海外プリペイドSIM導入マニュアル――「ブルネイ2014年」編:プリペイドSIMが意外とお高い(2/2 ページ)
東洋一のお金持ち国家であるブルネイ。裕福な国だけに通信費も安いと思いきや、プリペイドSIMの価格はアジアでも抜きん出て高かった。なかなか訪問する機会のないブルネイの首都、バンダルスリブワガンで2社のプリペイドSIMを買って使い比べてみた。
3Gデータ定額で安心して使えるPCSB
DSTのプリペイドSIMは高速なLTE通信が可能だが、PCSBにはDSTにはない魅力がある。それはデータ定額だ。PCSBは音声SIM(データ対応)の「Yes! Prepaid」とデータ専用(定額)「Yes!Zoom」の2つのプリペイドSIMがある。Prepaidはデータ料金が従量制で高いので、スマートフォンやルーターでの利用はZoomにするべきだろう。
PCSBの店舗にはサービスごとのパンフレットが置かれているが、どれがポストペイドでどれがプリペイドなのかがちょっと分かりにくい。PCSBのWebサイトを見ても、B-Mobileを買収した直後のためか「料金の詳細は店舗へ」という表示が目立ち、2014年7月時点ではデータ定額がいくらなのか不明瞭だった。
B-Mobile買収の余波は店舗にも押し寄せており、旧B-Mobile加入者はSIMの交換が必要なようだ。そのためPCSBの店舗は平日でも朝から大混雑していた。筆者は日曜日の開店30分後に整理券を取ったのだが、自分の番が来るまでに何と2時間も待つ羽目になってしまった。いずれこの混雑は解消されるだろうが、PCSBの店に行くならば開店直前に並び開店と同時に整理券を取った方がよさそうだ。
カウンターでYes!Zoomを買いたいと伝え、あとはDST同様にパスポートを渡し申込書に必要事項を記載していく。プリペイドSIM代金は30ブルネイドルでDSTと同額だが、こちらはSIMに加えて4ブルネイドル分のバウチャーが付属してきた。つまりSIMそのものの代金は26ドルということになる。また、プリペイドSIMそのものの有効期限は1年間とのこと。データ通信設定は以下のとおりだ。
- APN:pcsbwap
- ユーザー名:なし
- パスワード:なし
この付属の4ブルネイドルのバウチャーで1日データ通信が定額で利用できる。1日以上利用したい場合はほかのバウチャーを購入すればよい。データ通信用のバウチャーは専用タイプとのこと。バウチャーは街中の売店でも買えるが、「Yes!Zoom用」を買うようにと指示された。バウチャーの金額と有効日数は以下の通り。
- 4ブルネイドル(約330円)……1日定額
- 8ブルネイドル(約650円)……3日定額
- 20ブルネイドル(約1630円)……9日定額
- 35ブルネイドル(約2860円)……18日定額
PCSBのプリペイドSIMは自分で開通作業を行う必要がある。購入時のSIMには金額が入っていないため、付属のバウチャーの料金を追加して使い始める必要がある。長期滞在する場合はSIM購入時にいくつかバウチャーを買っておき、そちらを最初に登録するのもいいだろう。登録の方法などは以下の通り。
プリペイドSIMの開通方法
- SIMを入れアンテナが立ったら「179」に発信
- アナウンスに従い「1」を押す(英語選択)
バウチャー登録
- 「*178# (12桁バウチャー番号) #」に発信
- 何日まで有効か通知される
両者のプリペイドSIMを買ってみたが、これだけで60ブルネイドル、約5000円にもなってしまった。しかも筆者はDSTで買い直したため、90ブルネイドル、約7300円だ。ということで短期滞在ならば片方だけを購入すればよいだろう。DSTはショッピングモールの中や繁華街を抜けた住宅地のあたりでLTEから3Gに落ちることがあったものの、高速な速度はストレスを感じさせなかった。一方のPCSBは3Gオンリーながらも、繁華街を含め電波が切れることはほとんどなかった。速度重視ならDST、データ量を気にせず定額利用したい場合はPCSBという形で、用途に応じてどちらを買うかを決めればよさそうだ。
山根康宏 :香港在住の携帯電話研究家。一企業の香港駐在員時代に海外携帯電話に興味を持ち、2003年に独立。アジアを中心とした海外の携帯電話市場の状況や海外から見た日本の携帯電話市場についてなど、海外の視点からコラムや記事を日本のメディアに執筆するほか、コンサルティング活動も行う。携帯/SIMカードコレクターとしても知られ、所有する海外端末数は1100台以上(2013年5月時点)。
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