News 2001年12月25日 11:59 PM 更新

高画質競争の果てにたどり着いたのは――2001年デジカメ市場回顧

高画素競争から派生した有効画素表示の動き,そしてレンズへのコダワリなどデジカメ基本性能の話題から,幅広いユーザーにアピールした付加機能デジカメ,はたまた使い切りのデジカメまで登場するなど,デジカメ市場は今年もさまざまなニュースを振りまいてくれた。

 2001年は,デジタルカメラが広くユーザーに普及した1年となった。

 日本写真機工業会の調べによると,今年1〜10月末までの国内デジカメ出荷台数は,昨年同期比180.4%となる375万7303台。このペースでいけば年間400万台の大台を超えるのはほぼ間違いない。

 昨年から依然として続いていた高画素競争は,今年4月にとうとう普及機で600万画素にまで到達した。ただし,これは富士写真フィルムお得意のスーパーCCDハニカムの画素補間技術で可能にするもので,実際の画素数(有効画素数)は約330万画素となっている。また,9月には,同じく画像補間技術で800万画素相当の高解像度を可能にした三洋電機の「DSC-AZ1」も発表された。


800万画素“相当”を可能にした三洋電機「DSC-AZ1」

 このような総画素数と有効画素数の違いには,他のデジカメメーカーがクレームを付けるなど,“画素数表記に関する問題”も今年浮上した。この問題は最終的に,日本写真機工業会が「デジカメ画素数は“有効画素数”を最優先するように」とガイドラインを策定。これが9月1日より実施され,以後,高画素競争も一段落ついた感がある。

 300万〜400万画素が当たり前になってくると,画素数よりもレンズの性能が製品の良し悪しを決めるポイントになってくる。ソニーが“Carl Zeiss”ブランドのレンズを前面に押し出してアピールしたり,オリンパスやニコン,キヤノンといった銀塩カメラ出身メーカーの製品が市場で評価が高くなったりしたのも,そのせいだ。

 このような市場ニーズを受けて,デジカメ市場に再参入してきたのが松下電器産業だ。多くのカメラファンを魅了してやまない有名ブランド“Leica”のレンズを搭載した2製品を今秋市場に投入。デジカメ分野で,シェア10%を目指している。

 また,MP3プレーヤーとして音楽が聴けたり,携帯電話に画像が送信できたり,動画機能を強化したものなど,付加機能をアピールする商品も多く登場した。特にデジタルオーディオプレーヤー機能を搭載したモデルは,同分野で先行する富士写真フィルムをはじめ,リコーコダックなどから新製品が登場。携帯オーディオプレーヤーで音楽を肌身離さず持ち歩く若い世代に,デジカメを大きくアピールした。


デジタルオーディオプレーヤー機能を搭載したFinepix30i

 これら付加機能搭載デジカメの多くは,初心者向けに簡単操作を実現するために,クレードル方式を採用しているのが特徴だ。携帯電話の充電器感覚で,クレードルにデジカメを置くだけでPCへ簡単に画像データを転送できるほか,一部機種では本体の充電も行える。デジカメを活用するためには,PCとの連携は避けて通れない。クレードル方式は,デジカメが“誰でも使える電子機器”になるための1つの答といえる。


PCへの画像転送や充電も行えるクレードルを採用したリコーのCaplio RR10

 また,カシオの「GV-10」やコニカの「現場監督」のように,防水/防塵/耐衝撃性に強いボディを持つタフネス仕様をアピールするモデルも登場した。

 変り種としては,夜間撮影機能を搭載したソニーのF707がある。暗闇でもピントが合うホログラフィックAFや赤外線照射によるナイトショットなど,デジカメならではのエレクトロニクスを駆使した機能で,従来デジカメが苦手としてきた暗所撮影を得意分野にしてしまった。


従来デジカメが苦手としてきた暗所撮影を得意分野にしてしまったソニーのF707

 このようにデジカメのバリエーションが豊富になるにつれ,ユーザーのすそ野も広がっていった。

 デジカメの認知度アップには,TOYカメラと呼ばれる数千円〜1万円程度の低価格デジカメの台頭も大きく影響している。さらに今年は,デジカメ版“写ルンです”というべきリユース型デジカメ「撮ってもEG」がテスト販売された。


使い切りデジカメも2001年話題となった

 この使い切りデジカメに対しては,ZDNet読者からも反響が大きく,(購入編)(性能比較編)(プリント編)と3回シリーズで記事をお届けした。ハードの性能向上やコストダウンなど,課題もまだまだ多いが,デジカメの新しい方向性として今後の動向に注目したい。

[西坂真人, ITmedia]

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