HTMLに新しい風が吹く?
Webを構成している技術に関して言えば、1つ確かなことがある。それは、「HTMLは明らかに過去の存在」ということだ。HTMLはWebの基盤を構築する上で大きな役割を果たしてくれたが、今やWebの未来を担っているのは、XML、XHTML、そして幾つものスクリプティング言語だ。HTMLよ、さようなら!
ちょっと待って、何だって? World Wide Web Consortium(W3C)が次世代HTML標準の策定に向けて新しいHTML作業部会を設定しただって? よし、それなら、今わたしが言ったことは全部撤回だ。
Web標準やW3Cの動きを追っている人であれば、おそらく、このニュースにはわたしと同じくらい驚いているだろう。HTMLは既に過去のものであり、この標準についてはもはや新しい作業は行われないだろうというのが、しばらく前からの共通の認識だった。そして、Web開発の標準はすべてXHTML(Extensible HTML)に移行していくものと思われていた。だが今、W3CはHTMLの新版のリリースを計画しているだけでなく、そのために全く新しい作業部会を設置するとまで語っている。
このニュースの正式な情報源を調べても、あまり疑問は解消されない。W3CのWebサイトに掲載されているプレスリリースでも、ある程度の情報は提供されているが、あまり詳しい内容ではない。
面白いことに、この動きについては、Webの生みの親でW3Cの責任者でもあるティム・バーナーズ-リー氏が2006年10月に自身のブログに記したコメントが最も詳しい情報源の1つとなっている。「HTMLを改革する」と題されたこのコメントでは、HTMLを再活性化させる理由が詳しく解説されているほか、新しい標準がXHTMLやそのほかの最新Web技術とどのように連携することになるかや、今後の計画についても解説されている。
わたしが新HTML作業部会のニュースを最初に目にしたときの反応は、正直なところ、「おやおや、これでWeb標準をめぐる状況はさらに混乱することになるぞ」というものだった。だが、このティムのブログを読んで、そうした懸念はほとんど解消された。
今ならわたしにも、HTMLの開発作業を再開するという判断がなぜ下されたのかがはっきり分かる。この標準は長年の間、風変わりな立場に追いやられていた。HTMLは決して消えることはないだろう。今でも、非常に多くのサイトが純粋なHTMLに依存している。そして、皆が実にさまざまな方法で使用している。より高度なコードの周囲のシンプルなラッパーとして使っている人もいれば、同言語の能力を限界まで活用している人もいるといった具合だ。
だが、これは標準や、その標準に依存している技術にとっては、好ましくない状況だ。標準自体が停滞しているにもかかわらず、依然として多用されているような場合、開発者やソフトウェアベンダーは、その標準を最新の技術や要件に対応させるための方法を勝手気ままに作り始めるようになる。そうなれば、プロプライエタリなコーディングが増え、ひいてはそれが分裂につながり、最後には、ブラウザやシステムの種類ごとに異なった動作をするサイトへとつながってしまう。
わたしは、新しいHTML作業部会で計画されていると見られる方向性については、ほぼ賛成だ。ティムのブログやそのほかの資料では「インクリメンタル」というキーワードが繰り返し使われているが、既にある多くの要素を生かしながら、HTMLを少しずつ改良していくという方針は名案だと思う。
また、XHTML標準やWebFormsやXFormsなどの取り組みとHTML新版を密接に連携させるという新HTML作業部会の方針についても賛成だ。こうした方針により、願わくば、各標準が時々思い出したように改良されるのではなく、どれもが並行して改良されていくようであれば理想的だ。
W3Cの作業部会のペースからして、おそらく、新しいHTML標準の作業草案が完成するには1年くらいかかるだろう(この新標準がHTML 5.0と呼ばれるのか、あるいはもっと別の名で呼ばれるのかは、現時点では定かではない)。そして、作業部会の設立趣意書に基づけば、標準の最終版のリリースまでには3年ほどかかる見通しだ。
だがWebアプリケーションを開発したり、Web開発用の製品を開発している向きは、新しいHTML作業部会の動きを注意深く見守る必要があるだろう。これまでの標準のケースからして、複数の陣営がそれぞれ、すべての関係者にとって必ずしもベストとは言えない方向に、その標準を引っ張りこもうとするだろう。関係する陣営はいずれも、そうした類の動きを警戒する必要がある。
それでも、わたしはHTMLを再び活性化させようという今回の動きを高く評価している。基盤が停滞していたのでは、快活で健全なWebの実現など望めないのだから。
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