ファイルローグの終息は
P2Pの終焉ではない
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昨年11月にサービスを開始したP2P※型ファイル交換サービス「ファイルローグ」に対し、日本レコード協会と日本音楽著作権協会（JASRAC）が東京地裁に申し立てていたサービス停止の仮処分の申請が4月上旬、全面的に認められた。これに伴い、ファイルローグのファイル検索サービスは4月16日で一時停止となった。
講演に先立ち「今回の裁判に負けたことで、『P2P＝ファイル交換＝悪』という認識を与えてしまい、P2P自体のイメージを大きく損ねてしまったことをお詫びしたい」と語った日本MMOの松田氏
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Napsterと同じ運命をたどったファイルローグだが、“負けた”一番の原因は何だったのだろう？ ファイルローグを提供する日本MMOの松田道人氏は、4月11日の「P2P Conference in JAPAN 2002」の講演においてこう主張した。「ほかの業界は自分たちの商権を脅かすような新規事業者が現れた場合、商権を守るために有利なルール作りや政府への抗議行動を行っている。通信業界は、権利者の利益を無視してでももっと商権を主張すべきだ」
だが、ファイルローグの使われ方のほとんどが違法行為というのもまた事実。違法行為が野放しになっている商権は到底認められるはずがない。商権を主張するなら、きちんと音楽業界側が納得する（少なくとも不当に彼らの商権を侵害しない）著作権保護技術やビジネスモデルの提示が必要だった。
P2Pはサービスの効率化と
莫大なコスト削減をもたらす
では、今後ファイルローグを含むP2P形態のネットサービスは成立しないのか？
「技術的成熟とビジネスサービスとしての成熟は一貫したものではない。ファイルローグやNapsterは、P2Pという新しいインフラが浸透していく過渡期における『裂け目』の時期」（Jnutella.orgの川崎氏）
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P2Pの可能性を研究する団体「Jnutella.org」代表の川崎裕一氏は同カンファレンスの講演でそれを否定する。「P2Pを利用すれば、回線への余計な負荷が減る分、低コストでさまざまなサービスを実現できる。この部分にもっと目を向けるべきだ」
いままでのネットサービスはクライアント/サーバー型のウェッブサービスが中心。ユーザーの回線も細くストレージも少ない状況では効率的だが、ネットユーザーの急増やブロードバンドの普及によりサーバーへの負荷は増大する一方だ。ならば、ネットワークの負荷を分散させようというのが、そもそものP2Pの考え方。ブロードバンドが普及しているいまこそ追い風といえる。実際にカンファレンスでは、P2P技術を使ったビジネスやサービスが多数紹介された。米国では、Sony Music Entertain mentがP2Pコンテンツ配信技術を持つCenterSpan社と契約を結び、音楽配信の提供を予定している。日本でも、「シェアキャスト」など、P2Pをネットサービスに利用するための基礎技術はすでに完成している。あとはいかにコンテンツ保持者を説得し、まっとうなビジネスモデルを確立できるかどうかにかかっている。
「シェアキャスト」。ユーザーどうしが映像や音声のストリームを受信しつつ、同時に数台の端末に対して分岐中継、再配信する工程を次々に繰り返すことで配信対象を広げることができるシステム。著作権保護や課金も可能
www.scast.tv
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※Peer to Peer（ピアツーピア）の略。コンピュータ間が対等（上下関係がない）に通信するネットワーク形態のこと。中でも最近は、不特定多数の個人間でのファイルをやり取りする「ファイル交換ソフト」がクローズアップされている |
文/津田大介
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