【第1回】まだ電話だけに頼っているのですか?カスタマーサービスの未来(1/3 ページ)

企業の顧客(カスタマー)サービスというと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。新連載では、そうした従来型の視点がガラリと変わるような“近未来”の内容をお届けしていきます。

» 2011年02月23日 08時00分 公開
[伊藤滋伸, 飯塚純也,ジェネシス・ジャパン]

 皆さん、こんにちは!

 これから5回にわたって「未来のカスタマーサービス」をテーマに連載していきます。カスタマーサービスがテクノロジーの発展とともに、この先どのように進化していくのか、今のIT技術でどこまで実現可能なのかということを、皆さんと一緒に考えていきます。

 さて、カスタマーサービスというと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。多くの人は相談窓口としてのコンタクトセンターなどをイメージするのではないでしょうか。これまでコンタクトセンターでは独自のITを使って業務の効率化や効果の最大化を図ってきました。

 当連載は、最近のITをコンタクトセンターやカスタマーサービスに組み込むことで、どのようにこれらが進化するのか、さらに企業の業務にカスタマーサービスで活用されるITや運用手法を取り込むことで、企業にとってユニークな強みを生み出せないだろうかという視点で進めます。

 第1回は、ソーシャルメディアとスマートフォンという新しいチャネルがどのようにカスタマーサービスに影響を及ぼすのかについて考えます。

 新しいテクノロジーがトリガーになって、コンタクトセンターやカスタマーサービスのあり方が変わろうとしています。今回紹介するテクノロジーは2つ。1つは急速に浸透しつつあるTwitterFacebookに代表されるソーシャルメディアプラットフォーム、もう1つはここ数年で普及台数を伸ばしているiPhoneやAndroid携帯をはじめとしたスマートフォンです。これらソーシャルメディアプラットフォームとスマートフォンに完全対応した未来のカスタマーサービスの姿から、現在企業がとるべき戦略を考えてみましょう。


ソーシャルメディアの台頭から成熟まで

 時は20XX年の日本――。

未来の消費者マーケティングは大きく変わる(イラストはイメージ) 未来の消費者マーケティングは大きく変わる(イラストはイメージ)

 もうテレビコマーシャル(CM)というものがなくなってから何年経っただろう。昔はテレビをつければおよそ10分おきに番組プログラムは中断され、強制的にスポットCMが流れ、番組のスポンサー企業はその時間を使ってモノやサービスを喧伝し、消費者に自社のブランドを刷り込んでいった。それが商品を売ることの最短距離だったからだ。

 最近ではスポットCMがめっきり少なくなった。いや、承認制になってからはほとんど見掛けなくなった。CMをマスメディアで強制的に流すことはできなくなり、旧来のスポットCMはその役目を果たせなくなっている。CMの対コスト効果が疑問視されたのをきっかけに、マスメディアを使った一方的なマーケティングは減り、時を同じくして「共有」や「つながり」をベースとするソーシャルメディアが台頭し始めた。

 以前は消費者が欲しいと思うサービスや製品があれば、自分自身の検索能力を駆使し、関連する情報を調べる必要があったが、ソーシャルメディアプラットフォームでは望む情報が「マイソーシャルメディア」を通じて飛び込んでくる。自身の属性を基に閲覧設定がカスタマイズされているので、情報はフィルタリングされ、不要なものは目につかないようになっており、押し売りのような違和感はまったくない。もちろんその場で買いたくなければ買わなくていいし、嫌だと思えば無視すればいいのだ。必要に応じて製品やサービスに関する不明点を質問し、自身の体験もソーシャルメディアプラットフォームで共有していく。

 企業も消費者のリアルタイムなニーズをとらえ、彼らが「欲しいな〜」と思う絶妙のタイミングでコンタクトすることで費用対効果がぐんと上がった。「魚のいるところで釣りをすべし」ということだろうか。このプラットフォームでは、友達や恋人同士といった個人コミュニケーションから、企業と個人のコミュニケーション、1対1あるいは多数対多数の複雑なコミュニケーションに至るまで、すべて自分のソーシャルメディアを通じてコミュニケーションすることが当たり前なのである。

 プライバシーはどうなっているかって? ソーシャルメディアプラットフォームの普及に伴い、社会の透明度が増していく過程では懸念する声が大きかったのは事実だ。プライバシーの公開レベルは自分で選べるわけだが、多くの人がさまざまな情報を公開している。ソーシャルメディアのもたらすメリット、その利便性には抗えなかったということだろう。

 もちろん光だけでなく闇の部分もある。今や、利用されているソーシャルメディアのアカウント数は世界人口を遥かに超える数へと成長しており、個人の特定すら難しくなっている。そもそも現存する人間かどうかも怪しいものだ。ソーシャルネットワーク内ではあらゆるニーズに合ったサービスが次々とリリースされ、サービスの中核システムにはボットと呼ばれるプログラムが、自動で応答するコミュニケーションを生み、人を介さずにセルフサービスを行っている。しかし、過剰な広告ボットやなりすましによる犯罪が多発し、詐欺や恐喝などもまん延している。そう、現在は情報を探し出す検索能力よりも、膨大な情報に踊らされずに必要な情報のみを受け入れるフィルタリング能力が必要とされるのだ。

 ソーシャルメディアの浸透を加速させたのはスマートフォンが実現するモバイルプラットフォームだろう。リッチなアプリケーションが位置情報などを基に消費者にサービスを提供してくれる。企業も独自のアプリケーションを開発し、アクセシビリティの向上に努めている。

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