IT仕事塾

ファイルメーカーで商用ウェブサイトを構築する
第1回 メルマガからウェブサイトへ ZDNet実践編(3/4)


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複数の手法で制作されるZDNet

 このシステムが順調に動き始めてしばらくして、社内のウェブ制作システムを導入しようという一大プロジェクトが浮上します。もろもろの事情により詳しくは書けませんが、多額の費用、多数のエンジニア、無数のミーティングを行った非常に大きなプロジェクトです。制作システムの経験者ということで、この制作システムのサポートエンジニアと話をしたり、ファイルメーカーによるシステムを見せたりしたのですが、結果的に、このシステムはニュースチャンネルのみで使われました。オンラインソフトの情報をデータベース化し、更新するスタイルのZDNet Downloads (現ZDNet ProductsのダウンロードUS) は、ファイルメーカーを最初から使いました。さらにこのあと、同様のシステムを使い、ZDNet Productsをスタートさせました。このチャンネルも、コマースサイトとの連動を行うことになっており、最初からデータベース化しておく必要があったのです。

 社内では、このシステムを使った部署、手動更新の部署、ファイルメーカーを使った部署の3つのシステムがしばらくのあいだ、並行して動くことになります。実はこまかくわけるともっといろいろとあるのですが、書き出すときりがないほど分散化しているので、大雑把にくくるとこうなります。

 そして、再び転換期がやってきます。

ファイルメーカープロジェクト始動

 流れは突然、ファイルメーカーベースのシステムに向かってきました。ZDNetに新しい広告商品をテスト的に組み込む必要が出てきたのです。メッセージングプラスと呼ばれる、新しいタイプの広告です。この広告は、本文の中に差し込む必要があり、既存のシステムでは変更がたいへんで、新しい属性をデータベースに加える必要もあります。システム変更に要するコスト、およびそれを実装するまでにかかる時間は無視できないくらい大きなものでした。しかし、この程度のことなら、既に運用しているファイルメーカーのシステムを改良すれば、なんとかなります。その問題を認識した社内ファイルメーカー・ソリューション担当有志は、「われわれがやりましょう」と。提案しました。実のところ、広告差し込み用のフィールド追加や、スクリプトの追加は、1日でできました (その後の検証などは当然、ありましたが) 。

 実は、この時点で、こっそりと既存システムを置き換えることができるように、システムをバージョンアップしてあったのです。システムは、ウェブブラウザをフロントエンドにしたシステムで、プラットフォームとしては、MacでもWindowsでも動作していました。社内には、Windowsユーザーが多いので (Macユーザーの比率は平均よりも高いことは高いのですが) 、Windowsプラットフォームでも動く必要があります。Macでは、AppleScriptというすばらしい仕組みがあり、外部のアプリケーションを組み合わせて巧みにコントロールすることができるのですが、Windowsでは、そこまで簡単にはいきません。ここは、「人」で解決することができました。ファイルメーカーのソリューションについて、私と二人三脚でやってきた池永です。

 池永と私は、MacWIREとともに私が担当してたチャンネル、ZDNet Downloadsの立ち上げをともに行いました。これは、MacWIREでの経験をもとに開発した、やはりファイルメーカーをベースにしたシステムでしたが、当初の開発後は、彼がどんどん拡張していき、独自の発展を遂げていました。彼は、Macベースで作っていた外部アプリケーションの制御を、Windowsでも操作できるように、スクリプトを追加していったのです。


ファイルメーカーのサーバにはLinuxマシンを使用。もともとはWindows NTサーバだったのを、より高い安定性と性能を求めて切り替えた。ファイルメーカー Serverに書き出したHTMLデータをいったんステージングサーバに送り、そこから複数のウェブサーバにデータが分配される  Windowsでも動作することを上層部にデモすると、ようやく基幹システムの置き換えをファイルメーカーで行うことが決まりました。新たな広告商品の実施日までに、完成させるのです。結果からいうと、これは難なくクリアできました。既にあるものをモディファイするだけですんだからです。広告をオン/オフするためのフィールドを1つ追加定義し、本文のHTMLモジュールの、4個目のパラグラフに広告タグを差し込むといったことは、とても簡単なことなのです。

 そして、さらに大きな課題に取り組まなければならなくなりました。それは、5月に行われた、全社的なサイトデザインのリニューアルです。

[松尾公也, ITmedia ]

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