シンガーのボブ・ディランは、作詞への無断引用や盗用を指摘され、“器が小さい連中”に苦言を呈している。
「フォークやジャズで引用は当たり前のこと。私にも私のルールがある。ヘンリー・ティムロッド(19世紀の詩人)に関していえば、最近誰が彼の名前を聞いたかね? 誰が彼を読んだっていうんだ? 誰か彼を紹介しようとしたか?」
ディランの主張はこうだ。詩人の作品の盗用でない。誰もが忘れていた詩人の言葉を紹介し、再創造を加えて、興味を持たせたんだと。彼が2001年に発表したアルバムでも、日本人作家佐賀純一氏の英訳本『Confessions Of A Yakuza』(原題『浅草博徒一代』)を引用した曲がある。そのときも数行の盗用を指摘された。だが佐賀氏はディランの引用に「非常に光栄である」と感謝した。
ここには創作者同士の作品を通じた敬意がある。それを“オマージュ”という。尊敬する作家や作品に影響を受けて創作すること。創作者同士だけじゃない。企業とでも敬意は成立する。
ポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホルの“キャンベルスープ”。彼は頼まれてこの作品を描いたわけじゃない。ただ毎日飲んでいたから。今、作品『32 Campbell's Soup Cans』の50周年を記念して、米国キャンベルスープが限定缶を販売中。「ウチのスープ缶をよくぞアートにしてくれた」というオマージュの交換とも言える。
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