インメモリ技術はビジネスを加速するターボチャージャーSAPPHIRE NOW 2011 Orlando Report(1/2 ページ)

SAPPHIRE NOW 2011 Orlandoは2日目を迎え、創業者のプラットナー氏が基調講演に登場、インメモリ技術を売り込んだ。コルゲートのグリーンCIOは、「インメモリ技術なら詳細のデータをリアルタイムで分析できる。ビジネスを変えるターボチャージャーだ」と話す。

» 2011年05月19日 08時30分 公開
[浅井英二,ITmedia]
SAPPHIRE NOW 2011では3つのスタジオが特設され、4万人以上がネット越しで参加した

 米国時間の5月18日、フロリダ州オーランドで開催されているSAPの年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2011 Orlando」は2日目を迎え、ビシャル・シッカCTOと、創業者のひとりで同社の監査役会会長を務めるハッソー・プラットナー氏が基調講演に登場した。

 プラットナー氏は、今も技術や製品開発において経営陣にアドバイスする役割を担っている。昨年のSAPPHIRE NOWで脚光を浴びた「インメモリ技術」も彼がこの10年牽引し続けた取り組みの成果だ。2007年のSAPPHIRE(ジョージア州アトランタ)でも「業界には、インメモリ・データベースやオンデマンド型のコンピューティング、SOA、ユーザーに応じた使いやすいインタフェースなど、新しいアイデアが溢れている」と熱弁をふるい、それらのイノベーションを選択的に実装していけるのがソフトウェアのあるべき姿だとしていた。

 今年のSAPPHIRE NOWでは、こうしたプラットナー氏のアイデアがいよいよ「現実」として姿を現してきた。インメモリ技術はその筆頭だ。2日目の基調講演はそのすべての時間がこの革新的な技術に費やされた。

コルゲート、ボッシュ、キャタピラーらがHANAを活用

SAPのビシャル・シッカCTO

 「インメモリ、クラウド、モビリティーなど、新しい技術を顧客が混乱なく使えるようにするのが、われわれの理念だ」と話すのは、プラットナー氏に先だって登場したビシャル・シッカCTO。インメモリ技術が初めて本格的に製品の基盤として取り入れられたSAP NetWeaver BI Accelerator(2006年)も既存のキューブやクエリに何ら修正を加えることなく、メモリに展開し、分析のスピードを桁違いに高めるハードウェアアクセラレーターだった。既存のSAP BW(Business Warehouse)サーバに横付けするだけで劇的に改善できるわけで、ユーザーからすれば、これほどありがたい話はない。

 その後、BusinessObjectsやSybaseなどを買収、さまざまな技術を取り込みながらインメモリカラム型データベースのエンジンを完成させたが、提供形態は主要なハードウェアベンダーと組んだアプライアンス(SAP HANA:High-Performance Analytics Appliance)を選んでいる。既存のシステムに手を付けず、「ターボチャージャー」としてHANAを横付けすれば、分析やレポーティングで桁違いのスピードが手に入る。

 シッカ氏は、Colgate-Palmolive、Bosch Siemens、Caterpillarなど、HANAを実際のビジネスで活用している顧客を次々とビデオで紹介した。

 ニューヨーク市に本社を置く一般消費財大手のColgate-Palmoliveは、顧客別の売り上げと利益の分析をグループ子会社でテストしている。同社は200カ国以上でビジネスを展開しており、それぞれの地域での売れ筋を詳細に把握する必要があったが、現実には難しかったいう。トム・グリーンCIOは、「HANAなら膨大な詳細データをリアルタイムで分析できる。ビジネスを変えるターボチャージャーだ」と話す。

 イリノイ州ピオリアに本社を置く建設機械メーカー、Caterpillarのジョン・ヘラーCIOは、「顧客のニーズに合わせ、さまざまな仕様の建設機械を製造しているため、調達・生産・販売というバリューチェーン全体の効率化が大きな課題だった」と話す。同社は、HANAの導入によって、すべてのバリューチェーンで個々のシステムが生み出すデータを要約せず、そのまま秒単位で分析できるようになったと歓迎する。

 名立たる企業に日本の野村総合研究所(NRI)も名を連ねた。既存分析処理の高速化がHANAの主な用途として期待される中、NRIは「道路交通状況の把握」という全く新しいリアルタイム分析に取り組んでいる。1万2000台のタクシーからGPS情報を集め、時々刻々と変わる混雑の状況を把握しようという試みだ。

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