「シンプル・スピード・セキュリティ」 “3つのS”を掲げるChromebookの魅力
グーグルが国内の法人や教育機関向けに提供する「Chromebook」は、複数の端末を管理することによるデータ漏えいのリスク対策や端末の一括管理によるシステム管理コスト削減を重視したことが特徴だ。
「シンプル・スピード・セキュリティ」という“3つのS”を掲げる「Chrome OS」搭載の「Chromebook」が国内の法人や教育機関向けに提供されることが7月14日の発表会で明らかになった。6月25日(米国時間)に行なわれたGoogleの開発者会議「Google I/O 2014」では、ChromebookとChrome OSの国内販売が示唆されていた。発表会では、グーグル Chromeチーム シニアエンジニアリングマネージャー及川卓也氏、エンタープライズ部門 マネージングディレクター阿部伸一氏らが登壇し、Chromebookが持つ特徴や国内市場に投入された背景を語った。
及川氏はChromebookを「文房具のように扱える、手になじむ道具のようなもの」とし、Googleアカウントにログインしてからメール作成までを10秒以内に行えるようにユーザーの体感速度を高めたり、複数のChromebookを一元管理してシステム管理コストの削減を図ったりできる仕組みを実現した。アプリのアップデートもブラウザを立ち上げることで自動更新できるようにしている。また、「サンドボックス」により、悪意のあるソフトウェアがOSに悪影響を及ばさないようにした。
Chromebookと合わせて、管理コンソールも提供される。その背景として、各ユーザーが1人で複数の端末を利用することによるデータ漏えいのリスクや、組織内で複数の端末を使うことによるデータ管理の複雑化が挙げられた。ストレージもクラウド上のストレージを前提にしており、Chromebook内部にデータを残さないようになっているほか、個別にアプリをインストールする必要もない。なお、アプリは「Google Chrome Apps」のものや、専用のWebストアで提供されているものを利用する。
阿部氏によると、企業の従業員は1人当たり平均で10個のWebアプリを使っており、これらを一括で管理することで「1台あたり、システム管理コストを3年間で約50万円削減できる」(阿部氏)としている。また、管理コンソールには120の管理ポリシーがあり、USBメモリのような外部ストレージを一括で使えないように制限するといったことも可能。リモートアクセスと仮想化技術を駆使して既存のコンピュータからシステムを移行してそのまま利用できるように、使い勝手の継続性も考慮されている。オフラインの状態では、Gmailでのメール閲覧や文書作成、Googleドライブ上でのドキュメント編集などを行える。ネットに接続するとメールの送受信や編集したデータの同期などが可能となる。
パイロットケースとして既に広尾学園高等学校でChromebookが導入されており、教職員や生徒の端末を個別にセットアップしたり、復元したりする作業の簡易化が可能になったという。また、クラウドにあるデータをGoogleドライブを使ってリアルタイムで共有できるため、現場からはクリエイティブな作業が容易になったという声が挙がった。ターゲットとなる企業や組織の規模などについて阿部氏は「管理コストやセキュリティの問題など、各セグメントにニーズがあるのであらゆる企業が導入対象。また、従来のPC市場とタブレット市場の両方がターゲットだと考えている」とし、「PCとChromebookが共存するかどうかについてはユーザーや市場が決めることだと思っている」と続けた。
Chromebookを提供する企業は、日本エイサー、エイスース(ASUSTeK Computer)、デル、日本HP、東芝の5社で、「今後提供会社が増えていくかどうかは検討中」(広報)だという。日本エイサーは7月、ASUSTeKは8月、日本HPは9月の発売を予定しており、デルと東芝の発売日は未定だ。米国では200〜300ドルで販売されているが、「オープン価格なので、国内での価格は各メーカーにより異なる」(広報)。法人への導入はソフトバンクテレコムが、教育機関への導入は同社とミカサ商事がそれぞれ行う。
現時点ではWi-Fi版の提供のみで、LTE版の提供は「ニーズは把握しており、現在検討中」(阿部氏)だという。個人向けPCの提供は「やるかどうかも含めて検討中」(広報)としている。
なお、7月30日と31日に開催される「Google Atmosphere Tokyo 2014」でChromebookのタッチ&トライができる。
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