%を超える)、認めていない企業でもほぼ同等の割合だった。PCの持ち出しを認める企業は、厳しい罰則を導入することで社員や管理者にこうしたリスクを意識させるようにしている。

 セキュリティ対策の状況でも、「パスワード管理」「HDD暗号化」「生体認証の併用」といった手段を講じている企業の割合は、PCの持ち出しを認めない企業よりもPCの持ち出しを認める企業の方が高い。

 片山氏によれば、PCの持ち出しを認める企業は、日本よりも米国の方が多い。米国企業は大陸各地に拠点が点在し、社員の移動が多い。必然的にモバイルを導入しなければ仕事ができないという事情があり、セキュリティ対策や厳格なルールを運用することで、機器の盗難・紛失リスクの軽減に努めているという。

 日本でも米国でもPCの持ち出しを認めている企業では、利便性ばかりを優先するわけではなく、セキュリティ対策やルールを通じて、リスクとのバランスを取りながら社員の生産性を確保している。

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