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どちらも期待を裏切らない“正統進化”――林信行の「iPhone 5c/5s」徹底レビューライフスタイルを彩る「5c」、未来を映す「5s」(1/4 ページ)

カラフルな「iPhone 5c」、先進的な「iPhone 5s」。そのどちらもが「iPhone 5」を受け継ぐ“正しい進化形”だ。その魅力を林信行氏が詳細に語る。

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「iPhone 5c」と「iPhone 5s」――2系統の正統な進化

iPhone 5s(左)とiPhone 5c(右)

 新型iPhoneが9月20日からいよいよ発売される。iPhoneには元々、エレガントな本体デザインや親しみやすい操作が生み出す愛らしさという側面と、2007年に登場した初代iPhone以来、携帯電話業界をリードし続けている先進性という側面の2つを持ち合わせていた。

 これまでのアップルは、その両方の絶妙なバランスポイントを製品にしてきたが、今回のiPhoneでは、iPhone 5cとiPhone 5sという2系統の製品ラインアップで、どちらの側面も本気で追求することにしたようだ。

 iPhone 5cは、本体の素材、カラーバリエーションそして使用時の彩りをさらに広げる6色の純正ケースなど、よりiPhoneに親しみを感じさせるための工夫やブラシュアップが隅々まで施されている。2年契約で実質負担が無料になる各社のキャンペーンなどを考えても、これまでiPod touchで我慢していた中高生から、スマートフォンはそこまで本格的に使いこなさないという年配の方々まで、老若男女問わず幅広く魅了する製品に仕上がっている。写真のモデルを務めてくれた女子高生起業家、椎木里佳さんも「かわいい!」と大満足の表情だった(椎木里佳さんのブログ「社長は現役女子高生」)。

高校生にもうれしいiPhone 5c。親しみが持てるプラスチックの筐体と色の掛け合いが楽しめる6種類のシリコンラバーケースで中高生にとっても人気の製品になりそうだ(モデル/女子高生起業家、椎木里佳)

 一方のiPhone 5sは、常に初代iPhoneのタッチパネルや加速度センサーやその後の機種で追加された動画、超高解像度のRetinaディスプレイ、音声認識など、新しいトレンドと文化を生み出す先進機能にひかれる人々をターゲットにしたiPhoneだ。

 米Appleはこの端末を「The most forward-thinking Smartphone in the World」(世界で最も未来指向のスマートフォン)と銘打っているが、すでにいくつものWebサイトで議論が始まっている「A7」こと64ビットプロセッサが搭載されたことによるスマートフォンアプリへの変化や、まったく新しい概念のモーションプロセッサ「M7」が生み出すであろう、今の我々には想像もできない新ジャンルのアプリケーションなど、製品が出てしばらくするまではまったく想像すらできない楽しみが秘められている。その一方ですぐに恩恵を受けられ、しかも、使い勝手を根本から変えてくれそうな先進テクノロジーとして「Touch ID」と呼ばれる指紋認証や、同じ800万画素ながら画質を大幅に向上させた新iSightカメラ、新しいスローモーション記録などの新機能も備えている。

iPhone 5sは時間が経てば経つほど魅力が分かるiPhoneだ。すぐに気付く魅力としては指紋認証のTouch IDと大幅に画質が向上したカメラ機能が特徴となっている

 この2機種の発表だけでも十分素晴らしいことだが、実は筆者はiPhoneの本当の素晴らしさを体現しているのが同時に発表された“3台目のiPhone”だと思っている。執筆時点で日本での展開は分からないが、少なくとも米国では、上記の2つのiPhoneに加えて、2年前に発表されたiPhone 4sも並行して販売される。

 実はこれはすごいことだ。世界のほかのメーカーで、新モデルを投入したにも関わらず2年前のスマートフォンを現役で売っているところはほかにあるだろうか。他メーカーのスマートフォンでは、携帯電話会社が決めた年2〜3回のシーズンごとに、何機種も新製品を作り、半年前の自社製品と無理矢理差別化をするために新機能を搭載する。そういった意味では機能が増え進化しているように見えるが、そうして出た新機種も半年後には見向きもされない旧機種になってしまう運命だ。

 これに対して、アップルは1つの端末に数年間かけ、1年に1台(2013年からは2台)のペースで本当によいものを作り込み完成させてくる。

 アップルが目指す「よいもの」=新機能が満載されたものではなく、ユーザーが本当に満足できるものであり、じわじわと1年、2年をかけて魅力が伝わっていくものだ。昨年発表のiPhone 5も、形が変わった以外では、画面が縦長になり、カメラがよくなったくらいしか機能上の新規性はないが、それでいて1年の間に「もはやiPhone 4sには後戻りできない」という大勢の愛用者を生み出した。

 本当によいものを作るということは、雑誌や店頭で目立つように、数週間で飽きられ、誰も使わなくなる珍しいだけの機能を満載することではなく、1年経っても色あせない価値を生み出すことだ。iPhoneは次のモデルが出た後でも、こちらも毎年行なわれるOSそのものの進化の恩恵で、最低2年間は現役でいられる価値を保っている。

 2年前の機種に本当にそんな価値があるのか?と疑問に思う人は、是非KDDIやソフトバンクが行なっている下取りサービスを参照してほしい。例えば、KDDIのプランではiPhone 4Sの1番下のモデルでも1万5000円相当のポイントでの下取りが行なわれているが、これに対して、iPhone 4sと同世代のほかの端末は、スマートフォンであろうと従来型携帯電話であろうと、どのメーカーであろうと一緒くたでどれも一律3000円だ。

 これは日本だけの現象ではなく、最近、米国のショッピングモールに置かれている中古携帯電話の査定機で料金目安の表を参照しても、旧機種でもひときわ高い価値がついているのはiPhoneだけ、後はSamsungがかなり離れた2位、Sonyがさらに離れた3位になる程度で、ほかは二束三文の扱いになっている。

 そんな端末を作る唯一無二のメーカーという立ち場にある以上、アップルは2年後でも十分な魅力を発揮し続ける端末を作る使命を負っているが、年1台だった端末作りを2台に増やした2013年も、どうやらその期待によい形で応えてくれたように思う。

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