Screen InStyleは、FlexScanシリーズで利用できる無料ユーティリティソフトだ。実際に使ってみて特に便利だと感じたのは「オートカラーモード」。通常、sRGB、Movie、Paperといった表示モードはディスプレイ前面のボタンを押してOSDメニューから操作するが、オートカラーモードはその名の通りこれを自動化してくれる。
例えば、ライティング作業でテキストエディタを表示しているときは、目の負担が少ないPaperモード、取材で撮影した写真を編集するときはsRGBモードといったように、使用しているアプリケーションに応じて自動的に切り替わるようになる。表示モードの変更にかかる時間は、該当アプリケーションがアクティブになってから1秒弱。頻繁に表示モードが切り替わるとかえって目が疲れてしまうが、編集部で記事を制作するときのように、原稿執筆から写真編集まである程度作業の流れが固定されている場合は、OSDメニューを操作する手間がないのはうれしい。
Paperモードは目が疲れないと言っても、正確に色を知りたいとき都度手動で表示モードを元に戻すわずらわしさを考えるとなかなか使いづらいのが実情だが、自動で切り替わってくれるのであれば積極的に使いたいと思うはずだ。
オートカラーモードのように、OSDメニュー操作をアプリケーション側で実現する機能としては、最新バージョンで追加された入力信号の切り替え(ホットキー割り当て)も便利だ。ディスプレイに2台のPCを接続している場合、映像入力信号を手元のキーボードでさっと切り替えられる。
モバイルPCとFlexScanの組み合わせで広い画面を利用しながら、これとは別に動画編集など負荷の高い作業を別のデスクトップPCで行う、といった2台のPCを併用する環境では重宝するはずだ。
このほか、VDT作業の負荷軽減という視点では、ディスプレイを使用する時間帯に合わせて画面の色温度を変更する「サーカディアン調光」も目を引く。これはiPhoneのNight ShiftやWindows 10の夜間モードと似ており、人間の生体リズムを崩さないように夕方〜夜間はブルーライトを低減するといった調整を自動的に行うものだ。
あらかじめ設定した色温度に30分刻みで緩やかに変化していくため、ユーザーは色の変化を意識することなく、自然にディスプレイを利用できる。表示モードをPaperモードに切替えると、画面の色が急激に変化するが、それを好まない人はこちらがおすすめだ。FlexScanは環境光に応じてディスプレイの明るさを調整する自動調光機能(Auto EcoView)も内蔵されており、これらを併用することで長時間の作業による疲れを軽減できるだろう。
さらにScreen InStyleを導入したディスプレイは、機器管理ツール「Screen InStyle Server」で一元管理が可能だ。今回編集部で試用したように、複数のディスプレイを一気にそろえた環境では役に立つ。
Screen InStyle Serverでは、ネットワーク上にある(Screen InStyleをインストールしたクライアントPCに接続された)対応ディスプレイの情報を取得し、機種やPCの情報を一覧できるほか、対象とするモニターを複数選択し、ディスプレイの表示設定やディスプレイの電源管理などを簡単にまとめて遠隔操作できる。
また、これまでのScreen InStyle Serverは、社内に導入されているディスプレイの数や種類、稼働状況などを一覧で確認できる資産管理ツール的な意味合いが強かったが、最新バージョンでは遠隔操作機能が強化され、ネットワーク上のディスプレイの表示設定などを個別にコントロールできるようになっている。
このおかげで、例えばディスプレイの一括導入時に、まずはある程度の表示設定を部署毎にまとめて設定し、その後、ユーザーの使用状況に応じて、長時間作業が続くようであればディスプレイの明るさを少し落とすなど柔軟な運用が行えるようになった。資産管理だけでなく、VDT作業の負荷軽減によって社員の健康状態も管理するといったことが期待できそうだ(ちなみに、編集部で試用した際は、残業が多いM氏の画面の輝度を遠隔操作で強制的に落として嫌がられる、という一幕があった)。
以上、編集部にFlexScanを5台導入し、2週間ほど実務に使ってみた結果、I氏にはカノジョができ、O氏からは評価機の返却期限に対して猛烈な抵抗を受け、M氏の残業時間は(強制的に)短縮されることになった。その半面、これからFlexScanのない元の作業環境に戻ったとき、I氏がカノジョに振られ、O氏の仕事に対するモチベーションが下がり、M氏の残業時間が増えることを想像すると、頭が痛い。
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