たくさんの資料を無料で利用できる公共図書館は、いまも昔も変わらず市民にとってありがたいもの。貸出予約やリクエスト、レファレンスなどを使いこなせば、便利度はさらに上がる。なのに「行く時間がない」「自宅や職場の近くにない」などの理由で、最近利用していないという人も少なくないのではないだろうか?
図書館が提供するネットサービスは、そんな人の貴重な時間や交通費を節約してくれるはずだ。たとえば蔵書検索。現在、全国の図書館のなんと4割近くで、ホームページから蔵書の検索が可能になっている(日本図書館協会による)。図書館へ行ったがお目当ての本がなかった……というムダ足を防げるわけだ。一部の図書館では本の貸出予約までできる。もしほかの人に貸出中でも、返却されたかどうかをいつでもネットで確認できる。確実に借りられる状況になって初めて、足を運べばよいのだ。
こんな便利な図書館のネットサービスは、今後ますます増えるらしい。2002年12月に都内公立図書館の横断検索システムを始めた東京都立中央図書館の大江隆男氏は、「半年前といまとでは、状況は一変している。OPAC(蔵書目録のシステム)のネット公開に消極的な自治体も、ここ1〜2年で公開せざるを得なくなるだろう」と予見する。
ネットで予約できても、最終的には図書館で本を受け取る必要があるが、その手間も省けるようになるかもしれない。岐阜県図書館では、予約した本が最寄りのコンビニで受け取れる「コンビニ図書デリバリーサービス(実証実験)」をスタートした。利用は有料だが、会社帰りの遅い時間でも本を受け取れるのは勤め人には大きなメリットだ。岐阜県地域政策室の桂川隆弘氏は、実験の動機を「遠隔地住民」と「比較的高価で貴重な資料へのニーズの高いビジネスマン」の利用拡大と語る。ココストアなど地元コンビニとの共同事業であり、行政としては踏み込んだ内容といえるだろう。本サービス開始は実験の結果次第とのことだが、ぜひ全国への波及を期待したい。近い将来、図書館へ一度も足を運ばずに、本を借りられるようになるかもしれない。
東京都立中央図書館 企画経営課 図書館情報 システム係IT推進担当係長 大江隆男氏 「岐阜のケースは今後の図書館の生き方として当然、出てくるもの。どの図書館も来館せずに利用可能なネットサービスを考えている。この勢いは止まらないだろう」