広がるオンデマンド出版の可能性
名作・稀覯本がオーダーメイドで買える
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音楽界では原由子、椎名林檎、福山雅治らによる懐メロカバーアルバムのセールスが好調だ。また出版界でも『ドカベン』『キン肉マン』『北斗の拳』など、かつての人気漫画の続編が想像を超える大ヒットとなっている。これらは、ツライことの多い現代、ノスタルジーに癒しを求める心理の表れなのだろうか。
そんな流れの中で、いま注目を集めているのが、インターネットを利用したオンデマンドによるコミックの復刊だ。同形態の出版で5年の実績を持つ「BookPark」は、今年6月20日、絶版・品切れになった作品を、注文ごとに印刷・製本して読者の手元に届けるというシステム「コミックパーク」をスタートした。現在のラインアップは講談社、小学館、青林堂が版権を所持している作品群で、かつての漫画少年・少女の胸を熱くする名作・傑作揃いだ。
「1冊からでも作成し、お届けできる弊社のオンデマンド出版システムを使用すれば、在庫リスクやビジネス的判断による絶版や品切れなしに、読者に継続的に作品を提供することができます。出版社と作者にとっては、作品を常に世に問い続けることができるというメリットを、そして読者には、いつでも思い出したときにここにくれば欲しい作品が入手できるというメリットを提供できる。そう確信してサービスを開始しました」と語るのは、コミックパークを運営するコンテンツワークスの吉村浩氏。
復刻作品の中でも人気が高く、公式サイトもある『サイクル野郎』の作者・荘司としお氏は、「こうした形で昔の作品がよみがえるのは、とてもうれしいですね。自転車はブームや世代を超えたスポーツだから、若い方にも読んでもらえたら幸せです。それに自分自身も、あのころの元気さを取り戻せるような気がしますからね」と語る。荘司氏のもう1つの代表作『夕やけ番長』にも復刊を望む声が集まっているという。
荘司としお
漫画家。1959年デビュー。スポーツ漫画を中心に活躍する。丸井輪太郎が仲間とともに自転車で日本一周を目指す『サイクル野郎』は、70年代に大ヒットを記録し、いまもサイクリストのバイブルとなっている
- 「息子がコンピュータ関係の仕事をしてるんですが、ボクはからきしダメ(笑)。でも、今度ぜひ公式サイトの読者の声を読んでみたいと思っています」(荘司氏)
「スタート以来、ユーザーから寄せられる喜びの声は数多く、3日間で60万という小社で最高のアクセス数を記録しました。システム的にコストが高めになるなど、まだまだ課題はありますが、確かな手ごたえを感じています」(前出・吉村氏)
出版に限らず、あらゆる流通のキーワードとなっている“オンデマンド”というシステム。コミックでのブレークが今後の展開に大きく貢献することになるかもしれない。
コミックパークの復刊本は、カバーはなく、洋書のペーパーバックのような製本イメージ。現存する書籍を原稿として作成しているが、絵が損なわれることなく、十分に楽しめる
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■コミックパーク
www.comicpark.net
昭和30〜40年代の名作を中心に、巨匠の無名時代の作品など、レアなコミックが1冊600〜800円台で購入できる
- 「えっ、この人って漫画家だったの!?」という声が聞こえてきそうな作家を発見!『タモリ倶楽部』などでおなじみの、杉作J太郎氏の作品も、コミックパークで手に入る
■復刊ドットコム
www.fukkan.com
絶版・品切れのため入手不可な書籍を、希望者の投票を集めて復刊させる活動を展開。7月現在、63点の復刊が決定している
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文/小出和明 撮影/山本博道
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