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» 2012年03月14日 12時00分 UPDATE

IT担当者のための業務知識講座(8):深い業務知識が、信頼できる金融システム構築の鍵 (1/2)

システム開発には業務知識が不可欠。高度な信頼性・安定性が求められる金融システムの開発・運用では業務知識がより一層重要になる。

[杉浦司,@IT]

金融業は社会基盤そのもの

 今回は金融業について解説します。金融業の本質は、「お金が不足する者とお金が余る者を結び付けて、お金が流れていくようにすること」にあります。例えば、自動車や住宅を買う際、まとまったお金がない個人でも、長期的に安定した収入があれば、銀行でローンを組むことができます。

 また、売れる商品やサービスのアイデアがあり、それを事業として継続していける経営能力があると評価されれば、証券会社を通じて株主を募集することができます。資本主義社会が起業家のイノベーションによって成長拡大していくためには、金融業の存在が不可欠なのです。

 一方で、大学進学や結婚、出産、住宅購入といったお金がかかるときに融資を受け、余裕のあるときに返済するという金融サービスがなければ、市民生活は立ち行きません。金融業の存在は社会基盤そのものと言っても過言ではないのです。

金融業の中心的役割を果たす銀行と証券会社

 金融業と言えば、まず思いつくのは銀行と証券会社ではないでしょうか。銀行の主な業務機能としては、「預金受入」「資金移動」「融資」「手形・小切手の発行」などがあります。一方、証券会社の業務機能としては、有価証券の売買を行う「ディーラー業務」、有価証券の売買を取り継ぐ「ブローカー業務」、有価証券の引き受けや売り出しを行う「アンダーライター業務」、有価証券の募集や売り出しの取り扱いを行う「セリング業務」などがあります。

 この他にも多種多様な業態があります。予期しない事故による生命や財産上の損失に対して保険金を給付する「保険会社」、企業が必要とする機械設備を長期にわたって賃貸する「リース業」も金融業に当たります。

 この他、中小企業向けの銀行的存在である「信用金庫」や、民間の金融機関では対応しにくい融資を行う日本政策金融公庫などの政府系金融機関、農協など貯金や貸付、証券業も行う協同組合もあります。

 また、Eコマースでの利用が浸透しているクレジット決済や、電子マネー決済サービスの運営会社も、新しい形の金融機関の一種と言えるでしょう。業態はさまざまですが、「お金が不足する者とお金が余る者を結び付けて、お金が流れていくようにすること」という本質は全業態に共通していることが分かるのではないでしょうか。

金融業における顧客は誰か?〜誰のための価値創造か〜

 一方、金融業における顧客は、「お金に対する何らかのニーズを持っている人」と定義できます。それが「お金を遠くに届けたい」いうニーズなら、金融業が提供するサービスは物流業に似ており、「お金を増やしたい」というニーズなら製造業に似ていると言えるかもしれません。クレジットカードや電子マネーといった利便性の高い決済サービスを提供している点に注目すると、サービス業としての一面もあると言えそうです。

 ただ、「金融業者にとっての顧客」を考える上で重要なのが“お金が持つ特殊性”です。例えば、現金が手元になくても、先々確実に払ってくれるのなら、それを信用して取り引きを行うことは一般的に行われています。

 しかし、現金の実在数に商取引が縛られるとしたらどうでしょう? 顧客が持っている現金の金額以上のビジネスチャンスは一切存在しないことになってしまいます。「まとまったお金はないが、分割すれば車や家が買える人」がローンを組んだり、「元手が少なく大規模な宣伝広告ができないベンチャー企業」が融資を受けたりすることで、保有している現金の金額以上のあらゆるビジネスチャンスが生まれているのです。

 この点に着目すると、金融業は「信用という価値を顧客に提供している」とも言えるのではないでしょうか。

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