自分の手でネットを“進化”させたい――「はてな」社長の夢(1/2 ページ)
「インターネットがあれば何もかもが便利になって、皆がハッピーになれる」――“ネット万能論”がまかり通っていたネットバブル末期。ドットコム企業の株価は上がっても、一般の人の生活は一向に変わらない。そんな状態に業を煮やし、「自分なら世の中を本当に便利にするネットサービスが作れる」と起業を決意した当時25歳の青年がいた。「はてなダイアリー」や「人力検索サイト はてな」などで知られるはてなの近藤淳也社長だ。当時、自転車レースを主に撮影する、京都在住のプロカメラマンだった。
起業を決めた近藤社長はカメラマンの仕事を捨て、妻と友人3人で2001年7月、京都で有限会社はてな(現在は株式会社)を設立。初心者でもネットで手軽に目的のサイトが探せる「人力検索サイト はてな」をオープンした。
人力検索サイトとは、知りたいWebサイトを文章で質問すると、別のユーザーが教えてくれるというサービス。ネットを始めたばかりの父親が、検索に苦労する姿を見てひらめいた。
「ネットで情報を探すには“語句間にスペースを入れればアンド検索”など特殊な検索ルールを覚えねばならず、初心者には難しい。一方で、人間にはもともと“文章で質問する”という技術があるんだから、それを生かして検索できるサービスがあれば便利だろうと考えた」(近藤社長)。
しかし当初はユーザー数が伸びず苦戦した。原因は、質問を有料にしたことにあったと近藤社長は分析する。質問するには1回60ポイント(1ポイント1円)が必要。満足のいく回答を寄せてくれた回答者には、質問者が任意のポイントを支払う仕組みになっている。
「“はてな”という聞いたこともないサイトがあって、有料で何か質問できると突然言われても信頼できないし、正直、僕でも使わないだろうと思った」と近藤社長は当時を振り返る。ブランド力のないサイトに、抵抗なくお金を払ってくれるユーザーはなかなかいなかった。
かといって、無料化はしなかった。「質問が無料だと、質問者の立場が回答者よりも低くなってしまう。無料の掲示板やQ&Aサービスでは、初心者が簡単なことを質問をすると『そんな当たり前のことは聞くな』とか『既出だよ、ちゃんと調べてから質問しろよ』などと回答者に冷たくあしらわれることが多い」(近藤社長)。有料にすることで質問者の立場を高め、検索が苦手な初心者でも優しく迎えてもらえるサービスをめざした。
起死回生の策としての「アンテナ」と「ダイアリー」
人力検索サイトのユーザー数を増やすため、無料化の代わりにとった策は、2002年5月に始めた「はてなアンテナ」と2003年3月オープンの「はてなダイアリー」。「便利なサービスをもう一つ提供するから、人力検索と一緒に使って、ネットの便利さを体感してほしいという思いだった」(近藤社長)。
はてなアンテナは、指定したWebサイトを自動巡回し、更新情報を表示してくれる無料のアンテナサービス(オプションは有料)。近藤社長が使っていたフリーのアンテナソフトからヒントを得た。4月16日現在、4万8700人に利用されている。
はてなダイアリーは、Webブラウザから簡単に更新できる無料日記ツール(同)。「同じ興味を持った人と自然にコミュニケーションできるシステムがあれば楽しいだろう」と考えた近藤社長は、同じキーワードを使っている日記同士がリンクでつながる仕組みを取り入れた。この仕組みが人気を呼び、はてなダイアリーは4月16日現在、3万7400人のユーザーを獲得している。
ブログ(Blog)サイトが流行し始めた最近、「はてなダイアリーは日本最大のブログサイト」「国内のブログサイトの先駆け」などと言われこともある。しかし近藤社長はダイアリーを作った当初、ブログは全く意識していなかったという。
「国内でブログが流行しだしたので、宣伝効果を狙って“はてなダイアリーもブログです”と言ってはいるが、もともとブログとは関係ない、オリジナルのサービスとして始めた。ブログは一過性のブームだから、1、2数年後には沈静化し、いくつかのブログポータルがつぶれるような事態になるだろう。その時にも何事もなかったかのように涼しい顔をしてダイアリーを続けていたい」(近藤社長)。
はてなが目指すのは、初心者でもとっつきやすく、ずっと使い続けてもらえるサービス作り。ブームを利用してユーザー数を増やすことはあっても、ブームだからといって人と同じことはしない。「他の誰かができることをしても意味がないから」(近藤社長)
2004年4月、はてなは京都から東京に移転した。「本当は、京都でずっと続けてみたかった。でも東京で色々な人に出会い、刺激を受けることも必要だと思った」(近藤社長)。
経費はかかっても、ユーザーは多ければ多いほどいい
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
佐川急便、不正アクセスで個人情報流出か 送り主・届け先の氏名や住所など、約100日分の荷物データ対象
-
2
睡眠中に「ピンクノイズ」を聞くと“脳内ゴミ”の洗い流しが強まる? 米MITが人間で実験 Science系列誌で発表
-
3
免許証の悪用防止で申し込み集中 JICCがアプリ受付を一時休止 タイムズカー漏えいの影響か
-
4
「写真で一言 ボケて」きょう午後8時にサービス終了 18年・1億超のボケに幕
-
5
免許証の悪用防ぐ届出集中、CIC・JICCで手続き遅延 タイムズカー情報流出直後に
-
6
「Gポイント」不正アクセスで一時停止 「会員識別子」約7万件漏えいか KDDI不正会計問題のジー・プランが運営
-
7
ドラッグ&ドロップ操作ミスで……TOPPAN、損保ジャパン契約者17万人分のデータを他社に誤送付
-
8
日本原子力機構に不正アクセス 研究者の顔写真付き身分証など漏えい
-
9
セイコーマート、会員のほぼ半数に当たる情報漏えい 約57万人分
-
10
アンケート結果をダウンロードしたら他社の従業員情報が…… ベネフィット・ワン、1万3460人分漏えい
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR