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オークション詐欺実態と 被害を防ぐための心構え
だれでも手軽に参加できることで人気のネットオークションだが、詐欺などの犯罪事件も後を絶たない。オークション詐欺の手口の実際や、被害に遭わないためにはどのような姿勢で利用すればよいかを見ていこう。 |
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刑法
犯罪と刑罰を規定する法律。詐欺罪は刑法246条に定められており、10年以下の懲役に処せられる
古物営業法
盗品売買の防止などのため、古物営業にかかわる業務を規制する法律。現行の法律では、個人間取引の「場」を提供するだけのネットオークションは、古物営業には該当しないとして、規制対象となっていない |
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インターネット上で販売者と購買者の取引を仲介し、電子商取引を促進させるネットオークションが急成長している。ネットオークションは、出品者・購入者・オークション企業の3者からなる。出品者は、オークションサイトに商品情報・最低落札価格・発送方法などを提示して商品をセリにかけ、それに最も高い値段を付けた者が落札する仕組みだ。だれでも簡単に参加できる手軽さと、希少価値のある品物が見つかることなどから、大人気となった。しかし、ネットの匿名性と参加者に対する個人認証の甘さを突かれた詐欺事犯も続出している。警察庁によれば、昨年1年間のネットオークションを利用したハイテク犯罪(盗品売買関係を除く)の検挙件数は182件で、2000年の2.4倍に急増した。またネットワーク詐欺事件のうち、約6割(62件)はオークション利用の犯罪だった。
オークション詐欺に 遭わないために
詐欺罪は、「だます行為→被害者の錯誤→その錯誤に基づく被害者の財産処分→(被害者から犯人への)財産の移転」によって完成する。このような要件を具備する限り、ネット詐欺に刑法を適用するうえでの理論的な問題があるわけではない。ただ、ネット取引は相手の顔が見えないという点で、捜査の難しさがある。
商品を落札すれば、出品者と落札者との間でメールなどによる具体的な交渉が開始される。企業対個人の場合は、代引や後払いといった方法があるが、個人対個人の場合は、まず代金を指定された口座に振り込むのが通常だ。振込後に商品が送られてこず、相手のメールアドレスが無料アドレス、携帯電話番号も契約者不在の番号、しかもその振込先が架空名義の口座であれば、詐欺に遭ったとみていい。
1個の商品を複数の者に売ったり、存在しない商品をセリにかけたり、偽ブランド品を本物と偽って代金を振り込ませるといった手口が多数報告されている。また、掲載された商品の写真が実物と異なっていたために後日トラブルになったり、出品者自らが別のIDで入札者に成り済まし、価格をつり上げるケースもある。
このようなネット詐欺師のカモにならないためにはどうすればよいか。現実社会と同様、詐欺師の甘い言葉に乗らない姿勢が基本だ。代金振込の前に、相手の住所・自宅の電話番号・メールアドレスを確認し、商品について詳しく聞く。応対に不審を感じれば乗らないこと。何よりも個人認証が強化されているオークションサイトなら一応信頼はできる。さらに最近では、出品者と落札者を仲介し、代金の振込・支払い・商品の発送などを代行するエスクローサービス業者と提携するオークションサイトも多い。もちろん、その場合には手数料が必要となるが、詐欺の被害に遭わないためには高くはない保険料といえるだろう。
なお、ネットオークションでの盗品の流通を防止するため、古物営業法の改正が話題になっている。この改正案は3月に閣議決定され、今国会で成立すれば来春にも施行の見通しだ。
警察庁は、ネットオークション業を公安委員会への届出制とし、盗品についての警察への通報、出品者の身元確認、取引記録の保存などを求めている。身元確認などが強化されることによって、結果的に詐欺などの犯罪も減るだろう。しかし、業者が出品内容をすべて点検するのは不可能に近く、オークション業者からも反対の声が上がっている。また通信の秘密保護の点からも、自由なネット利用の発展を阻害する過剰な法規制だとの批判が強い。
電脳世界の刑法学
w3.scan.or.jp/sonoda
園田 寿
関西大学法学部教授。20年来のネットワーカー。囲碁とジャズ、村上春樹と韓国に夢中。著書に、「ハッカーvs.不正アクセス禁止法」(共著、日本評論社刊)、「[解説]児童買春・児童ポルノ処罰法」(日本評論社刊)など。ホームページ「電脳世界の刑法学」は、有名サイト
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