「データマートレス」の実現でこれからの情報活用は変わるビジネス部門の要求に迅速に応えるビッグデータ基盤

ハードウェアとデータベースの処理性能が日々進化する現在、ビッグデータの活用がさまざまな業種業界で始まっている。その中でも、流通・小売業界はビッグデータをビジネスに利用している動きが顕著だ。その取り組みについて、流通・小売業界のIT事情に精通したコンサルタントに話を聞いた。

» 2013年09月04日 10時00分 公開
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すでに始まっている、企業の競争優位を左右する新たな「データ活用」

 現在の企業には、基幹システムに蓄積される構造化データ、社内で作成される文書やネット上でやりとりされる非構造化データ、各種機器から発信されるセンサーデータなど、多種多様かつ膨大なデータが存在している。そして、それら膨大なデータを分析処理してビジネスに利用する取り組みを始めている企業が増えつつある。

 例えば小売業では、各店のレジから得られるPOSデータの分析結果が、新商品の開発や在庫管理の効率化などといった業務の基幹となるアクションの契機となる。ただし、これらのデータを分析するためには、一晩、あるいは丸一日かけてデータウェアハウス(DWH)に蓄積した膨大なデータから分析目的ごとのデータマートを作成して、分析に利用するデータを抽出することが、実運用に耐えるための当たり前の作業工程だった。

 しかし、現在はハードとソフトの両面での進化によって、データ処理のスピードが劇的に向上させることが可能となり、本来不要であったデータマートの作成作業を省略して、DWHに蓄積されているデータをダイレクトに分析することが可能となってきている。

ビッグデータに注目する流通・小売業界

日立製作所 ソフトウェア開発本部 ビッグデータソリューション部の加藤二朗氏。流通・小売業界向けのコンサルティング経験が豊富だという

 いわゆる“ビッグデータ活用”は業種業界を問わず始まっているが、特に冒頭でも紹介した流通・小売業界の企業が積極的だという。そのように話すのは、日立製作所 ソフトウェア開発本部 ビッグデータソリューション部の加藤二朗氏だ。氏はエンジニア出身でありながら、長年にわたって流通・小売業界向けのITコンサルティング業務に携わった経験を持つ。

 「例えばコンビニエンスストアや総合スーパーを展開するような業種では、1日に数千万もの明細が発生します。その膨大なデータを使って何をするかが、今の流通・小売業界で問われているのです」(加藤氏)

 長引く不況の中、売り上げの向上に悩んできた流通・小売企業は少なくない。売り上げを好転させるには、顧客をより理解するための施策が必要になる。これまでも、POSデータを分析することで、ある商品がいくつ、どの店舗で、どの時間帯に売れたのかを把握することは可能だった。しかし今は、CRMとの連携によって誰が購入したかという情報が加わり、ネット通販や宅配など販売チャネルの拡大によってどんなアクセス方法によって購入に結び付いたかという情報が入ってくる。

 さらに、商品を購入した顧客がSNSでどのように評価したかという情報まで含めることもできる。これらの情報が「掛け算」で扱われる流通・小売業界では、データが爆発的に増えることになる。

photo 小売業でのビッグデータ活用例

 「多様なデータが入手可能でも、運用の観点からデータの取得や活用をある程度のところで諦めているのがこれまでの現状でした。しかし、より詳細なデータを分析することができれば、顧客へのより緻密なアプローチも可能になります。そこで、非構造化データも含めて大量のデータが扱えるビッグデータのソリューションが注目されています」(加藤氏)

事業部門の要求に応えるにはリードタイム短縮が必須

 流通・小売業界では、どのようなビッグデータの活用が始まろうとしているのだろうか。加藤氏は、いくつかの事例を上げながら、さまざまな可能性について説明する。

 「コンビニエンスストアでは、店内にWi-Fiアクセスポイントが用意され、ネットワークにつながった多機能コピー機が設置されています。それらを活用すれば、顧客の位置情報を入手し、その顧客に対してリアルタイムにクーポンを発行するような使い方が考えられます。また、複層のフロアで営業している総合スーパーでは、あるフロアで買い物した顧客に対して別のフロアでその日に利用可能なクーポンをメールで送信する、といった施策が可能です」(加藤氏)

 クーポンのような販促ツールだけでなく、接客用の販売端末を用意したり、棚に設置したセンサーによって顧客の行動の流れを認識したりといったデータを入手・分析して、売り上げアップなど次のビジネスに活用しようという動きもあるという。そして、こうしたビッグデータの活用で重要になるのは「リアルタイム性」だ。

 「流通・小売業界では、こうした多種多様な情報を容易に、安価に、大量に蓄積することが可能ですが、その情報を分析して切り出すまでのリードタイムも非常に短いという特徴があります。このリードタイムを短縮し、リアルタイムに顧客を囲い込むことができるプラットフォームが『Hitachi Advanced Data Binder プラットフォーム(HADB)』(※1)です」(加藤氏)

※1 内閣府の最先端研究開発支援プログラム「超巨大データベース時代に向けた最高速データベースエンジンの開発と当該エンジンを核とする戦略的社会サービスの実証・評価」(中心研究者:喜連川 東大教授/国立情報学研究所所長)の成果を利用

今よりも圧倒的に速くなるマートレスでの分析処理が可能に

 このHADBでは、非順序型実行原理(※2)という全く新しいアーキテクチャを実装した超高速データベースエンジンを採用している。加藤氏によれば、日立の従来製品であるデータベースと比較して約100倍の性能向上効果が見込めるという。

※2 喜連川 東大教授/国立情報学研究所所長・合田 東大特任准教授が考案した原理

 これだけ速度が向上すれば、運用上作らざるを得なかったデータマートが不要となり、データマートレスでの迅速な分析が可能となる。これが実現できれば、リードタイム短縮の効果も期待できるという。

 「従来の分析処理では、新しい切り口が入ってきたときに、データマートを設計して運用できるまで、数週間から数カ月の期間が掛かることが一般的でした。これでは、新しい施策を打って出ようとしても出遅れてしまったり、完成したときには意味がなくなって作り直しを余儀なくされたりするおそれがあります。つまり、トライ&エラーが実行しにくいわけです」(加藤氏)

 このような状況では、企業の経営層からもIT部門に対し「欲しい情報が上がってくるまでに数カ月待たされてしまうのは不満だ」という声が挙げられるだろうが、リードタイムを短縮できれば、こういった不満を解消できるだろう。またIT部門にとってみてもデータマートレス実現のメリットは大きい。なぜなら、運用面での負担軽減とコスト最適化につながるからだ。

 「データマートレスが実現できれば、データマート用のシステム構築や管理が不要となります。また、新しい分析を行うためには、データマートを設計して帳票を作成するまでにおよそ1000万円から2000万円のコストが掛かると言われますが、HADBを利用すればそれを4分の1から5分の1にまで抑えられるでしょう」(加藤氏)

 従来のシステムよりもコストを下げながら、自社の経営へ貢献するデータ分析を可能とする。これが、流通・小売業界をはじめとしたビッグデータソリューションにHADBが向いている大きなポイントと言えそうだ。

スモールスタートを可能に

 また、データ容量の増加に柔軟に対応できるのもHADBの魅力だ。初期投資を抑えた、いわゆるスモールスタートが可能なのだ。

 「すでにDWHを所有しているユーザーに対しても、まずは“今あるデータを蓄積し自由に切り出せる基盤を作りましょう”という提案をします。既存のDWHへのアドオンであっても、HADBの導入はユーザーメリットが大きいと考えています」(加藤氏)

photo 流通・小売業の分析システムのイメージ

 例えば、DTSのビッグデータ専用アプライアンス「DaTa SuperExpress」は、同社のナビゲーション付き分析ツール「BI NavigationStudio」にHADBを組み合わせたもので、1テラバイト(10ユーザーライセンス)のエントリーモデルから利用できる。HADBは今後、他のBI製品とも順次連携強化が進められ、活用範囲がさらに広がる見通しだ。

 しかし、すべてのデータ処理にHADBが適しているわけではないと加藤氏は指摘する。

 「DWHのような膨大に蓄積されているデータでなく、人の出入りのように絶えず流れているデータを分析するのであれば、当社のストリームデータ処理基盤が適しています。また、非構造化データの音声情報をテキスト変換して集約するようなバッチ処理にはHadoopを用いるほうが効果的です。つまり、適材適所でそれぞれのデータベースを利用することが望ましい姿であり、これを提供できることが日立の強みであると考えています」(加藤氏)

 この強みを生かし、日立ではビッグデータ活用の専門家が、ユーザー企業のビジョン構築からシナリオ策定、実用化検証、システム導入に至る要件定義までを支援する「データアナリティクス マイスターサービス」を提供したり、例えば流通・小売業界に向けては、地域密着型の“個店戦略”や顧客1人1人に対する“個客戦略”を支援する「日立の流通分析ソリューション」を提供するなど、製品とサービスの両面からビッグデータソリューションを広範にサポートする体制を用意している。これらのサービスを利用すれば、ビッグデータ活用基盤を短期で構築することが可能になるという。

 「企業の中で、どういう情報が社内のどこにあるかという所在を一番よく知っていて、その情報の価値を分かっているのはIT部門です。ですからIT部門は、ビッグデータの活用を推進してビジネス貢献する立場に一番近い部門といえます。われわれはビッグデータ活用を支援するソリューションを提供することで、その活動をお手伝いしたいと考えています」(加藤氏)

Open Middleware Report

日立ミドルウェアの情報誌「Open Middleware Report Vol.64」では、リレーショナルデータベース(その2)と題して、高速データアクセス基盤「Hitachi Advanced Data Binder プラットフォーム」のはたらきをわかりやすく紹介しています。こちらもぜひご覧ください。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2013年9月25日