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2017年08月07日 10時00分 UPDATE

SoftBank World 2017:AIに“期待しすぎた”ソフトバンク 身をもって実感した、AIの企業導入を成功させるコツは

[PR/ITmedia]
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 「これは絶対に受け入れられるぞ」──ソフトバンクが社内向けAI(人工知能)「SoftBank Brain」を導入する直前、担当者は成功を確信していた。

 SoftBank Brainは、自然言語で話しかけると結果を回答できる、「IBM Watson日本語版」を活用した対話型営業支援・接客支援システムだ。

IBM Watson日本語版:米IBMが開発したコグニティブ・コンピューティング・システムを日本アイ・ビー・エムとソフトバンクが共同展開するもの。AI(人工知能)と呼ばれることもある。


 スマートデバイス向けのアプリとして、2016年7月から実業務に導入をスタート。社員から2万2000以上にものぼる意見を集めて仕様を決めたほか、社内データベースにある取引先の企業情報、営業ノウハウといったビッグデータを体系的な情報として扱えるようにカスタマイズ。細やかなチューニングを重ね、膨大な情報の中から関連するもの同士を結び付けた。

photo アプリとして社内で展開する対話型営業支援・接客支援システムの「SoftBank Brain」

 これを活用すれば、これまで平均40分もの時間がかかっていた営業活動の準備や社内手続きを簡略化し、大きな効率化が図れると考えたという。

photo 立田雅人氏(法人事業戦略本部 戦略事業統括部 エヴァンジェリスト)

 ところが導入から3カ月、ほとんどの社員がアプリを使わなくなっていた

 導入に携わった立田雅人氏(法人事業戦略本部 戦略事業統括部 エヴァンジェリスト)は、大きなショックを覚えたという。

 当時を振り返りながら、SoftBank Brainに「過度な期待を持ちすぎていた」と言うが、その過程を経て「AIに何ができるかではなく、まずは営業担当社員が何に困っているかを把握することが大事だった」とも話す。その結果は──。

AIやロボットが中心となった「SoftBank World 2017」

 7月20日に開催された、ソフトバンクグループによる年次イベント「SoftBank World 2017」では、AIやIoT(Internet of Things)、ロボットなどを主題とした講演が多数行われた。

 将来の核となる新技術や導入事例が数多く披露されることから、将来のビジネスの一端を知ろうと多くの来訪者が会場を訪れた。基調講演でもAIやロボティクスがテーマとして取り上げられており、AI時代の本格到来を期待させるイベントとなった。

 今回は、イベント中の「AI導入の理想と現実 〜やってみないと解らないこと〜」と題された講演をレポート。ソフトバンク自身がいち早くAIを社内に導入した身だからこそ分かる、AIの“理想と現実”をお届けする。

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米国は半数近い企業がAI導入を検討 一方、国内は

 至る所で耳にするようになったAIの存在。しかし、国内の現状は囲碁やロボットなど限られた分野にしか利用されておらず、いずれも「生活に密着したもの」という共通点があるという。つまり、ビジネス現場への導入が進んでいないのだ。

 日本におけるビジネスのAI導入率は、現時点で全体の1.8%ほど。一方、欧州を代表する経済国のドイツは4.9%、さらに米国は13.3%もの企業がAIを導入しており、実際にAIを導入していないが検討している企業は32.9%にものぼる。導入している企業と合わせれば、その数はおよそ半数だ。それらと比較して、日本は普及率で遅れている現実がある。

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 立田氏は、レイ・カーツワイル氏(発明家)の提唱する、人工知能が人間の能力を超えるポイント「シンギュラリティ」(技術的特異点)という概念を交えながら、「シンギュラリティを迎える前から準備しないと、間に合わなくなる」という考えのもと、ソフトバンクがAIの導入を急いでおり、今ではAIを活用する40以上ものプロジェクトが動いていると説明する。

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 コグニティブ・システムであるIBM Watson日本語版をベースに、独自のカスタマイズを施したSoftbank Brainもその取り組みの1つだ。

 しかし、記事冒頭にある通り導入当初は社内に根付かせることができなかった。SoftBank Brainには「営業向けの提案アドバイザー」「Pepperの利用方法」「企業別担当営業の検索」といった3つのメニューが入っているが、特に提案アドバイザーに関しては、現場の人間が使えるレベルに達していなかったという。

 「現場からの声を集めてはいたが『おそらく営業に役立つはずだ』『営業の問いかけに対して、適切な提案書を提示できたら見栄えもいい』といった考えのもと、『営業が本当に困っていることは何か』を考えていなかった」(立田氏)

 立田氏は、AIの導入に「3+1の壁」があると話す。それは「検討」「構築」「導入」そして「定着」だ。これらはIT事業で、新しい要素を導入する際に生まれる“障壁”を表している。成功に導くには、これらを乗り越える必要があるという。

「3+1の壁」とは

 検討の壁は導入以前の問題を指している。どの課題に対してAIの活用をフォーカスするのか、あるいは解決にAIを利用しなくてもいいのではないか。徹底的に検討することがポイントになるという。

 実際にソフトバンクでも、SoftBank Brainの要件を検討するのに9カ月もの時間をかけた。「AIの得意分野を理解した上で、スコープ(対象領域)を定めることが重要。そうしなければ無駄に時間がかかる」(立田氏)。

 構築の壁は、AIを社内のシステムに組み込む段階で発生する壁だ。営業の現場で生まれる課題や、社員からの意見を十分に調査せず、事業戦略部門が中心となって学習データを作成してしまったところに問題があったと立田氏は語る。

 「営業担当社員が本当に欲しがっていたのはこれまで社内に戻ってから確認する必要のあった情報を、営業先ですぐに引き出し提案できるツールだった」(立田氏)

 導入の壁は、実際にAIを現場に導入するにあたって生まれる不満や課題を指す。SoftBank Brainが、導入から3カ月で利用者が激減してしまったように、立田氏は「無理に導入しても、使わなくなる」と、先陣を切った企業ならではのリアルなアドバイスも飛び出した。

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 「AIは性質上、導入してすぐ100%の力は発揮しない。しかし、継続的に成長していけるのが強み。もしも社内に導入を考えているなら、先に部署で導入し、ある程度の成果を出してから上に報告した方がいい」(立田氏)

ソフトバンクはどのように軌道修正を図ったか

 これらを踏まえた上で、同社はSoftBank Brainに改良を加え「モバイル業務アドバイザー」という形での運用を再スタートした。具体的な機能は次の通りだ。

 例えばソフトバンクの営業社員が法人向けのスマートフォンを営業していたとする。顧客からは、「防水防塵の電話が欲しいので、一覧を作って持ってきて欲しい」との要望を受けた。

 従来は社内に戻ってから、防水防塵の携帯電話を手作業でピックアップし、プラン別に表を作成、再び提案に持ち込む必要があった。

 モバイル業務アドバイザー導入後は、営業社員がSoftBank Brainに向かって上記のリストが欲しいと問いかければ、自動的に指定した条件(新規/機種変更、3年契約など)で、候補端末と価格が掲載した一覧表を提示できる。おかげでスピーディーに顧客へ提案ができるようになったという。

 さらに社内申請を必要とするフローにも威力を発揮。従来はベテラン社員でも19分程度かかっていたデモ機貸し出し申請作業を、2分21秒まで短縮できるようになったという。その後の調査では、営業担当社員からの満足度は90%以上にものぼった。

 「検討段階から現場で必要とされているのは何なのか」「何をAIに置き換えれば業務の効率化が図れるのか」を見極め、机上の空論ではない、“本当に業務に役立つソリューション”に仕上げることが重要だった。

 定着の壁を乗り越えるためには、検討の壁をしっかり越えることが重要だと同社は実感したという。

国内の導入事例も続々と

 導入事例はソフトバンクだけでなく、国内でも広がりを見せつつある。

 デンマークの製薬会社Novo Nordisk A/Sの日本法人であるノボノルディスクファーマは、木村情報技術が展開するWatson日本語版を活用したAI社内問合せシステム「AI-Q」(アイキュー)をベースとしたAI社内問合せシステム「AI Gethelp」を導入。企業内で社員から寄せられる問い合わせに、24時間365日対応できるという。PCなどから利用でき、チャット形式で業務上の質問に答えられる。

photo AI社内問合せシステム「AI Gethelp」

 不動産大手の大京も、社内のITヘルプデスクとしてWatson日本語版をベースにジェナが開発したチャットボットサービス「hitTO」(ヒット)を導入。現在、社員から寄せられる問い合わせの3割をチャットボットで対応しているというが、いずれは顧客から寄せられる問い合わせ対応業務への活用を検討しているという。

photo チャットボットサービス「hitTO」(ヒット)

 AI活用は社内向けにとどまらない。通信販売大手のアスクルでは、個人向け通販サイト「LOHACO」で展開するユーザー向けヘルプチャット「マナミさん」の会話エンジンに、りらいあコミュニケーションズがWatson日本語版をベースに開発した対話システム「バーチャルエージェント」を採用した。

photo 対話システム「バーチャルエージェント」

 アスクルは、以前からヘルプチャットを用意していたが、質問と回答をロジックで地道に結び付ける手法で運用しており、管理に膨大な手間がかかっていたという。自動的に内容を学習していくAI型チャットボットを導入したことで、運用管理が容易になったという。

将来、AIのビジネス活用は確実か

 2012年に行われたSoftBank Worldの基調講演では、孫正義社長(現会長)が「iPhone/iPadによるモバイルインターネット時代のビジネス革新」について話していたのを思い出す。

 スマートデバイスを業務に導入することで、業務の効率化やペーパーレス化が図れるという内容だったが、それから5年が経過した今、完全なるペーパーレスとは言わないまでも、スマートフォンやタブレットはビジネスツールとして確実に欠かせない存在となった。

 立田氏が話すように、AIの導入には特有の障壁が存在するものの、ソフトバンクも含め、業務に取り入れて既に業務効率の改善を図っているケースが複数存在する。

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 5年後、10年後、どれほどの仕事が人の手からAIに渡っているのかは定かではないが、2045年に訪れると予測されるシンギュラリティに向けて、AIのビジネス利用が拡大していくのはほぼ確実と言ってもいいだろう。AIが当たり前になる将来に向けて「検討の壁」でつまずかないように今から備えるのは、決して遅くはないはずだ。

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日々進化する人工知能(AI)は本当に仕事で役立つのか?実践的な話題を紹介


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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2017年8月31日

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