ある検索サイトを見ていて度肝を抜かれた。検索窓の上にドーンと現れる広告画像。数秒で画像は消えるのだが、メインコンテンツにかぶさる広告ってアリ?
昨年夏には、「上からキャラが降ってくる」なんて広告もお目見え。こんな華麗なネット広告が、どうやら増えているようなのだ。
あるインターネット広告代理店の担当者は、「コンテンツの上に画像がかぶさる広告は、媒体との相談で表示可能範囲がきっちり決まっており、ユーザビリティを損なわないような配慮を行っている」と話す。
一見ランダムに見える広告表示も、フリークエンシーコントロール(ブラウザにクッキーを送って広告の表示回数や内容を規制すること)を行うなど、ユーザーにストレスを感じさせない配慮がなされているという。訪れるたびに別バージョンの広告に切り替わる、「転職」と検索したら転職関連の広告が出る、などはその一例だ。
では、広告を掲載するメディア側の意識はどうか。約2400万人のユニークユーザーを抱え、マスメディアとしてのユーザビリティを踏まえて広告に厳しい表現規制を課すYahoo! JAPANは昨年12月、Flashを使用する広告を解禁した。広報担当の佐竹正範氏は、最近のネット広告の変化についてこう語る。「これまでのネット広告はクリックレート*ばかりで評価されたが、サイトの総数が増えればレートが下がるのは当然。ブロードバンド普及の追い風もあって、最近ようやく、ネット広告にも広告本来の『商品を認知させる効果』が求められてきた。その結果、クリエイティブの重要性も認められてきたのでは」 *広告を見たユーザーの何割がクリックしたかを表す指標
ネット広告の歴史は10年にも満たない。軽容量ながら滑らかなアニメ表現が可能なFlashはもとより、テレビCMと比べても遜色のないストリーミング動画広告など、企業側はお金をかけてでもユーザーの目を引く広告に積極的だ。そうした価値が認められるだけのマーケティングデータが、ネット広告にもようやく揃ってきたといえる。
「現在は過渡期だが、本来、優れた広告は良質のコンテンツにもなり得る。ユーザーやクライアントとともに、インターネットを楽しい世界にしていきたい」と佐竹氏。広告があるから無料で情報を入手できるのもこれまた事実。楽しい広告は歓迎し、不快な広告には異を唱える。それが受け取る側の正しい姿勢といえるかもしれない。