日立、フィジカルAIの4つの新サービスを発表 「なんちゃってFDE」で終わらせないアプローチとは 

「FDE」を名乗るサービスが次々に誕生する中、日立はフィジカルAIの実装を担うFDEをあえて「チーム」として構成する。「1人のスーパーマンでは足りない」理由とは。

» 2026年09月07日 12時00分 公開
[田中広美ITmedia]

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 AIを社会インフラに実装する上で、安全を確保しつつ、いかにAIのコストを抑えるかが重要課題として浮上している。

 日立製作所(以下、日立)が2026年9月3〜4日に開催した「Hitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN」の9月3日の基調講演「フィジカルAIによる社会インフラ 〜日立の『デジタルインフラ』最前線〜」に同社の徳永俊昭氏(代表執行役 執行役社長 兼 CEO)が登壇し、フィジカルAIで社会インフラを革新するソリューション群「HMAX by Hitachi」(以下、HMAX)の拡充を発表した。

写真1 基調講演に登壇した日立製作所の徳永俊昭氏(筆者撮影) 写真1 基調講演に登壇した日立製作所の徳永俊昭氏(筆者撮影)

 HMAXは、鉄道やエネルギー、金融などの社会インフラへのフィジカルAI実装に向けて日立が提供するソリューション群だ。徳永氏は、同社が目指す社会インフラの姿として「AIによって自律進化するデジタルインフラ」を掲げ、AIの自律進化がもたらす未来を「人間社会が初めて目の当たりにする世界」と表現した。

 一方で、人が都度介入せずにAIが自律進化するデジタルインフラを実装する上では、AIによる計算コストやエネルギー消費が天文学的に跳ね上がり続けるリスクもあるとし、「これをいかに抑えつつ、現場のフロントラインワーカーの安全を損なわずにAIを実装するかが重要課題として挙がっている」と整理した。

 今回発表されたHMAXの新サービスはこれらの課題の解決を図るものだ。具体的には、データセンター事業者向けの「HMAX Data Center」、サイバーセキュリティの「HMAX Cyber」、現場データの基盤「HMAX Data Fabric」とAI運用の「HMAX AI Operations」、顧客の現場に伴走するエンジニア集団「Physical AI FDE Team」が新たに加わる。

 徳永氏はPhysical AI FDE Teamについて「暗黙知をAIレディなデータへと転換する」新サービスと説明。9月3日に開催された記者説明会では、同社の吉田順氏(HMAX&AI推進センター本部長)がPhysical AI FDE Teamが「1人のスーパーマン」ではなくチーム体制を取る理由と、同社のFDEサービスの強みについて語った。

(注1)日立は製造や建設、社会インフラなどの現場で働く従業員を「フロントラインワーカー」と呼ぶ。

HMAXが拡充 4つの新サービスの中身は?

 HMAXの4つの新サービスのポイントは次の通りだ。

  1. HMAX Data Center: データセンターの電力、IT、冷却の各設備を横断して統合監視し、AIで障害を分析して運用改善につなげるソリューション群。第1弾として運用支援サービス「HARC for Data Center」(HARC:Hitachi Application Reliability Centers)を北米向けに提供する。日本では2027年1月に提供を開始する予定だ。同社の尾崎慎一氏(DC&アドバンスドサービス推進本部 本部長)は「日立製品に限定せず、他社の設備も含めて統合管理する」と述べた
  2. HMAX Cyber: 攻撃を前提に、リスクの特定から監視、復旧までを支援するオペレーショナルレジリエンスサービス。同社の青山桃子氏(HMAX Cyber 筆頭White Hacker)は、Anthropicのセキュリティプログラム「Project Glasswing」で同社の先進AIモデル「Claude Mythos Preview」を使い、「社会インフラ向け大規模ソフトウェアの脆弱(ぜいじゃく)性検証を高速化できた」と報告した
  3. HMAX Data Fabric、HMAX AI Operations: HMAX Data Fabricは、現場のデータや熟練者の暗黙知をオントロジー(概念同士の関係を定義した知識体系)に基づいて体系化し、AIが活用できる知識資産として蓄積するデータ基盤。HMAX AI OperationsはAIの挙動を監視し、不適切な挙動を抑止する運用サービスだ。同社の佐佐木秀貴氏(HMAX事業推進室長)は、日立グループの従業員29万人が使う社内AI環境「Effibot Connect」の運用にこれらを既に適用していると説明した
  4. Physical AI FDE Team: HMAXの各ソリューションを顧客の現場に実装するため、FDE(Forward Deployed Engineer)がチームで伴走するエンジニアリングサービス

 4点目のPhysical AI FDE Teamについて、吉田氏は、チーム体制を取る理由をこう説明した。「一般的にFDEといえば、1人でスーパーマンのように動くイメージがある。だがフィジカルAIではITやOT、プロダクト、サイバーセキュリティなどの知識が必要で、1人で全ては担えない」

 FDEチームの後方には、グローバルパートナーとの連携拠点「FADC」(Frontier AI Deployment Center)を置く2段構えだ。顧客と向き合う時間が長いFDEは最新情報を得る機会が減りやすいため、FADCがAnthropic、Google、OpenAIなどから得た最新技術を前線のチームに供給する2段階の構造にしたという。吉田氏は「今メディアでは『なんちゃってFDE』という言い方もある」としつつ、「われわれはドメイン知識とものづくりの実績を生かし、胸を張ってFDEだと言えるサービスを提供したい」と語った。

社会インフラを裏で支える「OS」としての覚悟

 徳永氏は基調講演で、フィジカルAIによって現場を革新するHMAXについて「社会インフラを動かす一大オペレーティングシステム(OS)と言える存在になる」と位置付けた。日立の黒川亮氏(HMAX戦略統括室長)はこの言葉を受けて、次のように語った。「『Windows 95』から『Windows 11』に至るまで進化を重ねてきたように、まずここから始める。OSは黒子(くろこ)だ」

 この日、記者説明会に登壇した6人は衣装を黒でそろえた。黒川氏によると、OSとして裏で支える姿勢を示すためだという。

写真2 記者説明会の登壇者。6人が黒い衣装でそろえた(筆者撮影) 写真2 記者説明会の登壇者。6人が黒い衣装でそろえた(筆者撮影)

 日立はLLMやロボットを自社開発するのではなく、NVIDIAやAnthropic、OpneAI、Microsoft、Google、Amazon Web Services(AWS)、Exelon、Architypeといった企業と協業している。黒川氏は顧客課題や社会課題の解決を「在りたき姿」と表現しつつ、パートナー企業の最先端の技術を採用しつつ、顧客課題に取り組む日立の在り方について次のように語った。

 「パートナー企業は非常に短期で最先端の製品で勝負をかけている。顧客が在りたき姿にたどり着くにはだいたい1年かかる。われわれは顧客の在りたき姿というのがまず絶対条件で、長期的にそれを実現していく」

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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