iDやdカードを抱えるドコモがなぜ「d払い」を提供するのか?:モバイル決済の裏側を聞く(3/3 ページ)
日本にも「アプリ決済」の波が到来しつつある中で、ドコモが動いた。同社は2018年4月にQRコードやバーコードで支払う「d払い」を開始する。ドコモは既にさまざまな決済サービスを展開しているが、d払いを提供する狙いはどこにあるのか?
dポイントが経済圏を拡大する
ここまでの説明にあるように、ドコモはd払いを単体の事業ではなく、dカードやキャリア決済、dマーケットなどの周辺サービスも合わせた経済圏で生かせると考えている。
ビジネスとしては2つの側面があり、1つが「dカード単体」の事業収益、もう1つが「dポイントを含むドコモ経済圏の拡大」だ。ドコモではdカードのビジネスにおける比重が年々高まっており、売り上げと加入者の両方が伸び続けている。dカードで決済した際に付与される1%のポイントの他、ローソンとのキャンペーンで提供された5%ポイント還元なども含め、顧客基盤を拡大するツールとして活用を続けている。また、d払いそのものもドコモの回線契約なしでdカードのみで利用できる仕組みであり、回線契約を超えた経済圏を作り続けている。
一方で、クレジットカードで支払いたくないという人が少なからずいる。場合によっては、それだけの理由でオートチャージの仕組みを利用しないという人もいるようで、これは若年層に限らず、広い世代で存在するようだ。こうした層には、キャリア決済の仕組みを通じて、最大10万円の決済枠を提供し、利用金額でポイント還元していく。
2017年には1000億ポイントが贈呈されており、この仕組みを通じてユーザーの取り込みを進めていく。ドコモは「dサービス」が「キャリアフリー」であることを前面に推し出しており、経済圏の拡大の他、あわよくば回線契約へと結び付けるもくろみがある。実際、このような形でユーザーを取り込めるのであれば、iDであれd払いであれ、特にこだわりはないというスタンスだ。
インバウンドへの対応も視野に
もっとも、iDとd払いともに日本のユーザーを対象としており、国外のユーザーにはサービスをすぐに利用する手段がない。Apple Payも海外発行のカードではiDが利用できないため、実質的に日本ではSuicaを利用するしかない。これはAlipayやWeChat Payが使えない日本人が中国を訪問したときと同じ状態であり、昨今話題のアプリ決済(QRコード決済)が特定国のユーザー向けのサービスで閉じていることを象徴する仕組みといえる。
前田氏はインバウンド対応についても「回線契約を必須としない以上、仕組みとしては可能で、将来的に考えている」と明かす。
「インバウンドで来られる方々にサービスを使ってもらうメリットを提示して活用してもらうことが必要で、日本への訪問前にどれだけのコミュニケーションが取れるか重要だと考えている。これは主に日本からの旅行者向けだが、グァムでdポイントの利用を可能にしていたりする。また日本を訪問する人々には、“タビナカ”に見ていただく情報メディアとして「WOW! JAPAN」を提供しており、こういった仕組みを通じてサービスを使ってもらうきっかけを作りたい」(前田氏)
キャリア決済というのは、携帯キャリアが持つ他の事業者にはない強みの1つであり、ドコモをはじめとする各社もこれを軸にさまざまなビジネスを組み立ててきた。だが、Apple PayやGoogle Payに代表されるプラットフォーマーらが提供するサービスの他、先日の楽天ペイやLINE Payのようにインターネットのサービス事業者がその領域を少しずつ浸食しつつあり、携帯キャリア各社らはその強みをどのように生かせるかで腐心している。
ドコモは「回線契約を超えた経済圏の拡大」「さまざまな決済手段の提供による広いユーザー層の取り込み」に活路を見いだしているが、KDDIやソフトバンク、そして第4の携帯キャリアを掲げる「楽天」も含め、2020年に向けて各社各様の「キャッシュレス」への取り組みが進んでいくことになる。
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