一般ユーザーに訴求すべきタイミングが来た――FREETELが大攻勢をかける狙い:MVNOに聞く(1/3 ページ)
FREETELが、「FREETEL 2.0」と銘打ってより広い層をターゲットにし始めた。5月と6月に1回ずつ発表会を開催し、新スマホ「REI」や新料金プラン、割引キャンペーンなどを発表した。FREETELがここまでの大攻勢を仕掛ける狙いとは? プラスワンの増田薫社長に聞いた。
SIMロックフリースマートフォンのメーカーとして、2012年に創業したプラスワン・マーケティング。FREETELブランドの端末は4年間で徐々に増えていき、クオリティーも以前とは別物といえるほど高くなった。当初から計画していたというMVNO事業も立ち上げ、ヨドバシカメラなどとタッグを組んだことが功を奏し、回線数も急増している。
そのFREETELが、「FREETEL 2.0」と銘打ってより広い層をターゲットに定め、飛躍しようとしている。5月17日には発表会を開催し、同社の主力シリーズとなるSAMURAIの新商品「REI(麗)」に加え、容量別のデータ定額プランや、端末と回線をセットで購入できる「プレミアムバリュープラン」を発表している。さらに、より広い層に向けた取り組みとして、テレビCMを放映。女優の佐々木希さんを起用し、“マス”に向けて大々的にアピールを始めた。
6月27日には、REI(麗)の新色メタルレッドや「FREETEL SIM」の月額299円引きキャンペーン、Web直販限定で端末の「30日間返品保証キャンペーン」を発表するなど、攻勢の手をゆるめない。
大手3キャリアに続く、「第4のキャリア」の座をかけた争いが激化する中、FREETELは、どのような成長の青写真を描いているのか。プラスワン・マーケティングの増田薫社長に、その戦略を聞いた。
マスに打って出て一般ユーザーの選択肢に入るように
――(聞き手、石野純也) 先日(5月17日)の発表会では「FREETEL 2.0」を標ぼうし、より広い層に訴えかけていくことを宣言されました。以前、マンションの一室で事業をしていたころと比べると、これは大きな変化だと思います。FREETELにはどのような状況の変化があったのか。まずは、そこからお聞かせください。
増田氏 ビジネスのモデルの基本線は、最初の取材(2014年8月掲載)のころから変わっていません。会社としてご提供できる価値は、ハードウェアとSIMカードとアプリ。これを1社でやるからこそ、もともと1万円ぐらいしていたものが、1500円ぐらいからになる。そこは変わっていません。
ハードウェアで言うと、最初は「priori」という低価格のところを出していきました。その後「nico」を出し、徐々にプライスポイントも変えていきました。ハードウェアはやはりマーケットを作る。ソフトバンクさんもiPhoneを出したからこそ、今のマーケットを作れていますからね。うちも、フルラインアップ戦略は、どんどん進めていきました。
当初は4人だった社員も、今は200人ぐらいになりました。営業は相変わらず5人程度で、半分以上がエンジニアです。実際に、自社で製品を企画、開発して部材まで選ぶ。この作り方を、JDM(ジョイント・ディベロッピング・マニュファクチャリング)と呼んでいますが、われわれが部品を開発、選定して、(中国にある)工場はアセンブリー(組み立て)に使うだけ。そのアセンブリーにも、うちが入り込み、独自の基準を持っています。
その結果として、だいぶいいものが作れるようになってきました。REI(麗)は、フルメタルでしかも5色。ソフトウェアエンジニアも整ってきたので、「FREETELカメラ」や「FREETEL UI」など、独自色を出せるようになってきました。ヨドバシさんでも、(SIMロックフリースマホの販売で)12カ月連続1位でした。ハードウェアの認知が広がり、より多くの方に「FREETEはいい」と思っていただける環境になってきました。
SIMカードは2015年の4月からですが、最新の機材や仕組みを入れられるようになりました。それもあり、「爆速」をうたっています。僕は、吉牛(吉野家)はマズかったら存在しないと思うんですよね。昔は確かに安いが、どうしようもなくマズイものがあった。よく100円の焼きそばとかがありましたが、あれは本当にマズかった(笑)。SIMにおいては、それがスピードだったり、各種サービス(のデータ通信料)が無料になったりというものだと思います。こういうことがやれるようになったので、SIMも販売シェアが1位になってきました。
そこで、ふと思ったんです。タイミングが来た、と。MVNOはもともと米国や欧州でもずいぶん前からあり、25%ぐらいのシェアを取っていて、国によっては50%に近いところまであります。日本は先進国の中ではMVNO後進国でした。他の国がたどったのと同じ流れで、最初はアーリーアダプターが買っていました。これが、マスに行かないと、25%のようなシェアにいきません。そのため、もともとマスに打って出ようとは思っていました。一般の方々の選択肢にしっかり入るようにしたかったんですね。それもあり、お店の展開もしっかり整えてきました。ヨドバシさんやビックさんでは、今までケータイを買っていたところで、同じように買えます。即時開通コーナーも整ってきました。
他のMVNOがマツコ・デラックスさんを使ったり、サッカーの本田選手を使ったりしてCMをやっていましたが、うちは一切やっていませんでした。それでも、ここまで売れるのは、一般の人のニーズにあったものをご提供できるようになったからではないか。そう考え、佐々木希さんを起用し、CMを展開することにしました。
REI(麗)はMIYABI(雅)よりも売れている
―― 状況が変化したというより、FREETELが着実に力を着けてきて、大々的に展開するタイミングになったということですね。そこに合わせて発売したREI(麗)ですが、売れ行きはいかがですか。
増田氏 おかげさまで好調です。まだ全色出そろっていませんが、価格.comの評価も悪くない。実売も「MIYABI(雅)」を超えてきていて、うちの中では人気ナンバー1になっています。
―― 他メーカーの比較対象に、FREETELが挙げられることも増えてきました(※Huaweiが6月9日の発表会で「HUAWEI P9 lite」の紹介時にREI(麗)と比較をしていた)。
増田氏 うちからすると、光栄な話です。方や世界3位のメーカーですが、日本のSIMフリーのマーケットでは、販売台数が半分以下というのは、彼らからすると悔しいのかもしれません。ただ、戦いますよ。ここは日本ですから。
私はもともとソースネクストやレノボにいて、デルでは携帯事業の責任者もやっていましたが、外資はどうしても、モノ作りというよりExcelの管理になってしまいます。売上と粗利を書くだけ。でも、モノ作りは、好きな人が家に来たときに出すご飯に似ていると思うんですよね。そこで、レンジでチンしただけのご飯を出せますか? 食材を選んで出す、ときには改善もする。これがモノ作りの基本だと思っています。
その中で、REI(麗)といういい製品を出せたことは、本当によかったですね。
―― 確かに、REI(麗)は以前のSAMURAIシリーズと比べても、質感が上がったように感じます。
増田氏 エンジニアが増えてきて、よりいいモノ作りができるようになったことが大きいですね。MIYABI(雅)のときはまだ20〜30人でしたが、今は100人でやはりそこは全然違う。中国に限らず、パーツメーカーさんにも、うちのビジネスモデルに興味を持っていただけるようになりました。結果として、よりいいものを、よりコストを下げた形で調達できるようになりました。
自社で部材を選定し、製造、管理しているからこそ、コストを抑えられる。そういう体制を組むことができました。
また、FREETEL UIにも改善が必要なことが分かり、発売から2〜3週間でFOTA(ファームウェア・オン・ジ・エアー、アップデートのこと)ができました。ソフトでいえば、カメラのエンジニアも増えています。
―― 実機を触ってみて思ったのですが、カメラの画質に関してはもう一段、上げることはできないのでしょうか。
増田氏 これは、すぐに変えていきます。色味には悩みもありましたし、UIの文言も悪かったと思う部分があります。社内にある最新バージョンでは、縦から横に切り替えたときの固まりもほとんどありません。画質面まで、(エンジニアが)いじれるようにもなっています。
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