News 2003年3月18日 11:35 AM 更新

ソニーが今、DVDデュアルレコーダを投入する理由(3/3)


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 「RAMは、CD-RやRWを使ってきた人から見れば、おそらくちょっと信じられないフォーマットなんです。なぜかといえば互換性がない。今、DVDプレーヤーは、年間1億台ぐらい出ています。それにかからないディスクというのを、われわれはやっぱり作るべきでないと思っています。お客さんのベネフィットを考えると、“バックワード コンパチブル”、これが“マスト”でしょう」(村井氏)。

 しかし、困ったのは、村井氏のいうバックワードコンパチを保証した記録型DVDが、DVD-R/RWとDVD+R/RWの2つの分かれてしまったことだ。

 「残念ながら、バックワードコンパチを保障している規格が、プラスとマイナスに分かれちゃった。これがまた、お客さんの頭痛の種になっている。でも、この2つの規格のどこがどう違うのか説明したところで、お客さんの得にはならない。であれば、いっそのこと、そのバックワードコンパチを持っているフォーマットを、ソニーは全部サポートしようと考えた」(村井氏)。

 「お客さんをできるだけ混乱させないで、安心感を持って買ってもらう。デュアルRWはそのための一番いいチョイスだとわれわれは思っています。ですから積極的に推進していきます」(村井氏)。

コピーワンスの番組を録画するときの問題

 ただデュアルRWは、複数のフォーマットを使えるようにしたため、逆に使用するディスクによって「できること」と「できないこと」が出てきてしまう。これがかえってユーザーを混乱させるのでは――という考え方もある(関連記事)。

 そのいい例が、コピーワンスの番組を録画するときの問題だ。また、DVD-Video Recording Format(DVD-VRF)とDVD+RW Video Recording Format(DVD+VRF)の2つのビデオレコーディングフォーマットをどうサポートするのかという問題もある。

 まず、前者についてだが、DVD+RWは、現在のところDVD-R/RW/RAMでサポートされているCPRMなどのコンテンツプロテクション技術をサポートしてない。このため、デュアルRWレコーダでは、DVD-RWを使用すれば、DVD-VRFを使用してコピーワンスの番組を録画できるが、DVD+RWには録画できないということになる。

 下手をすると、録画予約を入れておいても、挿入したディスクが間違っていたため録画できなかった、ということが起こりえるわけだ。

 この点について、村井氏は次のように話す。

 「確かに、混乱のもとでしょう。理想を言えば同じにしたいとは思うのですが、やっぱり、元々が違うフォーマットですから、ある程度は(そういった問題が)起こってしまいます。しかし、それはデュアルRWであるためというよりも、+RWとして何とかしないといけないという話でしょう。仮に、+RWのみの-RWを抜かした単機能な製品を商品化しても同じクレームが来ると思うんです。こういった問題は、時間が解決してくれる思います」。

 ちなみにこのDVD+RWのコンテンツプロテクション技術に関する問題は、DVD+RWレコーダ発売時から言われていたもの。現在もなお調整中で、村井氏によると、その調整にはしばらく時間がかかりそうだという。

 「コピーライトプロテクションの問題は、やはり難しいです。ソニーとフィリップスだけで決められるものではありません。いろんな権利者と話をしたり、CPRMをやるなら、CPRMのパテントのライセンサーと話をしたりしなければいけません。お客様のためには、できるだけ早く入れたいとは思ってはいるのですが……」(村井氏)。

 ただ、同社では、「売るときには、その部分は、カタログや取扱説明書を含めて明確にします。ソニーとして隠すつもりはさらさらありませんし、いたずらにそれを隠して、後で混乱をきたすこともしたくありません」という。

 「これが小さい問題とは言いません。しかし、それを含めても、1つのハードで+RWと-RWの両方をきちんとサポートすることが、間違いなくお客様のベネフィットにつながると思っています」(村井氏)。

ビデオレコーディングフォーマットの違いは?

 もう1つの問題であるビデオレコーディングフォーマットの違いについてだが、村井氏によると、PCのようにDVD-RWにDVD+VRFで録画したり、その逆をしたりといった柔軟性があるわけではないという。

 「-RWディスクを入れるとDVD-VRFになって、+RWディスクを入れるとDVD+VRFになります。そういう点では、きわめて単純です。つまり、マイナスの場合は、ビデオモードとDVD-VRFが選択でき、+RWは、DVD+VRFです」(村井氏)。

 加えて、DVD-VRFとDVD+VRFは、両者ともに録画した番組の編集を行えるが、それについても同様。「編集機能もVRでは当然違いますね。だから、DVD-VRFとDVD+VRFでは微妙に違います。編集メニューも違います」(村井氏)。

 ここでも使用するディスクによって、「できること」と「できないこと」が生じる。だが、村井氏はそれほど心配していないという。

 「-RWと+RWを交互に使われるお客さんは、ほとんどいないと思うんです。最初の1カ月ぐらいは、どっちがいいかなとか交互に使うことはあるかもしれませんが。しかし、普通は、一度選んだら、大体それを使うでしょう」(村井氏)。

デュアルRWレコーダの“次”の展開

 デュアルRWレコーダの発売時期は“未定”という村井氏だが、米国同様にまず、HDDを内蔵しない製品から発売が開始されるという。しかし、次の展開を当然、同社は考えている。その一端を村井氏は、明かしてくれた。

 「HDD付きは、目下、仕込んでいる最中です。そういう意味では“開発中”ですね。ただ、この春にはちょっと(間に合わない)ですが……。コクーンにはコクーンとしての動きもあるんですが、それももうちょっと待っていただければと思います。最初はまずHDDが内蔵されていないレコーダ単体でやりますが、HDD付きも当然視野に入っています。大きくなってきたマーケットを、そのまま指を加えて見ているはずがありません。カチッとやっていきたいなと考えています」(村井氏)。



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[北川達也, ITmedia]

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