その「友達リクエスト」はホンモノ? 情報公開にしばられる使い方萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(1/2 ページ)

ソーシャルメディアで大きな問題になっている「なりすまし」は、少し見誤ると深刻な事態につながりかねない。知人だけでなく筆者も直面した事案からその対応について考えてみたい。

» 2013年11月01日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

 筆者のコンサルティング先の企業でコンプライアンス部長をしているA氏とは、よく打ち合せを行っている。そのA氏が数カ月前に、「急にFacebookの友達リクエストが多くなった。月1、2件だったのが、この1カ月では17件もあったよ。しかも、知らない人ばかりだ。萩原さんはどうか?」と聞いてきた。その時の筆者にはそういう傾向はなかったが、最近になって筆者のところでも急増してきたのだ。今回はそのことについてお伝えしたい。

(編集部より:本稿で取り上げる内容は実際の事案を参考に、一部をデフォルメしています。)

 A氏の会社は官公庁との関係が深い。それだけにA氏のコンプライアンスに関する見識は深く、とても参考になる意見を述べられるなど鋭い管理者である。そのA氏はSNSの1つとしてFacebookを利用しているが、「友達リクエスト」が急増した。大部分は「知らない人」や外国人であり、無視していたという。

 彼は分別のある人でもあり、友達リクエストを承認しているのは仕事の関係者(企業や官公庁の管理者)とごく一部の学生時代の友人、サークル仲間という。友達の総数は150人程度である。だが、知らない人でもA氏の手掛けた論文や講演に興味を持ってコンタクトしてくる可能性があるため、友達リクエストを削除することもままならいという状況だった。

 毎週の筆者との共同作業でA氏は、ある時こう切り出した。「以前に私の研究室の教授を務めていたB先生から友達リクエストが来た。とても懐かしくて嬉しかったよ」

 筆者がそのリクエストを承認したのかどうか尋ねると、B先生のリクエストを無視するわけにはいかず、その場で承認したとのことである。筆者は作業に夢中だったこともあり、「そうですか」と聞き流してしまっていた。

 その後1カ月ほどして、筆者のFacebookにヘンな友達リクエストが来るようになった。それまでは明らかに怪しいアダルト系のものや顔写真がかわいい女性が幾つか舞い込んできただけだったものの、外国の方のリクエストが多くなったのである。同時にこんなメールを送ってきた人物もいた。

「セキュリティ会社の日本法人を作りたいので、ぜひ協力してほしい。報酬は最低でも月7000ドル。プラス成功報酬だ。市場調査したが、最低でも月2万ドルは支払えるだろう。興味があれば……」

 筆者がそんな会社を調べてみると、現地に実在していないことがほとんどだ。連絡先というメールアドレスもだいたいがフリーメールである。会社のドメインも無いのによく日本法人をつくる気になったものだ。メール内容も報酬だけで、本気なら筆者に期待する内容や連絡先番号、日本での連絡先の住所や事務所(時には滞在しているホテル)が記載されているはずだ。そうした内容が無いので「ニセモノ」と見抜くことができる。

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