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» 2006年07月29日 00時00分 UPDATE

情報システム用語事典:顧客満足(こきゃくまんぞく)

CS / customer satisfaction

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 顧客が持っている事前期待、顕在/潜在的なニーズあるいは要求事項が、提供された製品・サービスの効用によって満たされること。またはその充足の程度をいう。

 1987年に米国で創設されたマルコム・ボルドリッジ国家品質賞において中心的な評価基準として取り入れられたことから広く知られるようになり、1980年代末から1990年代半ばにかけて日本でも多くの企業が理念やスローガンとして「顧客満足経営」を掲げ、ブームの様相を呈した。

 ボルドリッジ賞を範として作られた日本経営品質賞ではアセスメント項目として「顧客満足の明確化」が挙げられ、ここで「顧客満足とは、顧客に期待以上の価値が提供されたときの、顧客の心理状況をいう」と定義されている。ISO 9000でも2000年版から「顧客満足の把握」が要求されるようになったが、その基本及び用語によれば「顧客の要求事項が満たされている程度に関する顧客の受けとめ方」とされている。

 顧客満足の原点としては、ピーター・F・ドラッカー(Peter F. Drucker)の著書『The Practice of Management』(1954年)、マーケティングの泰斗 セオドア・レビット(Theodore Levitt)の論文「Marketing Myopia」(1960年)などを挙げることができるが、キーコンセプトとして注目されるようになったのは1960年代の消費者運動(製品に満足しない消費者の登場)などを受けて、それまでの差別化戦略の行き詰まりが感じられるようになってきたマーケティング分野においてで、1970年代の終わりごろからである(日本ではマーケットインという言葉が登場する時期に当たる)。これは顧客が企業を選ぶ時代になったことを意味するといえる。

 一般に顧客満足は、顧客が製品やサービスの購買・使用などの体験を通じて形成される個人の心情的評価としてとらえられている。この意味での顧客満足の形成に関して現在、最も支配的な理論はリチャード・オリバー(Richard L.Oliver)によって提示された「期待不確認モデル(expectation - disconfirmation model)」で、簡単にいえば「期待(E)」と「パフォーマンス(P)」を比較し、「E>P」であれば不満、「E<P」であれば満足というもの。顧客満足度調査は、この理論に基づいて行われる。ただしISO 9000でいう顧客満足は、要求事項を過不足なく達成した状態――すなわち「E=P」のことを満足(satisfaction)としている。これは英語のsatisfactionの原義がそのようなニュアンスであること、そして顧客が“個人”ではなく“企業”であることを前提としているためと考えられる。また近年は、「E<P」のことをカスタマ・ディライトと区別することもある

 企業にとっては、自社が提供する商品・サービスのパフォーマンスの品質を高めていくことも大切だが、顧客の事前期待を適切にコントロールすることも重要である。顧客の期待は、過去の購買経験のほか、知人などからの情報、雑誌やネットでの評判、広告・カタログ、従業員の振る舞いや言動などから形成される。これらを通じて、提供する商品・サービスのパフォーマンスと齟齬を来たさないように期待レベルを形成する努力が求められることになる。

 また企業が提供する製品・サービスには「本質機能」と「表層機能」があり、の双方が期待に一致したときに顧客は満足するという理論もある。ジョン・E・スワン(John E. Swan)、リンダ・ジョーンズ・コームズ(Linda Jones Combs)による『Product Performance and Consumer Satisfaction: A New Concept』(1976年)によれば、本質機能とは顧客にとって不可欠な機能であり、一定の品質レベルをクリアしていることが必要となる。例えば“自動車が走る”とか、“ホテルに宿泊できる”などのことで、これはあって当たり前のものであって過剰なサービスを提供しても顧客満足度が大きくならない代わりに、機能が水準以下になると顧客満足が急低下する。一方、「表層機能」は本質機能を補完したり、付加価値を加えたりするもので、“自動車の燃費が優れている”“ホテルの従業員が親切”などが該当する。本質機能が水準以上であるという条件を満たしている限り、表層機能の品質レベルが向上するに従い、顧客満足も向上することが期待される。顧客に製品・サービスを提供する場合には2つの機能を区別し、本質機能を期待通り提供したうえで、表層機能で差別化を行うことが重要となる。

 経営手法として日本でブームになった際には、顧客満足は精神論的に「サービスレベルを上げること」と解釈されることが多く、過剰なサービス提供や多機能化、多アイテム化などが見られ、経営資源の浪費や現場の疲弊を生む例が見られた。しかし、本来の顧客満足経営は顧客の期待レベルを知り、それと自社が提供している商品・サービスが合致している顧客を選別することが必須である。1990年代にはITを活用して顧客の選別、長期取引(顧客を知ることにつながる)を目指すCRMOne to Oneマーケティングが登場する。

参考文献

▼『新訳 現代の経営〈上〉』 ピーター・F・ドラッカー=著/上田惇生=訳/ダイヤモンド社/1996年1月(『The Practice of Management』の邦訳版新訳)

▼『新訳 現代の経営〈下〉』 ピーター・F・ドラッカー=著/上田惇生=訳/ダイヤモンド社/1996年2月(『The Practice of Management』の邦訳版新訳)

▼『マーケティングの革新――未来戦略の新視点〈新版〉 』 セオドア・レビット=著/土岐坤=訳/ダイヤモンド社/2006年2月(『Innovation in Marketing』の邦訳)

▼『お客様に対応する業務の品質管理』 永川克彦、蛭田潤、江渡康裕、渡邉聡=著/日本能率協会マネジメントセンター/2007年2月


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