ビジネスモデルの転換を急ぐ日本ユニシス田中克己の「ニッポンのIT企業」(1/2 ページ)

従来型のシステム開発やSIサービスからの脱却を図るため、日本ユニシスは新たな方向に大きく舵を切った。

» 2012年08月21日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 日本ユニシスがビジネスモデルの転換を急いでいる。平岡昭良代表取締役・専務執行役員は「システム開発やソリューション提供のSI(システムインテグレーション)での成長には限界がある」とし、SI案件の減少やクラウドサービスへの対応に迫られているという。

 注目を集めているのが、共同事業型ビジネスだ。ユーザーが日本ユニシスの用意したITインフラ環境とITサービスを活用し、日本ユニシスはその使用料や得られた収益をシェアするというもの。いわば成功報酬である。日本ユニシスはどんなITサービスの開発、提供に挑むのだろうか。

SI事業からサービス事業への転換

 日本企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、多くの経営者がIT投資の効果を厳しく見るようになっている。価値の見えないIT投資は決断しないということだ。その一方で、ユーザーの要求が不明確な案件が増えている。効率化や自動化の効果を上げたバックオフィス系から、効果の見えづらいフロントオフィス系へとIT投資が移っていることもある。ユーザーの要件が固まるのを待っていたら、IT企業への発注量は縮小してしまう。

 事実、IT企業の業績が数年前から伸び悩んでいる。日本ユニシスもそうだ。そこで、同社は2011年12月に目指すべき方向をまとめた中期経営計画を公表した。具体的には、ユーザーに対して、ITの最適化を実現できるパートナー、ITを活用し社会基盤の提供に貢献できるパートナー、ITをテコにユーザーに付加価値を提供できるパートナー、になること。注目したいのは、3つ目の付加価値提供による共同事業型だ。ITを駆使したサービス事業をユーザーと共同展開するもので、SI事業からサービス事業への転換ともいえる。

 サービス事業を推進する平岡専務は「SI事業はQCD(品質、コスト、納期)を重視するのに対して、サービス事業は納めたITシステムを使ってビジネスの価値を出すことにある」と、ゴールの違いを説明する。典型的な例に、ティーガイア(T-GAIA)との協業によるギフトカードモール事業「バリューカード」やケイエム国際タクシーなどが利用するクラウド型タクシー配車システム、伝統工芸品海外販売支援ECサイト、神戸コレクション公式ファッション通販サイトなどがある。

 それらの先駆けが、2010年2月にサービス提供を開始したヤマダ電機のモバイルポイント会員サービスや、その後のインターネットショッピングサイトなどだ。日本ユニシスは共同事業パートナーとして参画し、これらに必要なITインフラやWebサイトの構築・運用、各種サービスの企画立案支援を担当するが、売り上げはシステム構築費や機器販売からではない。共同事業から得られた収益の一部や、提供するサービスの使用料になる。

 ヤマダ電機の場合はWeb広告など、ギフトカードモール事業の場合はカードの発行と処理などだ。神戸コレクションの場合は、主催の毎日放送のテレビショッピングと連動するECサイトを運営し、そこからの収入をシェアする。伝統工芸品サイトも同じで、ソーシャルメディアなどを活用して日本文化の情報を海外に発信し、マーケティングを展開する。いずれも、「作業対価ではなく、応分のレべニューをもらう」(平岡専務)ビジネスになる。

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