同じ接続料金を払っていながら、ユーザー間の使用量が1万倍も違うサービス。あなたは公平と思えるだろうか。
ファイル交換ソフトの問題は、著作権侵害の側面に焦点が当たりがちだが、実はネットワーク負荷の面でも問題がある。ファイル交換ソフトのヘビーユーザーと、一般的なネット利用のユーザーでは、月間のデータ転送量の差が1万倍にもなるケースがあるという。そして、一部のヘビーユーザーによってプロバイダのバックボーンが圧迫されている問題が明らかになってきた。
NTT-MEのマンション向けプロバイダ「BB-EAST」では5月、月100Gバイトを超える極端な大量通信を禁止することを利用規約に定めた。マンションなどの共有型FTTH、CATVサービスでは、一部のヘビーユーザーによる膨大な通信が、ネットワークに影響しやすいという事情がある。だが、このままファイル交換のデータ転送量が増え続ければ、共用型のサービスに限った話ではなくなる。ファイル交換ソフトによるインターネットへの影響について、NTT-ME・WAKWAKカンパニー長の今井敏明氏は「WAKWAKの現状では、バックボーンに深刻な影響を与えるほどの問題にはなっていない。しかし、このままトラフィックが増え続ければ、設備投資が追いつかずバックボーンが破綻するプロバイダが出てくるのではないか」と、業界全体の問題として危惧する。バックボーンが破綻すれば、パケットロスや延滞が起こる可能性が高い。
なぜ、ファイル交換ソフトのパケットが急増しているのか。ファイル交換ソフト事情に詳しいライターの津田大介氏は、FTTHの普及によるユーザー増加に加え、ソフトの変化を理由にあげる。「WinMXに代わり、最近はWinnyが人気を博している。WinMXでは独特の“交換文化”が一定の歯止めとして働いていた」と津田氏。WinMXではファイルを交換する前にチャットで交渉するのが通例だが、Winnyにはそれがない。また、WinMXは交渉が成立して初めて転送が始まるのに対し、Winnyは匿名性を高めるため、ファイルの送信元から送信先の間に別のユーザーを中継するよう設計されており、自分がダウンロードしていなくても常に転送が行われる。「FTTHでWinnyを利用すれば、1日で30Gバイトのハードディスクがいっぱいになるなんてことはザラだろう。Winnyはプロバイダにとっても想定外のソフトだったのでは」(津田氏)
プロバイダ業界は、ファイル交換ソフトに対策を立てているのか。大手プロバイダ30社にアンケート調査を行った。うち、返答があったのが14社、実名での掲載に応じたのが5社だった。詳しくは下にまとめた。
ファイル交換ソフトユーザーも著作権侵害行為がなければ「正規の」ユーザーだ。新しいアプリケーションの登場で、多くのユーザーが“常時”広帯域を普通に使い切る可能性も今後出てくる。ユーザー間の費用負担の公平化や帯域の分配方法を、再検討する時期に来ているのではないだろうか。
▼ 帯域制限やポート閉鎖など、ネットワーク的な規制をかけているか
▼ 利用規約で大量のデータ転送を禁止しているか
▼ ファイル交換ソフト利用者に対し警告をしているか