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» 2017年11月20日 10時00分 公開

「検証していくうちに“移行”が完了する」 Cygamesに聞いたWindows 10導入の極意

編集部主催の情シス交流会で「Windows 10へのアップグレード移行を諦めた52の理由」という衝撃的なライトニングトークをしたCygames。その裏には、約2年にわたる地道な検証があった。検証を続ける中で、同社が得たOS移行の極意とは……?

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 瞬間、セミナー会場がどよめいた。

 日本マイクロソフトの本社で開催した、ITmedia エンタープライズ編集部主催の「俺たちの情シス 出張版スペシャル2」。ソーシャルゲーム開発会社Cygamesの星野さんが、ライトニングトークで話した内容は「Windows 10へのアップグレード移行を諦めた52の理由」。目を引くタイトルではあるが、その内容はOS移行に真摯に取り組む姿を解説する、真面目なものだった。

 同社は、2015年7月のWindows 10リリース時から導入に向けて、現場を巻き込みながら、2年以上導入への検証を続けている。アップグレード移行から方針を転換した今、どのようにWindows 10の導入を進めているのだろうか。イベント当日にライトニングトークを行った、同社 業務部部長の星野健一さんに、OS移行プロジェクトの進捗を聞いた。

photo ソーシャルゲームを中心としたゲームの開発と運営を行うCygames。サイバーエージェントグループの会社だ

システム管理部のミッションは「現場最速」

photo Cygames 業務部部長 星野健一さん

 Cygamesは、サイバーエージェントの子会社であり、スマートフォン向けゲームアプリおよび家庭用ゲームソフトの開発と運営を行っている。「神撃のバハムート」「アイドルマスター シンデレラガールズ」「グランブルーファンタジー」といった、人気タイトルのテレビCMを見たことある方も少なくないだろう。

 システム管理部を率いる星野さんは、日々、社員のIT環境を整備している。システム管理部は「現場最速」をビジョンに業務を行っており、現場が最も速く動けるようにするため、以下の3つのルールを徹底しているのだそうだ。

  • 現場を「待たせない」
  • 現場に「やらなくていいことをやらせない」
  • 現場が「知らなくていいことを覚えさせない」

 システム管理部のメンバーは約40人で、全社1700人のうち2.5%程度。一般的な企業よりもやや多いと感じるかもしれないが、その裏には「システム管理はコストセンターではなく、共にゲームを作るメンバー」という共通認識がある。

 「システム管理部をはじめとするバックヤードのスタッフは、『ゲームを開発する環境を作っている』のではなく、『一緒にゲームを作っている』という認識が全社的にありますね。これは、経営陣もしっかりと理解してくれています。現場の負担を僕らで巻き取れるのであれば、それに越したことはない。現場がゲーム作りに使える時間を少しでも増やし、集中できるようにすることを最重要の目標にしているのです」(星野さん)

アップグレード移行をやめ、クリーンインストールや買い替えでの移行に変更

 同社がWindows 10への移行を考えたのは、Windows 10が登場した2015年7月から間もないころだった。OSがWindows 7だったこともあり、当初は2016年7月29日まで設けられた、無償アップグレード期間中に移行を終わらせようと考え、検証を始めたという。

 役員、マネージャー、プロジェクトメンバー、システム管理部を合わせた約15人で検証を進めていたが、52件の不具合が出た段階で検証をいったんストップした。

 「52個程度であれば、つぶしていくべきだ」という意見もあったが、CygamesはグラフィックやUI、UXを作るデザイナーやエンジニア、プランナー、バックオフィスといった多様な職種の社員がおり、そのPCのキッティングパターンは十数種類にも及ぶ。ハードウェアもOSもバラバラである中で、問題解決のためのコストが増大することを懸念し、無償アップグレードでの移行をやめ、クリーンインストールやPC買い換えを中心とした移行にプランを変更したそうだ。

photo 星野さんが「俺たちの情シス 出張版スペシャル2」のライトニングトークで、自社の貸与PC環境について説明した資料。ゲーム開発が主な事業であるCygamesは、さまざまな職種の社員がいるため、キッティングパターンが十数種類に及ぶなど、PCの環境は多岐にわたるのが特徴だ

 「アップグレード移行のメリットとしては、利用者の環境を変えなくていい、再構築しなくていいというものがあります。現場を“待たせない”という点では、そちらが良かったのですが、一度間を開けて、あらためてじっくりと検証をしようということになりました」(星野さん)

 現在は、Windows 10をクリーンインストールしたPCであらためて検証を行っている。各職種からも人を集め、約330人が検証に参加しているそうだ。必要に応じて使用中のWindows 7 PCと並行利用してもらい、業務に大きな影響を与える問題が起きたら、すぐに元の環境に復帰できる体制を整えているが、検証はおおむね順調に進んでいるという。

 Windows 10でしか、動作が保証されていない開発ツールがあるなど、「現場からWindows 10を求める要請もあった」と星野さん。2018年からは、新規で入社するメンバーに配るPCをWindows 10にするなど、段階的にOSを切り替える予定。PCのリプレース期間は3年にしており、サポートが終了する2020年1月までには、社内に3000台以上あるWindows PCが全てWindows 10になるようにスケジュールを組んでいるそうだ。

業務内容に応じ、高スペックな「デスクトップPC」と軽い「ノートPC」を使い分け

photo Cygamesでは、ノートPCとしてパナソニックのLet's noteシリーズを貸与している

 社内にあるWindows PCの数が約3000台というと、社員の数を上回る計算だ。これは業務状況に応じて、デスクトップPCとノートPCの2台持ちをしているユーザーが多いためだ。開発やグラフィック作成など、高いスペックが求められる業務はデスクトップPCで、社内会議や外出先での打ち合わせなど、端末の持ち運びが求められる場面ではノートPCと使い分けている。

 Cygamesが使っているWindows PCは、ノートPCがパナソニックのLet's noteシリーズで、デスクトップPCはDellとエプソンダイレクトが主力だという。特にエプソンダイレクトは、グラフィックボードを中心に、デザイナーが希望する環境を柔軟に構築しやすいため重宝しているという。

 Let's noteユーザーが多いのは、グループ全体でLet's noteシリーズに統一しているのが大きいという。持ち運びに適したサイズや重さ、そして耐久性やバッテリー駆動時間が評価されているのだそうだ。デザイナーやエンジニアが多いことから、Macを使うユーザーも少なくない。ここは「職種が多くなるゲーム会社ならではのポイントだと思います」と星野さんは話す。

 同社では、Windows 10 Proをプリインストールしたマシンを使っている。「台数が多いのでActive Directoryでの管理は必須ですね。AD自体はサイバーエージェント側で一括管理してくれているので、そこに乗っかる形で利用させてもらっています。ADを使うことで、グループ会社まで含めたデバイス管理やガバナンスが楽に行えているのだと思います」(星野さん)。

 Windowsのアップデートについては、セキュリティパッチも含め、サイバーエージェント側で制御しているという。アプリケーションを中心とした互換性の検証については、Cygamesだけでは検証しきれない部分もあるため、サイバーエージェントからも情報をもらいつつ、独自の検証もする体制で動いているという。

「検証していくうちに“移行”が完了する」という気付き

 まだ検証段階ではあるものの、Windows 10を使っているエンジニアからは、bashがネイティブで使えるようになったことなどが特に喜ばれているという。「特にサーバサイドのエンジニアはそうだと思います。Windowsが好きな人は特にうれしいですよね。僕自身はインタフェースや管理の面でもWindows 10は非常に良くなったと感じています」と星野さん。

 星野さん自身も、Windows 10のOS移行に向き合ったことで、OS移行に関する考え方が大きく変わったと話す。現在の検証ではOSのバージョンもバラバラではあるが、特に業務上の問題は起きていない。2年ほど検証を続けてきて「このスタイルで大丈夫」だと思えるようになったそうだ。

 「OSのバージョンアップについて、これまで僕自身の感覚では、きちんと検証をやった上で、一斉に変える必要があると思い込んでいたところがありました。しかし、ゲーム開発などは、人によって環境がバラバラなのが普通です。問題が起きるときは起きるし、業務に逆らう形で無理にバージョンをそろえても、逆に問題が多発してしまう。それでは、問題を解決するまでに多大な時間がかかってしまいます。

 今、Windows 10への移行を進める中で感じているのは、『無理に環境をそろえなくてもいい』ということ。それが、現場の負担の軽減につながるんですよね。フォローアップの体制は必要だとは思いますが、問題を少しずつ出して、1つずつそれを解決していくというのが、現状のビジネスに合うように感じています。その方が結果的に、現場がスピーディーに動けるという認識です」(星野さん)

 より現場が速く動けるようにするにはどうするか。Cygamesの“現場最速”というアプローチに、ついにWindows 10の運用がハマった形だといえる。検証を繰り返すことを負担に思う人もいるかもしれないが、トータルでは負担が減っている――これが、星野さんの実感だ。

 「検証しているだけで移行が完了する。これが今の僕の考えです。ずっと検証だと思うんですよね。なぜなら、どんなに検証しても問題は必ず起きるから。これだけやれば確実、というのはないので、少しずつ適用範囲を広げていくというのが今っぽい……というか、『そういう方法でなければ、スピーティーな運用はできない』という考えに、僕自身がようやく至った感じです」(星野さん)

 個人のニーズに寄り添う形でIT環境がどんどん多様化していく。働き方改革などが進む昨今、IT部門がこうしたニーズに晒されるのは想像に難くない。多様なユーザー環境に合わせ、ITインフラをどうコントロールしていくか。Windows 10への移行を通じて、同社が得た知見は、さまざまな企業にとって、参考になるはずだ。

本記事でお話しいただいた星野氏も登壇・関連セミナー

セミナー

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場所:東京コンファレンスセンター・品川(JR品川駅港南口より徒歩2分)

参加:無料

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2017年12月22日

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