いますぐ実現できる“e-Japan”
1軒も本屋がない村に出現したネット書店
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東成瀬村――人口3500人。秋田県の東南端にある小さな村。古くから「仙人の郷」として知られるのどかな場所だ。
4月、そんな村に、ネット書店ができた。
地元の書店がネット通販を始めたのか? と思えば、ウェッブサイトはないらしい。ウェッブサイトのないネット書店って、どういうことだろう?
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東成瀬村は秋田県の東南端にある。東は岩手県に、南は宮城県に接する。標高1424メートルの秣岳(まぐさだけ)周辺は、風光明媚な栗駒国定公園。キャンプや森林浴、温泉、スキーなど、自然が楽しめる場所だ
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東成瀬村ホームページ
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インターネットのメリットを
知らず知らずのうちに享受
実はこの「ネット書店ひがしなるせ」、正体は村役場だったのだ。
東成瀬村には、本屋が1軒もないという。インターネットが使える人ならそれこそAmazon.co.jpなどで注文すればよいが、村のインターネット普及率はまだまだ低い。そこで、そうした人の代わりに村が代行して注文しましょう、という試みなのだ。申込用紙に記入して窓口に持参するか、電話かFAXで申し込むと、職員がネット上の本屋を検索し、手続きを行う。すると、1週間以内には本が届く。利用するサイトは特定していないが、送料、品揃えの面でAmazon.co.jpの活用頻度が高いという。
3月下旬、村の広報誌で告知して、4月10日までの時点での注文は5件程度だ。「最初は月に1〜2件あればいい方かなと思ってました」(総務課の備前博和さん)というから、順調な滑り出しのようだ。
「村のホームページでも、さまざまな情報提供や図書館の蔵書検索サービスなどを提供していますが、結局ネットに接続している村民が少ないと意味がないんです。村のインターネット利用者は、まだ1割程度じゃないでしょうか」(備前さん)
そこで、最初からパソコンを使うのではなく、まずはインターネットの便利さを実感してもらおう、というのがこの方法だ。ネット書店を通じてインターネットに興味を持ってもらい、村が設置する公共端末の利用率を上げ、ひいてはインターネット利用者を増やしていきたいという。
今後、本以外の商品を扱う計画もある。利用者の支払い口座を管理することなども考えているという。
比較的大がかりで、実現までにはある程度時間もかかりそうな「電子役所」への取り組みもいいが、「いますぐ実現できる」レベルで、インターネットを全く意識させずにそのメリットを享受できるようにした「ネット書店ひがしなるせ」に、学ぶべき点も多いのではないだろうか?
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「ネット書店ひがしなるせ」注文手順
- 欲しい本があったら、申込用紙に記入
- 村から委託を受けたシルバーバンク(高齢者の人材バンク)が、この書店の窓口。申込用紙を直接持参するか、電話かFAXで申し込む
- 本が到着。配達もしてくれる。シルバーバンクが普段福祉サービスのために行っている巡回ルート中に、申込者のところに届けてくれるのだ
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文/編集部
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