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» 2008年05月26日 00時00分 UPDATE

情報マネジメント用語辞典:デルファイ法(でるふぁいほう)

delphi method / delphi technique

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 専門家グループなどが持つ直観的意見や経験的判断を反復型アンケートを使って、組織的に集約・洗練する意見収束技法。技術革新や社会変動などに関する未来予測を行う定性調査によく用いられる。

 デルファイ法ではまず、予測したいテーマについて詳しい専門家や有識者を選んで意見を求める。得られた回答は統計的に集約して意見を取りまとめ、これを添えて同じ質問を各専門家に対して行い、意見の再検討を求める。この質問とフィードバック、意見の再考という過程を数回、繰り返すとグループの意見が一定の範囲に収束してくる。この意見集約によって、確度の高い予測を得ようというわけである。

 一般に、専門家同士の意見の集約・合意を得る方法として、会議や審議会、パネルディスカッションといった意見交換法が用いられるが、これらの方法は「グループにおける優位者や権威者、声の大きな者の影響」「テーマと無関係な意見、反対のための反対」「意見の統一に対する圧力」などによる偏りが考えられる。

 デルファイ法は「匿名の回答」「反復とコントロールされたフィードバック」「統計的なグループ回答」という特徴を持ち、師弟関係や友人関係といったテーマと関係のない影響力を極力排除するよう配慮される。

 意見の集約は、中央値/四分位範囲を使うことが多い。得られた回答を数値順に並べ、その中央値の確からしさを1、上位の四分位値(第1四分位値)と下位の四分位値(第3四分位値)の確からしさを0.5として、上下それぞれ4分の1の部分に入る“外れ値”を除いたものを集約された意見として、各回答者にフィードバックする。

ALT 中央値/四分位範囲で意見を集約する

 フィードバックにおいては、設問/回答の回答者数(支持者数)を示したり、度数分布グラフを加えることもある。こうすることで回答者は、自身の意見がグループ全体の中でどのような位置にあるかを知ることができ、必要に応じて意見を修正する。ただし、これは参加者に対して迎合をうながすものであってはならず、事前にそのルールを明確にしておかなければならない。なお、少数意見を重視する場合は、“外れ値”をつけた回答者に理由を説明するよう求めることもある。

 デルファイ法は1950年代に米国のシンクタンクであるランド・コーポレーションで開発されたものである。もともとは、米空軍が専門家の意見を応用して「ソ連の戦略立案者の立場から、米国産業を目標にしたときに必要になる原子爆弾の数の推定する」研究である“Project Delphi”をランドに依頼したことに始まる。デルファイとは、神託で有名なアポロン神殿のあった古代ギリシャの地名である。

 この課題に取り組んだノーマン・C・ダルキー(Norman Crolee Dalkey)とオラフ・ヘルマー(Olaf Helmer)は1953年ごろに「コントロールされたフィードバックによる相互作用」の概念を導入してデルファイ法の基礎を確立したが、1950年代には軍事機密扱いだったため、外部に知られることはなかった。

 1960年代になって、ヘルマーはセオドア・J・ゴードン(Theodore Jay Gordon)らとともにデルファイ法を使って人口や技術などに関する未来予測を行い、その結果を「Report on a Long-Range Forecasting Study」(1964年)として発表した。これがきっかけとなり、航空宇宙産業や防衛産業、電子産業が技術予測(実用化の時期の予測)などに採用するようになった。

 1970年代以降になるとさらに広まり、企業の経営計画やマーケティングにおけるリサーチ手法として使われるほか、公共政策や社会問題、医療、教育などに関する調査に利用されている。日本の文部科学省が1971年以来実施している科学技術予測調査は、世界で最も大規模なデルファイ調査である。ITの世界では、システム開発プロジェクトにおける工数やコストの見積もり、リスクの洗い出しなどに使われることがある。

 デルファイ法は広い分野で受け入れられたこともあって、初期のころからその妥当性に関する議論が活発に行われてきた。デルファイ法の問題としては「専門家の定義や選出方法」「アンケート質問の適正さ」「意見一致への強要や誘導」「集約手法の信頼性や妥当性」「未来予測の限界」などが指摘される。デルファイ調査を実施する際には、手法に内在する限界を十分に理解したうえで、適切に行うことが必要である。

参考文献

▼「An Experimental Application of the Delphi Method to the Use of Experts」 Norman C. Dalkey、Olaf Helmer=著/Management Science, Vol. 9, No. 3/1963年4月Management Science, Vol. 9, No. 3/1963年4月

▼「Report on a Long-Range Forecasting Study」 Theodore J. Gordon、Olaf Helmer=著/1964年9月[PDF]

▼『情報化時代の産業予測――アメリカ産業の新しい動き』 牧野昇=編著/東洋経済新報社/1970年9月


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