こうしたPC用のOSにおける高画素密度ディスプレイ環境のサポートは、「HiDPI」対応と言われている。OS側の対応に伴い、アプリケーション側の対応も進み、HiDPIを取り巻くPCソフトウェア環境が実用レベルになってきたことも、4Kのような超高画素密度ディスプレイの普及を後押ししているのだ。
Windows OSは、Windows XPの時点で表示密度を変更できる設計だったが、画面のレイアウトが崩れたり、対応するアプリケーションがほとんど存在しなかったため、実用されない機能だった。画面レイアウトが大きく崩れることなく、実用レベルでスケーリング拡大機能が使えるようになったのは、Windows 7からだ。
さらにWindows 8.1以降では、複数のディスプレイを接続した場合、ディスプレイごとに異なる表示密度の設定を適用でき、画素密度の異なるディスプレイを混在させた多画面環境での違和感が低減した(ただし、表示密度の組み合わせを細かくカスタマイズできるわけではなく、設定の段階数は限られている)。
Mac OS Xに関しては、Windows陣営に先駆けて高画素密度ディスプレイ(AppleはRetinaディスプレイと呼ぶ)の普及を推進してきたので、Windowsより早く表示密度が可変のOS設計への最適化が進んでいる。OS X Mavericks 10.9.3以降では外部ディスプレイのHiDPI表示に対応し、他社の高画素密度ディスプレイと組み合わせて使いやすくなった。
PC用OSのHiDPIサポート状況 | ||
---|---|---|
OS | HiDPIサポート | ディスプレイ別の表示密度設定 |
Windows 8.1 Modern UI | ○ | − |
Windows 8.1 デスクトップUI | ○ | ○ |
Windows 8 Modern UI | ○ | − |
Windows 8 デスクトップUI | ○ | − |
Windows 7 デスクトップUI | ○ | − |
Windows Vista デスクトップUI | △ | − |
OS X Yosemite (10.10) | ○ | ○ |
OS X Mavericks (10.9.3以降) | ○ | ○ |
OS X Mavericks (10.9.2以前) | △ (内蔵ディスプレイのみ) | △ |
アプリケーションについても、オフィススイートのMicrosoft Office 2013(Windows)/2011(Mac)や主要なWebブラウザなどが続々とHiDPIに対応しているほか、画像編集ソフトのAdobe Photoshop ElementsもVer.13から対応、Photoshop CCも200%手動設定の暫定対応を行い、高画素密度ディスプレイをフル活用できる下地は整ってきた。
ハードウェアに関しては、もともと最近のGPUは一般的な用途であればオーバースペックとも言えるほどの処理性能を備えているため、それほど高性能なPCでなくとも4Kは表示できるだろう(4Kのゲームや動画を楽しむとなると話は違ってくるが)。参考までに、EIZOの31.5型4KディスプレイであるFlexScan EV3237のGPU対応状況を下表にまとめた。
GPUの4Kディスプレイ「FlexScan EV3237」対応状況 | ||
---|---|---|
メーカー | 製品 | DisplayPort(3840x2160ピクセル/60Hz) |
AMD | Radeon HD 7700以降 | ○ |
Radeon R7以降 | ○ | |
Fire Pro Wシリーズ以降 | ○ | |
NVIDIA | GeForce GTX 650以降 | ○ |
Quadro Kシリーズ以降 | ○ | |
Intel | HD Graphics 4200以降 | ○ |
Apple | Mac Pro(Late 2013、OS X 10.9.3以降、FirePro D300) | ○ |
こうした高画素密度化のトレンドが一般化する流れは、Appleが2010年以降、大々的に「Retinaディスプレイ」をiPhone、iPad、Macといった主力製品に採用したことで一気に加速した。これは「人間の目の網膜(Retina)で識別可能な画素密度に匹敵あるいは超えた高精細表示」をコンセプトにした高画素密度ディスプレイのことだ。
やはり映像デバイスは、その表示を見ることこそが千言万語に勝る説得力をもたらすことが多い。Retinaディスプレイの登場と反響のよさ、それに追従してさまざまなメーカーがスマートフォン、タブレット、そしてPCに高画素密度のディスプレイを投入したことで、高画素密度ディスプレイが一般ユーザーにも広まっている状況だ。
もちろん、飛び抜けて高価では普及しないが、同時に低価格化も進んでいる。これは液晶パネルの製造技術が向上したこと、高画素密度の液晶パネルを採用する製品が大幅に増えたことで生産面でのスケールメリットが出しやすい環境になったこと、高画素密度の液晶パネルを搭載した製品での価格競争が生じたことなど、複合的な理由がある。
このようにHiDPI表示を行うための環境がソフトウェア、ハードウェアとも整ったこと、これを受けてディスプレイメーカーが積極的に4Kディスプレイを投入し始めたことにより、一気に「超高画素密度ディスプレイ」の気運が高まっているというわけだ。
下表に主な高画素密度ディスプレイの仕様をまとめた。スマートフォンやタブレットに比べてPC用ディスプレイの画素密度は低いが、PCの場合は視聴距離が50センチ前後は離れるため、これらに劣らない滑らかで高精細な表示に見える。目安として、PC用外付けディスプレイの場合、画素ピッチが約0.2ミリより狭いと、等倍表示での常用は厳しくなってくるため、スケーリングの設定による拡大表示が求められる
高解像度・高画素密度ディスプレイの例 | ||||
---|---|---|---|---|
PC用外付けディスプレイ | ||||
画面サイズ | 解像度 | アスペクト比 | 画素密度 | 画素ピッチ |
23型ワイド(参考) | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約96ppi | 約0.27ミリ |
23.8型ワイド(UHD 4K) | 3840×2160ピクセル | 16:9 | 約185ppi | 約0.14ミリ |
25型ウルトラワイド | 2560×1080ピクセル | 21:9 | 約111ppi | 約0.23ミリ |
26.5型スクエア | 1920×1920ピクセル | 1:1 | 約102ppi | 約0.25ミリ |
27型ワイド | 2560×1440ピクセル | 16:9 | 約109ppi | 約0.23ミリ |
28型ワイド(UHD 4K) | 3840×2160ピクセル | 16:9 | 約157ppi | 約0.16ミリ |
29型ウルトラワイド | 2560×1080ピクセル | 21:9 | 約96ppi | 約0.26ミリ |
30型ワイド | 2560×1600ピクセル | 16:10 | 約101ppi | 約0.25ミリ |
31.1型ワイド(DCI 4K) | 4096×2160ピクセル | 約17:9 | 約149ppi | 約0.17ミリ |
31.5型ワイド(UHD 4K) | 3840×2160ピクセル | 16:9 | 約140ppi | 約0.18ミリ |
32型ワイド(UHD 4K) | 3840×2160ピクセル | 16:9 | 約138ppi | 約0.18ミリ |
34型ウルトラワイド | 3440×1440ピクセル | 21:9 | 約110ppi | 約0.23ミリ |
40型ワイド(UHD 4K) | 3840×2160ピクセル | 16:9 | 約110ppi | 約0.23ミリ |
PC用内蔵ディスプレイ | ||||
画面サイズ | 解像度 | アスペクト比 | 画素密度 | 画素ピッチ |
11.6型ワイド | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約190ppi | 約0.13ミリ |
13.3型ワイド | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約227ppi | 約0.11ミリ |
12型ワイド | 2160×1440ピクセル | 3:2 | 約216ppi | 約0.12ミリ |
13.3型ワイド | 2560×1440ピクセル | 16:9 | 約221ppi | 約0.12ミリ |
13.3型ワイド | 2560×1600ピクセル | 16:10 | 約227ppi | 約0.11ミリ |
14型ワイド | 3200×1800ピクセル | 16:9 | 約256ppi | 約0.1ミリ |
15.4型ワイド | 2880×1880ピクセル | 16:10 | 約223ppi | 約0.12ミリ |
15.6型ワイド(UHD 4K) | 3840×2160ピクセル | 16:9 | 約282ppi | 約0.09ミリ |
タブレット | ||||
画面サイズ | 解像度 | アスペクト比 | 画素密度 | 画素ピッチ |
7型ワイド | 1920×1200ピクセル | 16:10 | 約323ppi | 約0.079ミリ |
7.9型スクエア | 2048×1536ピクセル | 4:3 | 約324ppi | 約0.078ミリ |
8型ワイド | 1920×1200ピクセル | 16:10 | 約283ppi | 約0.09ミリ |
8.9型スクエア | 2048×1536ピクセル | 4:3 | 約288ppi | 約0.088ミリ |
8.9型ワイド | 2560×1600ピクセル | 16:10 | 約339ppi | 約0.075ミリ |
9.7型ワイド | 2048×1536ピクセル | 4:3 | 約264ppi | 約0.096ミリ |
10.1型ワイド | 1920×1200ピクセル | 16:10 | 約224ppi | 約0.113ミリ |
10.5型ワイド | 2560×1600ピクセル | 16:10 | 約288ppi | 約0.088ミリ |
スマートフォン | ||||
画面サイズ | 解像度 | アスペクト比 | 画素密度 | 画素ピッチ |
4型ワイド | 1136×640ピクセル | 約16:9 | 約326ppi | 約0.078ミリ |
4.3型ワイド | 1280×720ピクセル | 16:9 | 約342ppi | 約0.074ミリ |
4.6型ワイド | 1280×720ピクセル | 16:9 | 約319ppi | 約0.08ミリ |
4.7型ワイド | 1334×750ピクセル | 約16:9 | 約326ppi | 約0.078ミリ |
4.95型ワイド | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約445ppi | 約0.057ミリ |
5型ワイド | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約441ppi | 約0.058ミリ |
5.1型ワイド | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約432ppi | 約0.059ミリ |
5.2型ワイド | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約424ppi | 約0.06ミリ |
5.2型ワイド | 2560×1440ピクセル | 16:9 | 約565ppi | 約0.045ミリ |
5.5型ワイド | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約401ppi | 約0.063ミリ |
5.6型ワイド | 2560×1440ピクセル | 16:9 | 約525ppi | 約0.048ミリ |
5.96型ワイド | 2560×1440ピクセル | 16:9 | 約493ppi | 約0.052ミリ |
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提供:EIZO株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2014年12月17日
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