YouTubeを超えて広がる「好きなことで、生きていく」のいま:ITはみ出しコラム
YouTubeは人気YouTuberが離脱するのを防ぐため、広告以外のマネタイズツールを強化しました。Facebookもグループ管理者が収益化できるプログラムのテストを開始するなど、オンラインサービスでのマネタイズ手法が広がりをみせています。
2014年に日本で流れた「好きなことで、生きていく」というYouTubeのCMは新鮮でした。好きで始めた趣味のYouTube動画に広告が表示されることで、それだけで食べていけるだけの収入がある人がいるんだ、と。そういう人はYouTuberと呼ばれるようになり、今では子どもがなりたい職業ランキングに入るほど、当たり前になりました。
YouTuberと広告主とのはざまで
YouTubeの2018年6月の発表によると、動画広告での年収が5桁ドル(100万円台)のクリエイターの数は35%増加し、6桁ドル(1000万円台)稼ぐ人は40%増加したそうです。いつと比べてなのかも、具体的な人数も明示していませんが、まあともかく、「好きなことで、生きていく」ことができる人が増えているのは確かでしょう。
こういう稼ぎ頭のクリエイターはYouTubeにとっても大事です。そして、もちろん広告主も大事。YouTubeの広告は広告主が決めた条件に合っているはずの動画に自動的に表示されますが、これがうまくいかずに英米では2017年3月、大手広告主が広告を引き上げる騒ぎがありました。一方で、人気ほしさに一線を超える米国の人気YouTuber(自殺遺体動画の投稿)も問題になりました。
そうしたことを受けてYouTubeは、広告掲載の基準を厳しくしましたが、自動判定がまだうまくいかないようで、問題のなさそうな動画にまで広告が掲載されない「デマネタイズ」問題が生まれています。
かつてはYouTubeくらいしかなかったクリエイターの活躍の場は、Vine(はなくなっちゃったけど)やInstagram、そしてFacebookなど、選択肢が増えています。YouTubeへの不満が高まれば「エクソダス」になりかねません。
広告以外のマネタイズツール追加でエクソダス防止へ
そこで、YouTubeは広告以外のマネタイズツールを追加しました。チャンネル登録者から月々お金を取るサブスクリプション機能「スポンサーシップ」やチャンネルのページで関連グッズを販売する機能です。2017年1月に追加したマネタイズツール「スーパーチャット(いわゆる投げ銭)」をライブ以外で使えるようにもしました。いずれもある程度人気が確立できているクリエイター向けで、エクソダス防止策なのは明らかです。
スポンサーシップのサブスクリプション料は1人当たり月額490円。その7割である343円がクリエイターの取り分です。1000人が登録してくれれば月収34.3万円。いいなー。
でも1000人の獲得は大変です。月額490円なんて安いじゃないか、と思いたいですが、いつの間にかいろんなオンラインサービスにサブスクリプトしていると、これ以上増やしていいのか考えてしまいます。SpotifyとかNetflixとかOffice 365とか。通信料金もあるし、私の場合は仕事のために有料ニュースメディアにもお金を払っています。その上でさらにお金を払ってでも見たいと思わせるコンテンツはあるかなぁ。
YouTubeのおかげで、好きなことで生きていける可能性は広がりましたが、実現できるのは才能やセンスや表現したいことを持つ人だけ、というのは変わりません。
ゲーム実況のTwitchにもマネタイズツールがありますが、こちらもゲームスキルだけではなく、エンターテイナーであることも必要です。
Facebookのグループ管理者で生きていける?
なお、クリエイティブな才能がなくても人を引きつけたりまとめたりするソーシャルな力を持つ人が、オンラインでマネタイズするサービスも出てきています。その1つ、Facebookがテストを開始したサブスクリプション制グループはもう、余技というより立派なビジネスになりそうです。
Facebookのグループというのは、参加するとその中だけで投稿を共有できるインナーサークルです。趣味や職業のグループがたくさんあります。人気のグループは数万人を擁するところもあり、そうなるともう、けんかの仲裁やマナーの悪い人への制裁もしなくちゃならないし、無償で運営するのは大変です。
そこで人気のグループの中に、有料会員だけが参加できるグループを作れるようになりました。こちらも、お金を払ってでも参加したいと思わせる力量が必要です。サブスクリプション料は最高で月額29.99ドルまで。
例えば、家の整理整頓のためのグループ「Declutter My Home」は、有料グループ「Organize My Home」を作り、そこでは特別なお掃除Tipsやインタラクティブに相談できるサービスなどを提供するそうです。
クリエイティブなこともソーシャルも、まだAIが苦手とするところ。これらのスキルがある人は、オンラインだけでなく、実社会でも生き延びられそうです。
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