ハイレゾでストレス軽減? 「耳で聴くだけではダメ」と専門家:脳機能を活性化(1/2 ページ)
音楽と脳の関係を研究する本田氏が高周波な音の癒やし効果について解説し、イヤフォンやヘッドフォンで聴いてもあまり効果が得られないことを明らかにした。
「高周波な音をスピーカーで聴くと、脳機能が活性化してα波が増加する」――7月30日、Gibson Brands Showroom Tokyoで開催された「ハイレゾ音楽塾」で、オーディオファンでなくとも思わず気になる音と脳の関係に迫るセミナーが開催された。
講師は、国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第七部部長 本田学氏。「ハイパーソニック」という可聴域を大きく超える高周波な音が脳機能に与える効果について研究しており、同研究の先駆者であり音楽家である大橋力氏(芸能山城組の山城祥二氏)に研究・音楽面共に師事する。
高周波な音でストレス軽減?
本田氏が発表した「ハイパーソニック・エフェクト」は、人の耳で聞こえない超高周波音と可聴音を同時に体に当てると、自律神経系、内分泌系、免疫系をつかさどる視床下部や脳幹、情動をつかさどる視床・中脳といった基幹的な脳機能が活性化するというもの。
脳波と脳血流の同時計測実験では、ハイパーソニックにより快適さ・快感を示すα波が有意に増大し、ストレスホルモンも低下したという。本田氏は「脳機能が活性化することで、心身共にポジティブな効果が得られる」と話す。実験では高周波を含むハイレゾ音源を使っているが、ハイレゾ音源が高周波を含むとは限らない。
ただし、最大限の効果を得るには「(1)周波数帯域は3万2000Hz以上」「(2)可聴音と超高周波音を同時に聴く」「(3)2では、超高周波音を体表面に当てる」という条件がある。イヤフォンやヘッドフォンで超高周波音を聴いても効果はなく、全身を覆って超高周波を遮断した際も効果は減弱したという。本田氏は「ネズミで実験した際も、5万Hz以上の鳴き声を聞かせると快感中枢のドーパミンが増えた」と説明する。
研究のきっかけはアナログレコード時代の“隠し味”
ハイパーソニック・エフェクト研究の第一人者は山城氏。山城氏はアナログレコードの全盛期に“隠し味”として5万Hz以上の超高周波音を使っており、CDで2万2000Hz以上の周波数を記録できなくなった際に「音質や感動が格落ちする」と感じたという。ほかの録音技師たちも同じ感想だったため、肌感覚で使った隠し味を科学的に証明しようと思い、研究をスタートした。
楽器別ではチェンバロ(5万Hz以上)やガムラン(10万Hz以上)などが高周波な音を出すが、ピアノやオーケストラなど西洋の楽器は時代を経るごとに聞こえない音をカットしていくように進化してきた。従来の音響学は、人間が知覚できる周波数上限を2万Hzと決め、それ以上のものを排除してきたという。一方、尺八など日本の和楽器は西洋とは逆で、高周波な音を出す。
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