RFIDタグ実用化に向け大阪・なんばパークスで実証実験
RFIDタグの実用化が徐々に見え始めてきた。NPOブロードバンドアジア、インターネット総合研究所(IRI)、中央メディアネットは、大阪のなんばパークスにおける「歩行者ネット天国」の実験を報道陣向けに公開した。
なんばパークスは、大阪市南部に位置し、もとは大阪球場があった場所を再開発した地区。レストラン、雑貨や家具などの店舗のほか、オフィスも構える複合ビルだ。さらに、“自然”も1つのテーマになっており、低層階には庭園「パークスガーデン」が広がっている。こんななんばパークスだが、南海電鉄なんば駅に直結していることもあり2003年10月の開業以来多くの人が訪れる大阪の新しいスポットになっている。
このなんばパークスに訪れる人をITを用いてサポートする実証実験として「歩行者ネット天国」が実施されている。ここでは、RFIDタグリーダと無線LANモジュールが内蔵されたPDAを利用し、さまざまな場所に設置されているRFIDタグを読み込むことでさまざまなサービスが提供されている。さらに、無線LANからのアクセスポイントからの強度を測定することで位置情報の取得も可能だ。なお、このPDAはなんばパークス内に設置された無線LANのアクセスポイントを経由してIPv6でインターネットに接続されている。
具体的にはここでは、ユーザに近くにあるお店の情報を送信する「ショップインフォメーション」、ユーザの現在位置を表示する「フロアナビゲーション」、商品の詳細がPDAで確認できる「商品案内」、手ぶらで買い物ができる「カゴなしショッピング」、PDAを用いたIP電話などのサービスが提供されている。
まず、この実験で基礎になるPDAを用いたRFIDタグの読み込みだが、商品案内のサービスで実際に使ってみたところ、意外に簡単な印象を受けた。商品案内のサービスでは商品のPOPにRFIDタグが付与されているのだが、近づけだけで一瞬でIDを読み取り詳細情報を表示してくれるのだ。モバイル機器で外部の情報を読み込む方法としては、携帯電話とQRコードを用いた技術が普及しているが、これとは比べ物にならないほどの早さと簡単さだ。
ほか、パークスガーデンの花や樹木の看板にもRFIDタグが付与されており、商品案内と同じように詳細情報を確認できる。
この商品案内を応用した実験として、「カゴなしショッピング」が提供されている。これは、商品の詳細画面にある「カゴに入れる」をクリックすると、通常のショッピングサイトと同じように仮想の買い物かごに入れることができるもの。このPDAをレジに持って行って精算しるのだが、購入した商品をその場で持ち帰ることも宅配便で送ってもらうこともできるのだ。商品を持ち帰る場合はPDAが仮想のショッピングカートになり、宅配便で送ってもらう場合はPOPのRFIDタグが通販サイトへの誘導になっているといった感じだろうか。
このカゴなしショッピングの企画から開発まで手がけたIRIユビキタス研究所の井上博之氏によると「近い将来における買い物の1つの形態を実現させてみた」とのこと。現実味がある方法としては、携帯電話にRFIDタグリーダが搭載され今回のようなサービスが提供される可能性が考えられるだろう。
実験の公開前におこなわれた記者発表では、実験を主催した団体の1つであるIRIの代表取締役所長の藤原洋氏が「物のIDはRFIDタグで認識し、それを読み取る機器がIPv6で通信すると、すべての物がネットワーク上で識別できるようになる」とした。これまでは、個々の“物”が直接IPv6で通信するという方法が考えられていた。しかし、どうやら今回のようにそれぞれの物はRFIDタグを貼り付けるだけで、それを読み取る機器にIPv6を割り当てて通信させるのが現実的な方法だろう。
また流通段階では商品の1つずつにRFIDタグを付与する実験もあるが、まだRFIDタグのコストは1つたり数百円もかかってしまうため今のところ現実的ではない。しかし、カゴなしショッピングのように商品のPOPに付与する方法だとRFIDタグの数が少なくて済むため、現実味はあるだろう。
2003年の後半になってから、さまざまな産業でRFIDタグの実験が実施されている。今回の歩行者ネット天国もその1つだが、RFIDタグは急速に実用化に向かっているようだ。
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