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» 2011年07月29日 12時29分 UPDATE

伴大作の木漏れ日:2位でもいいから大量のスパコンを (1/2)

日本のスーパコンピュータ「京」が世界1位を獲得したのは読者も記憶に新しいことだろう。しかし、手離しで喜んでばかりもいられないと僕は見ている。

[伴大作(ICTジャーナリスト),ITmedia]

 富士通のスーパーコンピュータ「京」がこのたびのスパコン性能ランキングTOP500で1位を獲得した。それで、つい思い出してしまうのは民主党が政権を獲得し、行財政改革の一環として行われた「事業仕分け」で、蓮舫行政刷新担当大臣が発した一言「2位じゃ駄目なんですか」である。

 彼女の指摘は当を得ている部分もあったが、本質を読み違えている部分もあった。世界最速のスーパーコンピュータを開発することは日本の国威発揚の一翼を担い、その点から国益に適っているほか、科学技術、特に先端分野におけるスーパーコンピュータの重要性をまったく理解していない点だ。

 彼女の指摘が正しい部分は、日本のスーパーコンピュータは諸外国のそれと比較して、明らかに開発コストが高すぎる。当然、高コストゆえに、構築するサイトも少数にとどまる。結果、スーパーコンピュータの恩恵は数限られた技術者に限られてしまう。蓮舫氏の指摘はその点で限りなく正確だ。2番でも3番でもいいから大量のスーパーコンピュータが求められているのだ。

1000億円を超える開発費

 確かに、ランキングで京は1位に輝き、2位は中国の「天河1号」(昨年11月のランキングで1位)、3位は米国の「Jaguar」となった。しかし、それ以下、10位までを見ると、日本は東工大の「TSUBAME2.0」を含めわずか2台、中国も2位と4位の2台、ヨーロッパはフランスが1台、残り5台すべてが米国だ。高性能スーパーコンピュータの数という面で、米国に依然大きな差を付けられている。

 もう1つ重要な点は、このところ、中国の躍進が目覚しいことに気付かされる。この背景に、汎用プロセッサを用いたスーパーコンピュータの増加がある。事実、2位の天河、3位のJaguar、4位のNebulae(中国)、5位のTSUBAME2.0、7位のPleiadesなど半数はIntelのXeonとNVIDIAなど汎用プロセッサの組み合わせだ。それなら、当然、開発コストは安く上がる。米国や中国のスーパーコンピュータ開発投資に関する資料はかなり少ないが、限られた情報を総合すると世界ランクを狙うようなマシン開発には建築投資を含め、およそ200億円から500億円というのが相場のようだ。

 それからすれば、京の開発費用が1000億円以上というのは、相場よりべらぼうに高額だといえそうだ。それだけ高額だといくつもプロジェクトを立ち上げるのも困難というのはうなずける話だ。つまり、京の後継プロジェクトは今のところ考えられていなくて、京の後しばらくは中国をはじめ新興国の台頭を許すことになりそうだ。

大量に使用されるプロセッサ

 京に用いられているプロセッサは、富士通が独自に開発した「SPARC64」である。当然それは、京の開発のために作られたといっても過言ではない。つまり、SPARC64は京以外で用いられることを想定しておらず、今の所納入予定はないようだ。当然、生産個数は少なくなり、製品単価も高くなる。

 IBMのスーパーコンピュータに用いられているCPU「Power」は、スーパーコンピュータ以外にも、同社のハイエンドサーバなどで採用されるため、開発コストを低減することができる。NVIDIAやIntel、AMDのようなベンダのプロセッサは最初から量産を意識しているためコストが安い。

 日本のスーパーコンピュータに関して、プロセッサ開発費は重課となりスーパーコンピュータ全体の開発費を膨らませる結果になっている。日本で理化学研究所以外の大口ユーザーがいれば、あるいは、海外で日本製を採用する動きがあれば別だが、今のところそのような動きはない。

 つまり、富士通と理化学研究所が作った京は、一過性の「お祭り」だったということになる。確かに、スーパーコンピュータの開発はその国の情報処理産業の開発能力を測る物差しであることは間違いないが、それには今後の採算という高いハードルを越える必要がある。その点で果たして京はどうだろう。世界の開発現場を取り巻く汎用CPU/GPUの壁を乗り越えることができるのだろうか。

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