プロサイドの創設は1987年。すでに20年近くの実績を持つ国内の代表的なハイエンド向けPCメーカーである。近年は販売の中心をPCからサーバ、さらにはハードウェアをベースとしたサービスやソリューションの提供へとシフトさせている。そのビジネス戦略を社長の椎名氏に聞く。

ITmedia 2004年を振り返ってみて、どのような年だと感じましたか?

椎名 大手メーカーの価格攻勢に苦しめられた年でした。例えばコンシューマーマーケットでは、大手のメーカーさんはわれわれの仕入れ原価に近いところで価格設定をしています。しかしながら決して損をしているわけではなく、これでもうけが出るという仕組みや仕掛けを彼らはこの数年間で仕上げてきたのです。こうしたものに対してわれわれは勝つことはおろか、戦う術もありません。

 現在、世の中はハイエンドとローエンドの二極化が起こっています。そしてこの傾向はよりいっそう進んで行き、IT業界もこのような二分化が起こるのではないかと考えています。つまり、かたやできるだけコストをかけないというニーズ、これが非常に大きくなります。企業としてはこれに対応できるかどうか。そして利益を出せるかどうか、これが鍵になります。一方、リッチなお客様はよりハイパフォーマンス、あるいはラグジュアリーな方向性を求めるようになります。

 こうした中で、われわれも自分たちの商品の見直しを行い、どういう顧客ターゲットを獲得するかを考えました。ですからわれわれは数年前から、法人企業のユーザーが本当に欲しいと感じる商品をCTO(Configure To Order)で提供するという明確な方針を打ち出し、サーバやハイエンドワークステーション、ソリューションといったジャンルに絞った企業活動を行ってきました。しかし、いまだ一部に大手メーカーと競合する部分があって苦しみました。そこからの脱却が昨年の大きなテーマの一つだったのです。

コンセプチュアルな商品開発を目指す

ITmedia それでもCTOのビジネスは好調だったのでは?

椎名 はい。しかしながら、われわれのもう一つの柱であるBTOのフィールドではまだ苦戦しています。この原因を突き止めて、今後の製品開発に反映することが重要でした。その結果、原因は顧客のニーズを確実につかめていないからだと分かりました。つまり製品仕様の問題です。今まではプロセッサやマザーボードメーカーの画一化された仕様に振り回されすぎていたのではないかという反省を含めて、よりオリジナリティのある商品コンセプトで、ユーザー視点を大切にした開発を行うことが必要なのです。


注力する分野を明確にして、そのデマンドに応えたオリジナルの製品開発を行うことが重要だと椎名氏。

 さらには独創性や最新性といった要素も取りこまなければなりません。世の中を見まわしてまだないというものをすばやく提供する、これがわれわれのBTOビジネスの目標です。

ITmedia デルやHPでなくプロサイドを選ぶユーザーは、そのきめこまやかなCTOに魅力を感じているのでしょうか?

椎名 まず営業的、技術的に顧客との打ち合わせがしっかりできるという点が大切だと思います。そして、顧客の要求を上回る仕様や構成を提案できるということも重要です。さらに一番大切なのは、信頼性です。自社開発の生産品質管理システムであるPROMIS(Proside Manufacturing Idealization System)を使ったわれわれの製品は初期不良率を1%以下に抑えており、EDAなどの分野で評価されています。

 ただしもう一点、われわれが提供すべきものがあります。それが耐久性です。部品単位での耐久性の目安というものは非常にあいまいですから、システム全体としての耐久性をきちんと出すのは難しいのですが、この検証システムの準備に取りかかっています。メーカーとして社会的な立場に立てば、パーツに含まれる微少毒物などの検証も同様に行わなければなりません。これをしっかりと実行できれば、小さな企業でも大手メーカーに負けない競争力を持つことができると思います。

付加価値による差別化でSI事業を拡大

ITmedia 昨年から取り組みを始めたSI分野についてはどうでしたか?

椎名 SUN Cobaltとフル互換のBlueNetシリーズというオールインワンサーバで、新しいマーケットに踏み込みました。つまり、ハードとソフトを一体化した商品を、箱売りでなくお客様へ流通のパートナーを介して売るというビジネスです。昨年はこのビジネスをようやく立ち上げ、軌道に乗せることができました。今後はこの事業をどのように拡張していくかが大きな課題です。

ITmedia この分野でビジネスを広げて行くにはどういった方向性が考えられますか?

椎名 ラック型なら集積度のアップや省電力化、あるいは周辺ソフトの工夫といったものがあると思います。例えばメールサーバにはスパム駆逐のソフトウェアを入れたいのですが、現在はこのスパムの効率的な駆逐方法をテーマに研究中です。あるDBを参照してスパムかどうかの判断をするのではなく、コンテントや言語に依存しないスパムの判別方法を考えています。いずれにしてもユーザーの利便性を第一に考えた方向性なのは言うまでもありません。

ITmedia 現場の感覚から言って、サーバシステムの64ビット化は進んでいるのでしょうか?

椎名 ここへきてよりいっそう進んでいると思います。特にわれわれが注力しているEDAの分野は、すでに64ビットでなくては考えられません。すでに移行が終わりつつあると言えます。一方で、一般のマーケットで64ビットが必要かと言えば、答えはノーです。各プロセッサメーカーは64ビットの新製品をリリースしていますが、現状では果たして見合うほどのマーケットがあるかどうかといったところでしょう。OSの環境が整う1〜2年後が、本当の普及の時期ではないでしょうか。

ITmedia 2005年に椎名さんが注目する分野は?

椎名 一見、われわれに関係ないように思われますが、燃料電池には注目しています。モビリティを重視する分野では非常に重要なテクノロジーであり、大きな可能性を秘めていると思います。それからPSPといった製品の登場によって、エンターテインメントの分野でも大きな変化が起きるのではないでしょうか。ハードウェア、コンテンツともに既存の枠組みから飛び出したものを期待しています。

 それからVoIPですが、今年から法人系向けサービスの提供を始めます。ぜひ期待してください。

家にいて、孫たちの遊び相手になるでしょうね。チャンバラの相手をするのが楽しいですよ。空気を入れてふくらませる剣があるのですが、それで目いっぱい叩き合いをします。本当はどこかの温泉にでも、と思っていたのですが、気が付いたら年末の予約は一杯で……(笑)。

[ITmedia]

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